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ただの“お仕事ドラマ”では終わらない「勉強になる」「上手い」初主演俳優が見せた新境地にも称賛の声【新ドラマ】

  • 2026.8.31
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夜ドラ『税金で買った本』第1週目(C)NHK

NHK夜ドラ『税金で買った本』がスタート。主人公は、俳優・奥平大兼が演じる金髪ヤンキー高校生・石平紀一だ。なんとも心優しく見える可愛らしいヤンキーなのだが、SNS上でも「やっぱり演技上手いな」と言われている通り、奥平の自然に溶け込む演技が違和感を帳消しにする。10年ぶりに訪れた図書館で未返却本の存在を知らされるところから、彼の図書館との交わりが展開していくことに。紀一の目線を通して、利用者からはなかなか見えない図書館の仕事やルールが描かれた。

※以下本文には放送内容が含まれます。

10年前の未返却本から始まった

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夜ドラ『税金で買った本』第1週目(C)NHK

ケンカに巻き込まれる日々にうんざりしていた金髪ヤンキー高校生・紀一。そんな彼を図書館へと向かわせたのは、幼い頃に好きだった一冊の小説だった。

本屋で偶然『放浪する青』を見つけた紀一は、小説が一冊2,000円近くする事実に驚きながら、10年ぶりに図書館を訪れる。しかし、図書館職員の早瀬丸小夜香(西野七瀬)から告げられた思いもよらない事実が。なんと紀一には、10年前に借りたまま返していない児童書があったのだ。

当然、10年前の紀一はまだ幼い。今さら弁償しろと言われても納得できず、ヤンキーらしく反発する紀一。しかし、弁償・修理担当の白井里雪(青木マッチョ)は簡単には引き下がらない。

図書館に並ぶ本は、誰か個人の所有物ではない。多くの人が利用するために用意されたものであり、その購入には税金が使われている。タイトルでもある『税金で買った本』という言葉の意味が、物語の入口からさっそく浮かび上がってくる。

紀一は彼らに言われた通り、しぶしぶ同じ児童書を自費で購入し、弁償を済ませる。なんと、図書館で借りた本を弁償する際には、現金は受け取ってもらえないらしい。この辺りも、ドラマを通して知る意外な裏側だろう。

ようやく新しい利用者証を手に入れ、『放浪する青』を借りられると思ったのも束の間、今度はひと足違いでほかの利用者に貸し出されてしまった。さらに、不用意なケンカのせいで、働いていた飲食店のアルバイトまでクビに。散々な出来事が続くなか、それでも紀一は図書館へと戻ってくる。

一見すると本とは縁遠そうな金髪のヤンキーが、どうしてそこまで一冊の本にこだわるのか。その理由が、子どもの頃に読んでいたからであるのと同時に、幼い紀一自身が“自由”についてどのように考えていたかを知りたい、というシンプルな欲求であることも興味深い。

本のページを“しおり”に?

第3話で、ようやく紀一が待ち望んでいた『放浪する青』が返却される。しかし今度は、本のページが破損していることが発覚する。さらに白井から聞かされたのは、本のページを破り、それを別の本のしおり代わりに使う利用者がいるという話だった。

白井ほどの本好きでなくとも、そんな利用者が実在するとは信じがたい。紀一は図書館にある本をくまなく調べ、破られた紙片を探し始める。

ここから見えてくるのは、本を貸し出して返却してもらうだけではない、図書館員たちの仕事の実態だ。

大勢の人が同じ本を手に取る場所だからこそ、破損や紛失といったトラブルも起こり得る。本を修理し、ルールを守ってもらい、次に読みたい人へ渡していく。普段何気なく利用している図書館の裏側には、一冊の本を公共の財産として守り続ける人たちがいる。

一方で本作は、図書館を単純に“厳しいルールがある場所”として描いているわけでもない。ルールがあるのは、誰もが本と出会い、そこから何かを知る機会を守るためでもある。そんな仕組みを説明する役割を担うのが、図書館についてほとんど何も知らない紀一だ。

紀一は分からないことがあれば、素直に尋ねる。納得できなければ食ってかかることもあるが、理由を知れば素直に受け止める。視聴者もそんな彼と同じ目線から、一つずつ図書館のルールや仕事を知ることができる。

SNS上で「勉強になる」といった声が見られるのも、こうした構成と無関係ではないだろう。図書館を舞台にしたお仕事ドラマでありながら、専門知識を一方的に説明するのではなく、紀一の疑問そのものが物語を動かしていく。

幼さの残るヤンキー高校生

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夜ドラ『税金で買った本』第1週目(C)NHK

そんな紀一を演じるのが、今作で連続ドラマ初主演を務める奥平大兼だ。

映画『MOTHER マザー』やドラマ『御上先生』など、これまで繊細さや複雑な内面を抱えた人物を演じることも多かった奥平。本作の紀一は、金髪でケンカが強く、思ったことをすぐ口に出すという、これまでとはまた異なる印象を持つキャラクターだ。

興味深いのは、紀一を必要以上に威勢のいいヤンキーとして見せていないところ。荒っぽい言葉を使い、納得できないことにはすぐ反発する。それでも、知らなかったことを教えられた瞬間には驚き、興味を持つ。その表情には高校生らしい幼さも残る。

紀一は、決して本が大好きで、図書館について詳しい高校生ではない。むしろ第1週の時点では、図書館の仕組みも、そこで働く人々の苦労もほとんど知らない。しかし彼には、分からないことを分からないまま放っておけない好奇心がある。

幼い頃に好きだった本をもう一度読みたい。その程度だったはずの気持ちが、未返却本や破損本との遭遇を経て、図書館そのものへの興味へ変わっていく。

紀一が次に「なんで?」と立ち止まるのは何なのか。その疑問の先には、私たちがまだ知らない図書館の日常が待っていそうだ。


NHK 夜ドラ『税金で買った本』毎週(月)〜(木)夜10:45~11:00
NHK ONE(新NHKプラス)同時見逃し配信・過去回はNHKオンデマンドで配信

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X:@yuu_uu_

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