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学ぶ喜びを知った奴隷の少女が、やがてモンゴル帝国の歴史を揺るがす存在へ。今夏アニメ化でも話題のコミック『天幕のジャードゥーガル』【書評】

  • 2026.8.15

【漫画】本編を読む

『天幕のジャードゥーガル』(トマトスープ/秋田書店)は、13世紀のモンゴル帝国を舞台に、歴史の表舞台では語られなかった女性たちの生き様を描いた作品である。壮大な歴史絵巻でありながら、その軸になっているのは、「知識を持つことは、生きる力になる」という普遍的なテーマだ。

物語は、イラン東部・トゥースで始まる。奴隷の少女・シタラは学者の家に引き取られるが、当初は言いつけられた勉学に興味を示さないばかりか、その家からの逃亡を図ろうとしていた。しかし、主人であるファーティマや、その息子ムハンマドとの出会いを通じて学ぶ喜びを知り、少しずつ知識を身につけていく。そんな穏やかな日々は、モンゴル帝国の侵攻によって一変。シタラは捕虜となり、歴史の大きな渦へと飲み込まれていく。

本作は歴史の表舞台として語られる戦争や権力闘争ではなく、その激動の時代を生き抜いてきた女性たちの「知性」を描いている。イランで培われた医学や科学、哲学などの知識は、モンゴル帝国という異文化の中で新たな意味を持ち始め、そして後宮では、知識と知恵こそが武器となる。シタラや第2代皇帝オゴタイの第6夫人・ドレゲネといった女性たちが、それぞれの立場から帝国の歴史に影響を与えていく様子は実に鮮やかだ。

歴史漫画だが難解さを感じさせないのも大きな魅力だ。史実を丁寧になぞりながら、登場人物たちの感情や人間関係が繊細に描かれているため、歴史に詳しくなくても自然と物語へ引き込まれていくはずだ。特に、「力」ではなく「知識」によって運命を切り開こうとする女性たちの姿は、現代を生きる私たちにも多くの示唆を与えてくれる。

2026年7月には待望のTVアニメがスタートし、7月15日には第6巻が発売されるなど、いま最も旬の作品のひとつとして熱い注目が集まっている。壮大なモンゴル帝国史の裏側で、歴史を動かした女性たちの姿を描く本作は、歴史好きはもちろん、骨太な人間ドラマが好きな人にもぜひ手にとってほしい作品である。

文=練馬麟

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