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「夜になっても蒸し風呂で…」夏の新築2階、LDKのエアコン1台が機能しなかった“想定外のワケ”【一級建築士は見た】

  • 2026.8.7
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「リビング階段で家じゅうつながっているから、LDKのエアコン1台で涼しいはず、と思っていたんです。でも真夏の2階は、夜になっても蒸し風呂で…。エアコンのある1階のリビングだけ、別世界みたいに涼しいんです」

そう話すのは、3年前、郊外の住宅地に、地元の工務店でリビング階段の注文住宅(4LDK・延床約113㎡/土地約195㎡、約4,700万円)を建てたIさん(30代夫婦・子ども1人の3人暮らし)です。1階は20畳のLDK、そこから直接2階へ上がる間取りで、家族が自然と顔を合わせられるのが決め手でした。

設計の打ち合わせで「リビング階段は冷暖房の効率に影響することがある」という説明は受けていましたが、エアコンはひとまずLDKの1台から、と考えていました。それでも、はじめての夏の2階の暑さは想定以上だったのです。

冷たい空気は、2階へ上がってくれない

まず知っておきたいのは、空気の性質です。冷たい空気は重く、下へたまります。暖かい空気は軽く、上へのぼります。

リビング階段は、1階と2階の空気がつながる大きな通り道ですが、この性質のせいで、冷暖房への影響が季節によって逆になります。冬は、せっかく暖めた空気が階段から2階へ逃げて、足元が寒くなる。空調メーカーのダイキンも、リビング階段や吹き抜けの注意点としてこの冬の弱点を挙げています。

そして夏は、冷房の冷気が下へたまる性質のため、1階のリビングは涼しくなる一方で、冷気は階段をのぼってくれません。「1階だけ別世界」だったのは、まさにこの性質によるものだったのです。

「エアコン1台で家じゅう」という思い込みには、畳数の読み違いもありました。Iさんも、20畳のLDKに20畳用を選べばじゅうぶん、と考えていました。カタログの「20畳用」といった目安は、木造平屋(和室)や鉄筋アパート(洋室)などの南向きの部屋を想定した、一部屋あたりの基準です。家全体を1台でまかなえるという数字ではないのです。

夏の2階は、屋根の熱で「熱だまり」になる

もうひとつの問題は、2階そのものの暑さです。

2階の天井のすぐ上は、小屋裏と屋根。屋根は一日じゅう直射日光を受け続け、その熱が小屋裏から2階へ伝わります。家の中の暖かい空気も上の階に集まるため、夏の2階は熱だまりになりがちです。日が沈んでも、ため込んだ熱はすぐには抜けません。Iさんの家で、家族で寝る2階の寝室の寝苦しさが夜まで続いたのは、このためでした。

Iさん夫婦はどう対応したのか

そこでIさん夫婦は、お金のかからない順に手を打ちました。

まず、ためない工夫です。2階の窓の外側にシェードを掛け、昼の直射日光を室内に入れない。数千円で、夕方の部屋の熱気が目に見えて変わります。

次に、逃がす工夫。帰宅後や入浴の前に、2階の対角の窓を開けて、こもった熱気を外へ出しました。真夏の外気もまだ温度が高いとはいえ、締め切った2階の室温よりは低いことが多く、開けるだけで外の温度までは下げられるからです。そのうえで寝る前には、階段の下にサーキュレーターを上向きに置き、リビングの冷気を2階へ送り上げます。上がらない冷気は、機械で押し上げるのです。

それでも熱帯夜が続く時期はしのぎきれず、最後は寝室に6畳用のエアコンを増設しました。工事費込みで10万円ほど。「最初から2階の分も計画していれば、配管の見た目もすっきり収まったはずです。エアコンは1台で全部ではなく、階ごと・部屋ごとに考えるものだと、身をもって学びました」とIさんは話します。

エアコンは「家に1台」ではなく「階ごと・部屋ごと」に

リビング階段の家は、家族が毎日顔を合わせられる、気持ちのつながる間取りです。壁で仕切らないぶん、LDKが広く開放的に見える良さもあります。一方で、空気の通り道としての影響は季節によって変わり、夏の冷気は自然には2階へ上がりません。これから建てる人も、いま悩んでいる人も、以下を確かめてみてください。

・エアコンの畳数の目安は「一部屋あたり」の数字。1台で家全体はまかなえない前提で計画する
・リビング階段や吹き抜けの家は、2階の冷房も最初から設計に入れる
・夏の2階は、窓の外側の日よけと夕方の排熱換気で「ためない・逃がす」
・サーキュレーターやシーリングファンで、冷気と熱気を機械でかき混ぜる

冷たい空気が自然には2階へ上がらないことを理解し、階ごと・部屋ごとに冷房を計画すれば、真夏の夜の寝室も快適にできます。

参考:人気の吹き抜けリビングやリビング階段をつくるときに、注意したいこと(ダイキン工業)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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