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「おなかすいた!」会計前にパンの袋を開けた母親。だが、店員の一言で状況が一変

  • 2026.8.1

レジ前で開いた袋

夕方のスーパーは、どのレジも三、四人待ちでした。

私の二つ前に、小さな女の子を連れたお母さんが並んでいます。

カゴには牛乳や野菜がぎっしり入っていて、上から押さえないとこぼれそうなほどでした。

女の子は二歳くらいでしょうか。カートの取っ手にぶら下がって、しきりに体をよじっています。

「おなかすいた!」

声は、だんだん大きくなっていきました。

しまいには、その場にしゃがみ込んでしまいます。

お母さんはカゴに手を伸ばすと、スティックパンの袋を取り出し、封を切りました。会計は、まだ済んでいません。

前に並んでいた男性が、ちらりとそちらを見ました。私も、つい目で追ってしまいます。

(食べさせてから来ればいいのに)

そんなことを考えている自分がいました。

お母さんは周りの視線に気づいたようで、袋を持つ手を止め、レジのほうへ声をかけたのです。

「1本だけ、先に食べさせていいですか」

語尾が、少しだけ震えていました。

店員が差し出した一言

通りかかった店員さんが、足を止めました。責める調子は、少しもありません。

「先にお会計だけ済ませてしまいましょうか」

そう言って、袋のほうへ手を伸ばしました。

「そのパンのバーコードだけ、お預かりしますね」

お母さんの顔が、ぱっと上がりました。

「助かります」

店員さんは袋を受け取ると、レジの端まで小走りで持っていきました。

読み取りを済ませ、すぐに開いたまま返します。

「どうぞ、召し上がってください。残りのお会計はあとでまとめますので」

女の子はパンを受け取ると、ようやく泣きやみました。

そのとき、私はやっと気づいたのです。

お母さんの胸には抱っこ紐があり、赤ちゃんが眠っていました。両手は、ほとんどふさがっていたのです。

店員さんが、そっと尋ねていました。

「お待たせしてしまって、すみません。今日は朝から大変でしたね」

「朝ごはんを食べさせられなくて。病院に寄っていたら、こんな時間になってしまって」

並んでいた列は、いつのまにか静かになっていました。責める声も、ため息もありません。

カゴの中身だけを見て、その人の一日を何ひとつ見ていなかったのだと、そこで初めて思いました。

会計を終えたお母さんは、店員さんに何度も頭を下げていました。

「本当に、ありがとうございました」

「またいつでも、お声がけくださいね」

後日、同じ店に行くと、レジの脇に小さな案内が置かれていました。

「お会計前のお子さまのお食事は、お申し付けください」

丁寧な字で書かれた、たった一行です。前を通るたびに、私はその紙を読んでいきます。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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