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「安く買えたと思っていましたが…」中古戸建てを購入した30代夫婦、数年後の売却査定で直面した“想定外の数字”

  • 2026.9.5
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

中古戸建てを探していると、きれいにリフォームされた室内に目を奪われることがあります。築年数が経っていても、内装や設備が新しければ、新生活をイメージしやすいでしょう。

しかし、戸建て住宅で確認したいのは建物の中だけではありません。土地に高低差がある場合は、擁壁(ようへき:高低差のある土地で土が崩れるのを防ぐための構造物)など、敷地にある構造物にも目を向ける必要があります。

今日は、手頃な価格ときれいな室内にひかれて中古戸建てを購入した30代夫婦が、数年後の売却査定をきっかけに、思わぬ問題に直面したエピソードをご紹介します。

希望エリアで見つけた手頃な中古戸建て

これは、私がAさんから売却の相談を受けた際に聞いた話です。30代のAさん夫婦は数年前、マイホームを探していたときに、希望していたエリアで一戸の中古住宅を見つけました。

築年数は経過していたものの室内はリフォームされており、壁紙や床、水回りもきれいな状態。さらに、周辺で見ていた中古戸建てと比べて価格も手頃で、予算に余裕を残して購入できそうだったといいます。

ただ、ひとつ気になる点がありました。敷地と道路に高低差があり、その境に古い擁壁があったのです。

購入時には、不動産会社から擁壁の存在や古いものであること、将来的に維持管理が必要になる可能性について説明を受けていました。しかし、専門家による詳しい調査までは行わず、Aさん夫婦も「昔からあるものだし、これまで問題なく家が建っていたのだから大丈夫だろう」と考えていたそうです。

きれいになった室内と手頃な価格に気持ちが向いていたこともあり、擁壁についてそれ以上深く確認しないまま、Aさん夫婦は購入を決めました。

数年間は何事もなく暮らしていた

購入後、Aさん一家は新居での生活を始めました。

入居してから大きな不具合が起こることもなく、家族は数年間、特に問題を感じずに暮らしていたそうです。購入時に説明を受けた擁壁についても日々の生活に支障がなかったため、次第に気にすることはなくなっていきました。

ところが数年後、仕事や子どもの成長をきっかけに、Aさん夫婦は将来的な住み替えを考えるようになります。

「今なら、いくらくらいで売れるんだろう」

そこでAさんは、地元の不動産会社B社へ自宅の売却査定を依頼しました。室内は購入後も比較的きれいに使っていたため、Aさんは建物の築年数や室内の状態を中心に査定されるものだと思っていたそうです。

しかし、現地を確認した担当者が足を止めたのは、建物の中ではありませんでした。担当者が気にしたのは、道路との高低差を支えている、あの“古い擁壁”だったのです。

売却査定で指摘された「擁壁の状態」

担当者から指摘を受け、Aさんが改めて擁壁を確認すると、購入当時には気に留めていなかったひび割れや経年劣化が見られました。

擁壁は、見た目だけで安全性を判断できるものではありません。築造時に適切な手続きが行われていたとしても、年月の経過やその後の改変などによって状態が変わっている可能性があります。

国土交通省でも、宅地擁壁の状態に応じて、補修・補強・再構築などの対策を検討する考え方を示しています。

そこでAさんは専門業者へ相談し、必要になる可能性がある工事について見積もりを依頼しました。当初は「ひび割れを補修するくらいだろう」と考えていたそうですが、提示された内容は想像していたものとは大きく異なりました。

擁壁の工事費用は、高さや長さ、構造、敷地条件、工事車両の進入可否などによって大きく変わります。Aさんの場合も、本格的な補修や造り替えが必要になれば、数百万円単位の費用がかかる可能性があると説明されたそうです。

さらに問題は、補修費用だけではありませんでした。擁壁の状態や築造時の資料などを十分に確認できなければ、売却時に買主が購入に慎重になったり、将来建て替える際に追加の確認や対応が必要になったりする可能性もあります。

数年間、何事もなく暮らしていたAさんにとっては、まさに想定外の話でした。

このとき初めてAさんは、購入したのはきれいにリフォームされた「家」だけではなく、古い擁壁を含めた「土地」でもあったのだと実感したそうです。

「安い理由」をもっと考えておけばよかった

Aさん夫婦が後悔したのは、擁壁の存在を知らなかったことではありません。購入時に説明を受けていたにもかかわらず、「昔からあるから大丈夫だろう」と深く確認しなかったことでした。

当時は、リフォームされた室内や手頃な価格に目が向いていました。しかし、購入前に擁壁の築造時期や行政に残る資料、劣化状況などを確認していれば、将来の補修費用まで踏まえて判断できたかもしれません。

なお、擁壁はひび割れがあるから直ちに危険とは限らず、反対に見た目がきれいでも安全とは限りません。気になる場合は専門家による確認が必要です。

Aさんはその後、専門家へ相談しながら売却時期も含めて検討することにしました。

「安く買えたと思っていましたが、将来かかるお金まで考えていませんでした」

数年後に数百万円単位の負担が生じる可能性を知り、Aさんは購入価格だけでは判断できない中古戸建ての難しさを痛感したそうです。

中古戸建ては「家の中」だけを見て決めない

中古戸建てを購入するときは、内装や設備、間取りなど、どうしても建物の中に目が向きがちです。しかし、戸建て住宅では土地や外構の状態も確認しておく必要があります。

特に高低差のある土地では、次の点を確認しておきたいところです。

  • 擁壁が誰の所有物なのか
  • いつ造られたものなのか
  • 行政に許可や検査などの資料が残っているのか

また、資料だけでは現在の状態まで判断できないため、ひび割れや傾きなど気になる点があれば専門家へ相談することも選択肢となります。

室内がきれいでも、購入後に費用がかかる可能性があるのは建物だけではありません。土地や擁壁などの外構、将来の維持管理まで含めて確認したうえで購入を判断することが、想定外の負担を避けるポイントになります。

参考:宅地擁壁の健全度判定・予防保全対策マニュアル(国土交通省)



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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