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ブレーキ踏むと『キー』の異音→50代女性が後悔…数万円で済んだはずが修理費が3倍になった理由

  • 2026.9.2
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

元自動車整備技術アドバイザーの松尾です。

「最近、ブレーキを踏むと『キー』という音がするけれど、ちゃんと止まれるから大丈夫」

そう考えて様子を見る方は少なくありません。しかし、その異音はブレーキが発している重要なSOSかもしれません。

今回は、私が以前勤務していた整備工場に修理で来店されたお客様の事例をもとに、ブレーキパッドの摩耗を放置したことで修理範囲が広がり、結果的に大きな出費につながったケースをご紹介します。

「止まれるから大丈夫」が思わぬ落とし穴だった

これは、私が以前勤務していた整備工場へ修理に来られたお客様、Kさん(50代女性)の事例です。Kさんは来店されるなり、少し不安そうな表情でこう話されました。

「最近、ブレーキを踏むと『キー』という音がするんです。でも普通に止まれるので、そのまま乗っていました」

さらに話を聞くと、ここ数日はブレーキペダルを踏んだときの感覚が以前と違い、「少し効きが弱くなったような気がする」と感じたため、心配になって点検を依頼されたとのことでした。

早速タイヤを外して点検すると、原因はすぐに判明しました。ブレーキパッドは交換時期を大きく過ぎ、摩擦材はほとんど残っていない状態。さらに、摩擦材の土台となる金属製のバックプレートがディスクローターへ直接当たり続けた跡があり、ローターには深い傷が刻まれていました。

「ここまで使っていたんですね」

そうお伝えすると、Kさんは驚いた様子で「音が鳴るだけだと思っていました」とつぶやき、肩を落とされていました。

ブレーキパッドを使い続けると何が起こるのか

ブレーキパッドは、ディスクローターを摩擦材で挟み込むことで車を減速・停止させる部品です。当然ながら、ブレーキを使うたびに少しずつ摩耗していく消耗品であり、一定の残量になれば交換が必要になります。摩擦材が十分残っている間は正常な制動力を発揮しますが、交換時期を過ぎて使用を続けると、「キー」といった異音が鳴り始め、やがて摩擦材がなくなり、金属製のバックプレートがディスクローターへ直接接触するようになります。

この状態になると、さらに「ゴー」といった異音が発生しやすくなり、硬い金属同士が擦れ合うことでローター表面には深い傷が入ってしまいます。さらに傷付いたローターでは、本来のブレーキ性能を十分に発揮できず、ブレーキペダルの踏み心地が変わったり、制動力が低下したように感じたりすることがあります。

それだけではありません。摩擦熱も大きくなるため、キャリパー内部のピストンやシールにも負担がかかります。熱の影響でピストンの動きが悪くなると、ブレーキの引きずりや左右どちらかだけが強く効く「片効き」が発生することもあり、その場合は部品交換だけでなくキャリパーのオーバーホールが必要になるケースもあります。

つまり、最初はブレーキパッドだけの問題だったものが、周囲の部品まで巻き込んでしまうのです。

早めの交換が安全と修理費の両方を守る

今回の車両は、ディスクローターの傷が深く、研磨では修復できない状態でした。そのため、ブレーキパッドの交換だけでは済まず、ディスクローターも新品へ交換することに。

さらに、熱の影響で動きが悪くなっていたキャリパーはオーバーホールを実施し、ブレーキフルードも交換してブレーキシステム全体を整備しました。修理費用は約7万円。もし異音が出始めた段階で点検を受け、ブレーキパッドだけを交換していれば済んだ可能性が高く、修理費は大幅に抑えられたと考えられます。

ブレーキパッドは、摩耗することを前提に設計された消耗品です。一般的には残量3〜4mm程度が交換の目安とされることが多く、それ以下になると早めの交換が推奨されます。また、「キー」という異音は、摩耗を知らせる警告である場合があります。異音が出ている時点で、すでにディスクローターへ影響が及び始めているケースも少なくありません。「まだ止まれるから大丈夫」と感じていても、ブレーキの摩耗は確実に進行しています。違和感や異音に気づいたら、できるだけ早く点検を受けることが大切です。

定期点検では、ブレーキパッドの残量だけでなく、ディスクローターの摩耗やブレーキフルードの状態もあわせて確認してもらいましょう。必要なタイミングで消耗品を交換することが、修理範囲の拡大を防ぎ、結果的に維持費を抑えることにもつながります。ブレーキは車を「走らせる」ためではなく、「確実に止める」ための最も重要な安全装置です。異音や違和感を軽く考えず、早めの点検と適切な整備を心掛けることが、安全と家計の両方を守る近道といえるでしょう。


ライター:松尾佑人(二級ガソリン自動車整備士・二級ジーゼル自動車整備士資格保有)
新卒で自動車整備業界に入り、約8年間整備に従事したのち、現役メカニックに向けた故障診断アドバイザーや各種講習の講師として活動。年間約1,200件の技術相談に対応し、電気回路や配線図の読み解きを基盤とした電子制御システムの解説を得意としている。


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