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10年分のコレクションを夫に売られた私が見た物

  • 2026.8.1
ハウコレ

「悪かった」と夫は言いました。けれど私が悔しかったのは、学生時代から並べてきたあの子たちが、1つ1つ知らない誰かのもとに送られていくその現実でした。

帰宅した私を待っていたのは、クローゼットにあったはずの段ボール箱の、蓋だけでした。

「片付けたよ」と夫は言った

テーブルには夫のスマホがあり、画面には、私が長く手元に置いてきたぬいぐるみやフィギュアの写真が、フリマアプリの商品ページになって1つずつ並んでいます。「片付けたよ、いくらか稼げそう」。夫は誇らしげでした。「これ、私の大事なコレクションだよ」。自分の声が、自分でも硬く聞こえました。「使ってないだろ、もう」。あの箱は、就職して1人暮らしを始めた時から、引っ越しのたびに一番に運んだ箱でした。もう10年、私と一緒にいた子たち。夫の目には、あの箱は埃をかぶった置物にしか見えなかったのだと理解しました。

空になった段ボール箱の場所

夫がスマホを片付けた後、私はもう一度クローゼットを開けました。上段の左端、いつもある段ボール箱の場所には何もありません。段ボール箱1つぶんの空白が、こちらを見返していました。テーブルに置かれた夫のスマホを手に取り、フリマアプリを開くと、出品数は数十件で、そのうち半数近くが既に購入されていました。「取引メッセージ」の欄には、購入者からのお礼が並んでいます。「探していたシリーズです、嬉しいです」。売られた側の悲しみと、買った側の喜びが、同じ画面で交差していました。私はスマホを伏せて、夫の隣に座り直しました。「1つ1つ思い出があるの」。

買い戻しに走る夫の背中

「悪かった。買い戻せる分は戻す」。夫はスマホを持って玄関へ向かいました。その後の数日、購入者に頭を下げるメッセージを送り続けたようです。返信は半々でした。「もう発送済みですが、キャンセルできます」と応じてくれる人もいれば、「大切に使いたいので、譲れません」と断る人もいました。譲れないと言われた側は、あの子たちを大事にしてくれる相手が見つかった証拠でもあります。私は少しだけ、そう思うことにしました。夫は「引っ越し先、狭くなるから」と、初めて動機を口にしました。それだけではなかったことも、後で知ります。

そして...

引っ越し当日、新居のリビングには、夫が組み立てたショーケースが置いてありました。半分だけ戻ってきたぬいぐるみとフィギュアが、そこに並んでいます。「これから増やしていいから」。夫はそう言って、次の段ボール箱を運び込みました。あの子たちの居場所は、私が守るしかありません。夫の善意だけでは埋まらない空白があると知った家でした。

(30代女性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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