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「父さん、もう十分だって」就職祝いにスーツから礼服まで選ぶ父。会計前の父の一言に心が温まったワケ

  • 2026.8.12
「父さん、もう十分だって」就職祝いにスーツから礼服まで選ぶ父。会計前の父の一言に心が温まったワケ

就職が決まった息子と来店した父親

その日、私が働く紳士服売り場に、五十代くらいのお父さんと二十代の息子さんが来店しました。

「春から就職するんです。仕事で着られるスーツを見てもらえますか」

そう話すお父さんの横で、息子さんは少し照れくさそうに立っています。

希望を聞きながら何着か試着してもらい、まずは紺色のスーツが一着決まりました。すると、お父さんが息子さんに尋ねました。

「毎日着るなら、一着だけじゃ足りんやろ。もう一着あったほうがええんちゃうか」

息子さんは「最初は一着でいいよ」と遠慮していましたが、お父さんは「交互に着たほうが長持ちするしな」と笑います。

そこで色味の違うスーツをもう一着選ぶことになりました。

さらにシャツやネクタイ、ベルト、革靴など、仕事を始めるうえで必要になりそうなものを一つずつ確認していきます。

しばらくすると、お父さんがふと思い出したように言いました。

「礼服は持ってるんか?」

息子さんが首を横に振ると、お父さんは少し考えてから、「急に必要になることもあるし、今のうちに一着作っとこう」と言いました。

社会人になれば、仕事用の服だけではなく、冠婚葬祭の場に出る機会も増えていきます。そこで礼服と黒いネクタイも一緒に選ぶことになりました。

「最初くらい、父親にやらせてくれ」

必要なものがそろってくると、今度は通勤用のコートや予備のシャツも候補に加わりました。

息子さんはさすがに心配になったようで、何度もお父さんを止めます。

「父さん、もう十分だって。こんなに買ってもらえないよ」

けれど、お父さんは品物を見ながら穏やかに答えました。

「これから自分で働いて、自分の金でいろいろ買うようになるんやろ。最初くらい、父親にやらせてくれ」

その言葉を聞いた息子さんは、それ以上何も言わず、小さく「ありがとう」と返しました。

最終的には、スーツ二着に礼服、シャツやネクタイ、革靴、ベルト、コートなど、社会人生活に必要なものをまとめてそろえることになりました。選んだ商品の価格帯もあって、お会計は五十万円近くになりました。

金額をお伝えすると、今度は息子さんのほうが驚いていました。

「本当にいいの?」

すると、お父さんは少し照れたように笑いました。

「就職祝いなんやから、ええやろ」

高価な買い物だったことよりも、お父さんが一つ一つ「これは必要か」「こっちのほうが長く使えるか」と息子さんのこれからを考えながら選んでいたことが印象に残っています。

商品を受け取って帰っていく二人を見送りながら、私まで少し嬉しい気持ちになりました。

何年も接客をしていますが、誰かの新しい門出をこんなにも嬉しそうに応援する姿に立ち会えるのも、この仕事のいいところなのかもしれません。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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