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「足腰が弱ってから」では遅い?60代のおひとり様が“元気なうち”に実家をリフォームした切実な理由

  • 2026.9.5
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。二級建築士・インテリアコーディネーターの桐野由衣です。

60代になると、個人差はあるものの体力の衰えを感じやすくなり、将来介護を受ける生活が頭をよぎる機会が増えます。最近は、将来を見据えて元気なうちから介護を受けやすい環境にリフォームしたいという方が増えてきました。

そこで今回は、現在の快適性と将来の介護のしやすさの両立を目的としたリフォームのポイントを解説します。

「終の棲家をより快適にしたい」がリフォームのきっかけ

15年ほど前にリフォームの設計を担当させていただいたAさんは、4年前にご主人を亡くされました。3人のお子さんもそれぞれ独立して家を出ているため、20坪の平屋で一人暮らしをされています。現在60代後半のAさんはまだまだお元気ですが、最近足が弱ってきているという自覚があるとのこと。

「この家が私の終の棲家になるだろうから、介護されるようになってもお気に入りの空間で過ごしたいから今のうちにリフォームしたい」とご相談いただき、プランを提案することになりました。

「介護されやすい環境」を元気なうちから考えるメリット

介護しやすいよう家の中を整える「介護リフォーム」は、介護が実際に必要となった段階で行うのが一般的です。介護保険を利用して工事費を抑えられる、体の状態に合わせてプランを考えられるといったメリットがあります。

しかし、介護が必要になるタイミングは予測できません。まだまだ元気で何でも一人でできると思っていたら、病気や転倒などによる怪我で介護を受けることになり、居住環境の見直しを急がなければならず、部分的なリフォームによって統一感のなさが目立つケースは珍しくありません。自分で考えられる元気なうちにリフォームをしておくと、希望を反映させやすいですし、体が不自由な状態でリフォームの完成を待つといったこともなく、スムーズに介護を受ける生活に移行できるというメリットがあります。

また、介護前のリフォームには介護保険の補助制度は使えませんが、補助金を利用することはできます。一例として、国土交通省が運用する「子育てエコホーム支援事業」では、所定のエコ改修等とセットで行えば、廊下などの幅拡張・段差解消などのバリアフリー改修において、介護の有無に関係なく補助金を利用できます。補助金を利用する場合、書類の準備などにも時間がかかりますから、元気なうちからリフォームを検討すれば、工事業者と話し合いながら納得のいく内容で進めやすいのが大きなメリットです。

より理想に近い形で「介護されやすい家」を実現するには、Aさんのように、介護を受ける前から余裕を持って取り組み、自分の好みを反映させるという方法も良い手段といえます。

参考:バリアフリー改修【リフォーム】(国土交通省)

将来だけでなく「今」も快適に過ごすために

Aさんは現時点では一人暮らしに大きな支障はありません。しかしやや足が弱ってきているため、将来車椅子を使用する可能性を考えて、前面道路から玄関までスロープを設置しました。「できるだけ長く自分の足で歩く生活を送りたい」とのことでしたので、スロープ脇に手すりを付け、最短距離で玄関まで行けるよう直線のアプローチにしました。

玄関とLDKの間には6畳の和室があります。以前はご夫婦の寝室、現在はAさんの寝室ですが、この和室があることで玄関からLDKまで廊下を歩いて移動しなければいけません。玄関からすぐLDKに入れるよう、和室のうち4畳分をLDKに取り込み、残り2畳分は車椅子になった時転回しやすいよう三和土部分として拡張しました。

LDKに取り込んだ4畳分の和室部分は、LDKのコーナーに小上がり和室としてリフォーム。腰かけられる高さなので楽に過ごせるだけでなく、小上がり部分に出入りしやすいよう緩やかな角度のステップも追加。就寝スペースとして仕切れるよう新設した引き戸は、Aさんが一目で気に入られた壁紙で仕上げており、LDKのアクセントになっています。

自力で動ける間はこの小上がり和室で寝起きしたいというAさん。いつか介護を受けることになった際は、介護者の負担を考えて介護ベッドをLDKのフラットな部分に設置し、小上がり和室を帰省したお子さんたちやお孫さんたちの寝泊まりスペースに活用するというご計画です。

年を重ねれば、誰でも介護を受ける可能性があります。リフォームにおいて、介護される想定をすることは大切ですが、同時に「今の生活を楽しめる住環境」に整えるという視点も併せ持って、QOL(生活の質)を高めたいですね。


ライター:桐野由衣
住宅設備メーカーや住宅コンサルタント会社、大手リノベーション設計会社にて新築分譲マンションの設計変更、戸建住宅・オフィス・医療施設等の設計およびインテリアコーディネートに携わる。
建築関連分野の記事執筆・校正校閲・監修業務、企業研修講師、インテリアコーディネーター資格対策テキスト監修、工務店の施工事例集ディレクションなどの実績も多数。


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