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お盆の帰省中に実家の門扉を壊した50代男性、「保険は無理だろう」と諦めていたが…25万円が補償されたワケ

  • 2026.8.8
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「実家のものだから、対物賠償責任保険は使えないだろう」

久しぶりの帰省中に、実家の門扉を壊してしまったAさん(50代・男性)は、お兄さんからそう言われたといいます。修理見積もりは約25万円。Aさんは全額を自分で払うつもりでいました。

しかし、事故対応の担当者として私がお伝えしたのは、逆の内容。保険を使えるかどうかの分かれ目は、「身内かどうか」ではありませんでした。

今回ご紹介するのは、損害保険会社で事故担当者として勤務していた私が対応した、とある事故のお話です。

「おそらく支払い対象外だとは思うのですが」

Aさんから連絡をいただいたのは、お盆の帰省中のことでした。

「おそらく支払い対象外だとは思うのですが、念のため聞きたいんです」

Aさんはそう前置きをして、事故の状況を説明してくれました。Aさんは普段、実家とは別の場所で家族と暮らしています。実家にはお兄さんとお母さまが住んでおり、お盆を理由に久しぶりに帰省したとのことでした。

実家とはいえ、車を乗り入れる機会はめったにありません。Aさんは間隔を誤り、車をバックさせた際に門扉へ接触し、破損させてしまいました。

修理見積もりは約25万円。Aさんの車もリアバンパーに傷がつきましたが、車両保険に加入していなかったため、こちらは自己負担で修理することにしたそうです。

「兄からは、実家のものだから対物賠償責任保険は使えないだろうと言われました。修理費は自分で払うつもりです。ただ、一度だけ確認しておきたくて」

そのような経緯で、Aさんは保険会社へ連絡したとのことでした。

確認するのは「誰が運転し、誰の持ち物か」

一般に、対物賠償責任保険には、保険金が支払われない範囲が定められています。ポイントとなるのは、壊れた物を所有、使用、または管理している人が誰かという点です。

車の運転者と壊れた物の所有者または管理者の関係が、父母・配偶者・子にあたる場合には、保険の支払い対象外となることがあります。

私はまず、Aさんが実家を使用・管理している実態がないかを確認しました。

たとえば実家の近くに職場があり、日常的に実家の駐車場へ車を停めているような場合、Aさん自身が実質的に使用・管理していると判断され、対象とならないことがあります。Aさんの車検証からは、車の使用の本拠が実家ではないことが確認できました。

次に、事故のときに運転していたのがAさん本人であることを、聞き取りで確認しました。これで、残る確認事項は絞られます。

壊れた門扉を所有、使用、管理している人の中に、Aさんの父母・配偶者・子がいるかどうかです。

分かれ目は、実家の名義にあった

私は、Aさんに尋ねました。

「ご実家の名義人は、どなたになっていますか」

Aさんはこう答えます。

「5年ほど前から、兄名義になっています」

保険の対象外とされているのは父母・配偶者・子。つまり、兄弟姉妹は含まれていません。名義の変更は今回の事故とは無関係な時期に行われたもので、門扉を含む家全体がお兄さんの名義になっていることも確認できました。

Aさんの実家にはお母さまも住んでいます。しかし門扉の所有者は名義人であるお兄さんであり、実質的な管理も、同居するお兄さんによって行われていました。

これらを踏まえ、私はAさんに対物賠償責任保険の対象となることをご案内しました。

その後、名義人であるお兄さんに連絡を取り、名義を確認できる書類を取り寄せたうえで修理業者を手配し、門扉は保険で修繕されることになったのです。

名義が違えば、25万円は自己負担だった

同じ門扉、同じ25万円でも、条件が一つ変われば結果は大きく変わります。

名義がお母さまのままであれば、門扉はAさんの「父母」の所有物にあたるため、対象外となることがあります。また、運転していたのがお兄さん本人であれば、自分の所有物を壊したことになるため、やはり対象外です。

・誰が運転しているときの事故なのか
・損害物の名義は誰になっているのか
・損害を受けた物を実質的に使用、管理している人は誰なのか

身内同士の対物事故では、これらの要素によって結論が変わります。

なお、どこまでが対象外となるかは、保険会社や商品によって細かな違いがあります。ご自身の契約がどうなっているかは、約款や保険会社への問い合わせで確認してみてください。

3等級下がっても、保険を使うという選択

対物賠償責任保険を使うと、翌年の等級は3等級下がり、保険料の負担は数年にわたって増えることになります。

私はAさんに、保険を使った場合に翌年以降の保険料がどれくらい変わるのかをお伝えしました。Aさんの契約には免責金額(自己負担額)の設定がなく、修理費は約25万円。保険料の上がり幅と修理費を比べたうえで、Aさんは保険を使うことを選びました。

なお、保険を使うかどうかを決めるのは、あくまで契約者ご本人です。損害額が小さい事故では、翌年度以降の保険料を考慮すると、自己負担のほうが総支出を抑えられるケースもあります。

迷ったときは保険会社に試算を依頼し、相談したうえで、保険の使用を判断しましょう。

帰省の折に、実家の名義を確認しておく

帰省先や旅行先で物を壊してしまったときは、まずは保険会社に状況を伝えて確認してみてください。

「身内のものだから無理だろう」と自分で判断して諦めてしまうと、本来受けられるはずの補償を逃してしまうことがあります。

そしてもう一つ。お盆の帰省で実家に立ち寄る機会があれば、今の名義を確認しておきましょう。いざという時に、保険の対象になるか判断する材料になります。

「身内間の事故だから」

そんなときでも、「保険に頼ってみる」という手段は忘れないようにしましょう。


ライター:スライカズヤ
保険・自動車分野を専門とするライター。損害保険会社で事案担当者として10年間、示談交渉・損害査定・自動車修理の協定業務に携わり、数多くの事故対応の現場に立ってきた。初級技術アジャスター、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、損害保険事業総合研究所 本科講座修了。専門性の高い知識を、正確に、分かりやすく伝えることを信条とし、「当事者にならないとわからない」事故と保険のリアルを読者に届ける。


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