1. トップ
  2. 「なんで俺なんすか?」先輩に代わって謝りに行かされた後輩が見た、山奥の“石碑”の正体と“残された懺悔のメモ”

「なんで俺なんすか?」先輩に代わって謝りに行かされた後輩が見た、山奥の“石碑”の正体と“残された懺悔のメモ”

  • 2026.8.15
写真はイメージです。提供:アフロ

書籍化やドラマ化など、今や令和ホラーコンテンツの最前線としてその知名度を高めてきた、生配信サービス「TwitCasting」の怪談語りチャンネル「禍話(まがばなし)」。昨今のホラーブームの中でも、地に足の着いた珠玉の実話怪談を提供し続けるそのストイックな姿勢は、ホラー好きたちから深い信頼を勝ち取っています。

今回はそんな禍話から、とある“石碑”に罰当たりな行動をとってしまった不良たちに襲いかかる、おぞましい祟りをご紹介します――。


“なんで俺なんすか?”

Iさんは自分にその一言を言い出す勇気があればどんなによかったかと、今でも後悔しているそうです。

しかし、そのときの彼はKさんの太鼓持ちをしていたこともあり、今更彼に反抗的な態度をとることなどできませんでした。

翌日のお昼。Kさんの車に詰め込まれたIさんは、あれよあれよという間に問題の展望台近くまで連れ出されてしまったのです。

一体どうしてこんなことに……自問すればするほど自分の臆病さ、何よりいつもあれだけ褒めそやしてきたKさん自身の臆病さにイラ立ちを覚えるばかり。

写真はイメージです。提供:アフロ

ここに来る間も、Kさんはしきりに「なんか今日寒くねぇか? なんか底冷えする感じがあんだよなぁ……」などと、不調を暗にアピールしていたそうで、それもIさんのイラ立ちを加速させていました。

近くのコンビニで事前に購入していた線香やワンカップを入れたビニール袋を手にして降りようとしたとき、Kさんがこう言ったそうです。

「なんか……俺ちょっとガチで体調悪いかもしれんわ……寒気がするわ」

運転席を見ると、眉間にしわを寄せたKさんが両手で肩をさすりながら俯いていました。

「無理かもしれねぇ……マジでわりぃんだけどさ、I、お前行ってきてくれねぇか。あそこ抜けてしばらく行くと背の高い草見えてくるから。すぐそこだから」

「……わかりました」

Iさんの目に不意に飛び込んできたのは…

オメェが踏んだんだから、オメェが行かねぇと意味ねぇだろ! 祟りだかなんだか知らねぇけど、そんなわけわからん石碑にどう謝ればいいんだよ! そもそも俺は完全に無関係なのに。こんなことをして本当に祟りに巻き込まれでもしたら許さねぇからな、あのデブ! ――そんな風に心の中で毒づきながら、指示された草むらを分け入っていくと、確かに背の高い草が生い茂る、小さな丘のような場所が見えてきました。

「あれか? えーっと、下に石碑が……――」

写真はイメージです。写真:travelclock/イメージマート

足元を見ながらその石碑を探していたIさんの目に不意に飛び込んできたものは、話とはだいぶ違っていました。

それは、地蔵の首でした。

ニッコリと笑った地蔵の首が、盛り上がった土の一角から飛び出していたのです。

ふと、ひとつの疑念が浮かんできました。

「俺、今、騙されてるのか、これ……?」

◆◆◆

ジリジリと照りつける日差しと背中を伝う汗。

「おーい! 見つかったかぁー?」

草むらの向こうから叫ぶKさんの声。

Iさんは覚悟を決めて車に戻りました。

「見つかったか?」

「それが、何度も探したんすけど見つからなくて」

「は? 真面目に探したんか?」

「探しましたよ。でも、見つかんなかったんで、先輩が言っていた丘みたいなところの手前にお供えして『南無妙法蓮華経』って唱えてきました」

「なんみょ……?」

「念仏ですよ」

「ああ、そっか……まあ、いいのかな、それで」

「きっと大丈夫っすよ」

夢の中で子どもが“唱えていた”言葉

写真はイメージです。提供:アフロ

精一杯の笑顔を作りながら運転席を回り込んで助手席のドアを開けると、冷房のひんやりとした空気が流れ込んできました。

Iさんは考え込んでいるKさんに気づかれぬように侮蔑的な視線を向けたそうですが、彼が顔を上げるのに合わせて、いつもの後輩然とした表情に素早く切り替えました。

Iさんが自宅の前まで車で送り届けてもらったのは、もう日が落ち始めて辺りがオレンジ色に染まり始めていた頃でした。

「今日は助かったわ」

「いや、俺こそ先輩の力になれてよかったっす! きっとこれで祟りも治まるんじゃないっすかね! もうビビって暮らさないで済みますよ!」

Kさんは冷たく凄んだ目を向けましたが、Iさんは笑顔を崩しませんでした。

「……そうだな。じゃあ、また飲もうな、今度は俺が奢ってやるよ」

「マジっすか! あざます!」

頭を下げるIさんに排気ガスを勢いよく吹きかけながら遠ざかっていくKさんの車。

その後ろ姿が見えなくなると、Iさんはアパート脇のゴミ箱を思いっきり蹴りつけました。

◆◆◆

その日の夜。

Iさんは夢を見ました。

白くモヤがかかったような、強い日が差し込むあの展望台に彼は立っていました。自分の他にも大勢の人が桜を見ようと集まっているようで、ワイワイと賑わっています。

Iさんが視線をあの小さな丘の方に向けると、そこに子どもが立っており、パクパクと口を動かしているようでした。

背後の喧騒が遠ざかるのを感じながら、Iさんが導かれるように草むらを掻き分けて近づいていくと、ようやくその子どもが言っている言葉がわかりました。

『み に え の あ み め を よ う く ぐ り お っ た』

“御贄の網目をよう潜りおった”

子どもはそう繰り返していたのです。

ファミレスでの会話とK先輩のその後

写真はイメージです。提供:アフロ

数日後の夜、Iさんとその仲間たちは、夕方から行きつけの街道沿いのファミレスでワイワイと騒いでいました。

用事を終えた者が次々と合流して盛り上がるいつものルーティーン。周囲の客や店員は迷惑そうにしていましたが、結局のところ直接注意してくる人はいつだっていません。その優越感が彼らをここに集まらせていたのです。

「お、Mのやつようやく来たんじゃね?」

ボックス席のガラス窓から見える駐車場に、あご紐を首の横に垂らしたままヘルメットをかぶり、ダルダルのグレーのスウェット姿で原付を停めている後輩のMさんの姿が見えました。

ピーンポーン。

ファミレスの入店音と共に自分たちの席に近づいてくるMさん。

「おせーよ! オメー何してたんだよ、こんな時間まで」

「違うんすよ~。俺、さっきまでK先輩に捕まって山連れていかれててぇ~」

席に座りながらヘラヘラと笑うMさん。

Iさんはメニューを開く彼の視線に割り込むように聞きました。

「展望台か?」

「え、そうっす! よくわかりましたね! なんか、石みたいなの踏んだから代わりに謝ってこいって。よくわからないっすけど、小遣いくれるって言うんで!」

「……お前、石見つけて謝ったんか?」

「いや、見つからなかったってパチこいて戻りました! つーか、草むらも入ってないっす! 怒られますか、これ?」

「……M、今日は好きなの頼んでいいぞ。俺が奢ってやる」

「ええ!? マジっすか!!」

数日後、Kさんが行方をくらませました。

携帯にかけても繋がらず、職場も無断欠勤していたそうです。

Iさんは「私を騙して浮気してどっか飛んだんだ!」と泣きじゃくるKさんの彼女をなだめ、彼女の持つ合鍵を使って家に入ってみたところ、机の上に残された1枚のスーパーのチラシを見つけました。

我昔所造諸悪業
皆由無始貪瞋痴
従身語意之所生
一切我今皆懺悔

そこには“懺悔文”と呼ばれる、自分がこれまでに犯した罪を悔い改めるために唱えられるお経がびっしりと書き込まれていたそうです。

文=むくろ幽介

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ