1. トップ
  2. 住まい
  3. メーカー「故障は考えにくい」真夏の午後、20畳エアコンが冷えなくなった30代夫婦の意外な盲点【一級建築士は見た】

メーカー「故障は考えにくい」真夏の午後、20畳エアコンが冷えなくなった30代夫婦の意外な盲点【一級建築士は見た】

  • 2026.8.11
undefined
出典:photoAC(※画像はイメージです)

「真夏の午後になると、リビングの20畳用エアコンが効かなくなるんです。去年の夏まではよく効いていたのに、設定温度まで下がらなくて…。メーカーに電話しても、故障は考えにくいと言われるし、部屋の中は何も変えていないのに、どうしてなんでしょう」

そう話すのは、3年前、郊外の住宅地に、地元の工務店で注文住宅(4LDK・延床約113㎡/土地約195㎡、約4,700万円)を建てたIさん(30代夫婦・子ども1人の3人暮らし)です。

リビングの室外機は、道路から見える家の西側。去年の秋に外構を整えたついでに、むき出しの室外機に、木製の目隠しルーバーの囲いを付けました。見た目はすっきり。まさかこの囲いが、エアコンの効きを左右するとは思ってもいなかったのです。

エアコンの正体は「熱の引っ越し屋」

エアコンは、冷たい風を生み出す魔法の箱ではありません。部屋の中の熱を集め、配管を通して外へ運び、室外機から捨てる。いわば熱の引っ越し屋です。つまり室外機は「熱の出口」であり、出口がスムーズに熱を捨てられるかどうかで、冷房の実力は決まります。

そのため、メーカーの取扱説明書では、室外機の周りに物を置かないよう求めています。家電量販店の案内でも、風の吹き出す前面は60cm以上、吸い込む背面や側面も10cm以上空けるのが目安とされています。必要なスペースはメーカーや機種によって異なるため、詳しくはご自宅の取扱説明書をご確認ください。

囲われた室外機は、熱風を自分で吸い戻す

見落とされがちなのが、「ショートサーキット」と呼ばれる現象です。室外機の前をふさぐと、吹き出した熱風が囲いの中にこもり、背面や側面の吸い込み口へ戻ってきます。外の空気より熱い空気で熱を捨てようとするため効率は落ち続け、室外機はフル稼働。電気代がかさむうえ、周辺が異常な高温になると、保護機能で運転が止まることさえあります。

Iさんの囲いは、まさに吹き出し口の正面に板が並ぶつくりでした。しかも設置場所は西面で、真夏の午後は直射日光も当たります。囲いで排熱の出口が狭くなったところへ、西日の熱が重なる。このふたつがそろう時間帯だけ、熱の処理が追いつかなくなるのです。それが「去年まで効いていたのに、今年は午後だけ効かない」の答えでした。

Iさん夫婦はどう対応したのか

電話口で勧められたとおり室外機の周りを見にいき、思い当たったのが囲いでした。ためしに前面の板を外してみると、その日の午後から、いつもの設定でスッと冷えるようになりました。費用はゼロです。

そのうえで、置き場所の環境を整え直しました。日よけは、上からの屋根だけ。直射日光はさえぎりつつ、側面と前面は開けておきます。囲いの中にしまい込んでいた鉢植えやホースは移動し、背面に張りついた落ち葉も掃除しました。夕方には、室外機の周りの地面に打ち水をして、照り返しの熱をやわらげます(室外機本体には直接水がかからないよう注意)。

「外壁との見た目ばかり気にして、エアコンの息の仕方を考えていませんでした。今度の囲いは、風の抜ける格子のものを、離す距離まで確かめて選びます」とIさんは話します。

室外機は「隠す」より「風を通す」

室外機の目隠しは、外観を整えたい人に定番の外構アイテムです。道路からの見た目が締まり、外壁や門まわりと素材をそろえれば、外構の完成度も上がります。一方で、室外機は熱の出口。ふさげば、冷房の実力も落ちてしまいます。以下を確かめてみてください。

・室外機の前面と吸い込み側をふさがない(前面は60cm以上、背面・側面も10cm以上が目安)
・囲うなら、風の抜けるルーバー形状で、離す距離を確かめた製品や設計に
・日よけは上からの屋根だけにして、側面と前面は開けておく
・エアコンの効きが急に悪くなったら、部屋の中より先に「室外機の周り」を見る

エアコンの実力は室外機の環境で決まります。熱の出口に風の通り道を空けておけば、真夏の午後も本来の力を発揮できるのです。

参考:冷えない、冷たい風が出ない(ルームエアコン)(ダイキン)



ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる

注目コンテンツ