1. トップ
  2. 暮らし
  3. 「サンライズ瀬戸・出雲」の個室は発売瞬間に売り切れ…定期夜行列車が1本だけになったワケ

「サンライズ瀬戸・出雲」の個室は発売瞬間に売り切れ…定期夜行列車が1本だけになったワケ

  • 2026.9.2
undefined
出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役鉄道会社社員の福本明文です。

かつて、夕暮れ時の東京駅や大阪駅のホームには、東北や北海道、北陸、そして山陽・九州方面へと向かう青い客車、いわゆる「ブルートレイン」が次々と発着し、鉄道旅行の花形として多くの人々に親しまれていました。しかし時代は流れ、現在日本国内で毎日運行される定期夜行列車は、東京と高松・出雲市を結ぶ「サンライズ瀬戸・出雲」のみとなり、かつての賑わいはほぼ消滅してしまいました。

なぜ夜行列車は消えてしまったのか、その裏側と、近年の復活の動きについてご紹介します。

なぜ夜行列車は消えたのか?

なぜ夜行列車は姿を消してしまったのでしょうか。最大の要因は需要の減少です。かつては長距離の移動といえば鉄道で、しかも現代の新幹線のように速度も速くないために時間がかかり、夜行を挟むことは当たり前でした。しかし、今は全国に新幹線網が拡大し、航空路線も発達したことで、目的地まで短時間で到達できるようになりました。

筆者は、移動時間の短縮によってわざわざ夜通し移動する必要性が薄れたこと、そして、全国各地に安価で快適なビジネスホテルが充実したことが、利用客が夜行列車から離れていった決定的な要因であると考えています。

夜行列車のビジネスモデルが難しい!?

さらに鉄道会社側の事情として、夜行列車の運行には運行管理や人員配置における特有の難しさが存在します。夜行列車を走らせるためには、運転士や車掌といった乗務員だけでなく、深夜の途中停車駅で対応する駅員、さらには運行後に寝具の交換や車内清掃を行う専門の係員など、多大な人手が必要です。また、夜行列車に使用される特殊な寝台車両は、通常の通勤電車よりも製造コストが高く、老朽化した際の更新も大きな負担となります。

需要が減少していく中で、深夜帯の人員を確保し、専用車両に投資を行っても利益に結びつきにくいという厳しいビジネスモデル上の問題が、夜行列車の運行を取りやめるに至った根本的な原因であったと筆者は推測します。

現在唯一運行されている「サンライズ瀬戸・出雲」についてですが、目的地である山陰や四国エリアが、東京から新幹線や飛行機を利用しても微妙にアクセスしづらい地域であるという地理的条件があります。さらに、他の夜行列車よりも車両が比較的新しかったことが相まって、同列車は奇跡的に定期列車として生き残ったのだと筆者は考えています。

近年の夜行列車復活の動き

このように定期運行の夜行列車の現状は寂しいものですが、一方で近年、夜行列車を観光用やイベントとして限定的に復活させる新たな動きが活発になっています。2026年8月には、JR東海が夜行新幹線「東海道ルミエールエクスプレス」を運行しました。これは1日だけの限定運行であり、旅行会社のツアー商品という位置づけでしたが、新幹線を使った夜行列車という試みは大きな話題となりました。

また、唯一の定期列車である「サンライズ瀬戸・出雲」の個室は、現在でも切符が発売された瞬間に売り切れるほどの高い人気を誇っています。JR西日本が山陰や山陽、紀伊半島方面へと運行する「WEST EXPRESS 銀河」も、観光列車的な位置づけではありますが、底堅い人気を集めています。

さらに、JR東日本が新宿から長野県の白馬方面へ運行する夏の臨時列車「アルプス」も、恒例の夜行列車として定着してきました。

「臨時列車」「旅行商品」のその先へ

これらの復活しつつある夜行列車に共通しているのは、「臨時列車」や「旅行商品」として日程を限定して運行されているということです。これは、定期運行に比べて人員確保のハードルを下げ、需要の変動リスクを抑えるための現実的な戦略であると筆者は捉えています。

そしてもう一つ、昨今の訪日旅行客の増加により、都市部や観光地でホテルの空きが少なく、宿泊価格が高騰している現状があります。こうした背景から、移動空間自体を宿泊施設として活用するという夜行列車本来の価値が、今まさに再評価されつつあるのではないかと筆者は考えています。

JR東日本は、2027年春に新たな夜行特急列車の運行を開始すると公式に発表しています。需要の減少や運行コストなど様々な困難から一度は消えかけた夜行列車ですが、現代のニーズに合わせた新しい形での復活がさらに進んでいくのか、今後の動向にぜひ注目していきたいところです。


参考:
東海道ルミエールエクスプレス(JR東海ツアーズ)
WEST EXPRESS 銀河(JRおでかけネット)
夏の臨時列車の運転について(JR東日本)
新たな夜行特急列車を2027年春に導入(JREメディア)


ライター:福本明文
大学卒業後、鉄道会社に総合職として入社し、同業界に15年以上従事。鉄道部門だけでなく、タクシーやバス、小売りといった関連事業にも幅広く携わる。現在はWebライターとしても、広報を担当した経験を活かし、コラム記事の執筆からSNSへのコンテンツ提供まで多岐にわたって活動中。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる

注目コンテンツ