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「一番の壁はコンビニの段差でした…」新車GT-Rを2年半で手放した30代男性、“好きすぎた”ゆえの皮肉な結末

  • 2026.9.1
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出典:PIXTA(※画像はイメージです)

今から10年以上前、当時30代の男性が長年憧れ続けた日産GT-R(R35型)を新車で購入しました。圧倒的な走りや仲間との交流など充実した日々でしたが、最初の車検を半年後に控えた2年半のタイミングで、あっさりと手放すことになります。

決して嫌いになったわけではありません。大好きだからこそ起きた逆転現象と、彼が得た気づきについてご紹介します。

長年の夢だったGT-Rとの出会いと劇的な変化

今から10年以上前のことになりますが、私の知人である当時30代の男性は、若い頃からいつかは所有したいと願い続けていた日産GT-R(R35)を、ついに新車でお迎えすることになりました。

長年にわたってコツコツと資金を貯め続け、思い切って決断したそうです。待ちに待った納車の日、真新しいシートに沈み込んでエンジンをかけた瞬間に響き渡る重低音は、今でも彼の記憶に深く刻まれていると語っていました。そして、慣らし運転を終えて初めて公道で少し深めにアクセルを踏み込んだときの異次元の加速感は、背中をシートに強く押し付けられるようなもので、これまで乗ってきた自動車とは全くの別世界だったようです。

彼が新車のGT-Rとともに手に入れたのは、圧倒的な走行性能だけではありませんでした。

休日になるたびにピカピカの愛車でドライブへ出かけるようになると、行く先々で同じようにGT-Rを愛するオーナーたちと自然に言葉を交わす機会が増えていったそうです。お互いのこだわりを語り合ったり、連れ立ってツーリングへ出かけたりと、自動車という枠を超えた新しいコミュニティが形成されていきます。共通の趣味を持つ仲間と過ごす時間は、彼の心を深く満たしてくれました。

このように充実した日々を送る中で、彼は仲間からの誘いを受け、さらなる非日常の世界へ足を踏み入れることになります。

サーキットで解放された圧倒的なポテンシャル

休日の早朝、彼は仲間たちと共にサーキットへと向かいました。GT-Rは公道でも素晴らしい走りを見せてくれますが、その本当のポテンシャルを引き出せるのは、やはりクローズドな環境だと言えるかもしれません。

実際にヘルメットを被ってコースへ出て、制限のない直線でアクセルを深く踏み込むと、公道では決して体験できない野性味あふれる加速力に圧倒されたそうです。さらに驚かされたのは、激しいスピードから急減速してコーナーを曲がる際の、信じられないほどの安定感でした。彼自身は決してプロのレーシングドライバーというわけではありませんが、高度に制御された四輪駆動システムなどが、未体験の領域でも不思議なほどの安心感を与えてくれたと振り返っていました。

このサーキットでの体験を通じて、彼はGT-Rという自動車の奥深さを知り、無理をしてでも新車で購入して本当によかったと心から惚れ直したそうです。日常のストレスをすべて置き去りにして風を切る感覚は、まさに至福のひとときでした。

しかし、そんな最高の非日常からいつもの生活圏へ戻ると、少しずつ現実的な悩みが見え隠れし始めることになります。

ガソリンメーターと段差が突きつける日常の現実

彼を待ち受けていた最初の現実は、目に見えて減っていく燃料でした。R35型のGT-Rはハイオクガソリン指定の、高性能なエンジンを積んでいるため、燃費の面で有利とは言えません。彼はそのことを購入前から承知していましたが、運転そのものが楽しすぎて用事もないのに長距離を走ってしまうため、給油の頻度が予想をはるかに超えてしまったそうです。走るのが楽しいからガソリンが減り、また走りたいから給油所に通うという、嬉しくも悩ましいループに陥っていました。

さらに彼の心を悩ませたのが、無理をして買った新車の愛車を絶対に傷つけたくないという強い愛情です。スポーツカー特有の低い車高を持つため、コンビニエンスストアやファミリーレストランに入る際の、ほんの数センチの段差や傾斜に対して極度に過敏になってしまいました。

サーキットの猛スピードではあんなに強気でステアリングを握っていた彼が、近所のスーパーマーケットの入り口を前にすると、途端に真剣な表情でそろそろと徐行するようになります。傍から見れば少しクスッと笑ってしまうような落差ですが、真新しいフロントバンパーの下を擦るかもしれないという恐怖は、本人にとって非常に切実な問題でした。

こうした日常のささいな気遣いが積み重なるにつれて、彼のカーライフにはある大きな矛盾が生じるようになっていきます。

愛情ゆえに乗らなくなるという大きな矛盾

段差や駐車場の狭さに対する不安が大きくなるにつれ、彼のお出かけスタイルに明らかな変化が現れ始めました。出先の環境が少しでも不確実だと、GT-Rで出かけることをためらうようになってしまったのです。

次第に、少し離れた商業施設へ行く際も、天気が悪そうな日も、公共交通機関を選んだり、他の移動手段を利用したりする機会が増えていきました。大切な愛車を傷つけたくない、消耗させたくないという愛情が強すぎるあまり、結果として憧れのGT-Rをガレージに眠らせておく時間の方が圧倒的に長くなってしまったのです。

乗りたくて乗りたくてたまらなかったはずの自動車なのに、傷つけたくない一心で乗らなくなってしまうというのは、とても皮肉な逆転現象だと言えるでしょう。しかし、自動車を心から大切に思う方であれば、この本末転倒とも言えるもどかしい状況に、深く共感していただけるのではないでしょうか。

このような愛情と現実のジレンマを抱えながら、彼は自分にとって自動車とはどのような存在であるべきかを自問自答するようになります。

2年半での別れと残されたかけがえのない財産

そうして月日は流れ、新車での購入から2年半が経過しました。最初の車検である3年目まであと半年というタイミングを迎えたとき、彼はGT-Rを手放すという決断を下します。大きな故障があったわけでも、走りに飽きたわけでもありません。ただ、自分の現在のライフスタイルにおいて、気兼ねなく乗れる機会があまりにも少ないという現実を静かに受け入れた結果でした。幸いなことに、人気車種ゆえに手放す際にも経済的に大きな損失はなかったそうです。

彼はこの期間を振り返り、サーキットの走りよりも、段差のある駐車場に斜めから慎重に進入する技術の方が格段に上達してしまったかもしれないと、少しユーモアを交えて語ってくれました。

初めての車検を待たず2年半での売却となりましたが、彼にとってこの経験は決して後悔するようなものではありません。憧れを自分の手で現実のものにし、圧倒的な非日常の走りを体感し、同じ情熱を持つ仲間と出会えたことは、間違いなく彼の人生を豊かにしてくれました。

夢にまで見た理想の自動車と、自分の日常のペースに無理なく寄り添ってくれる自動車は、必ずしも同じではないということに気づけたそうです。カタログの数字を眺めているだけでは決して分からない、実際に所有したからこそ得られたこの深い実感は、これからの彼のカーライフをより一層素晴らしいものにしてくれることでしょう。



ライター:Masaki.N
自動車メーカーで車体開発エンジニアとして設計・先行開発に携わった後、マーケティング/市場リサーチ領域で商品導入・訴求設計にも従事。さらに自動車サブスク系ITベンチャーでマーケティングを担当し、ユーザー視点のコミュニケーション設計を経験。現在は自動車ライターとして、新車情報、技術解説、モデル比較、中古車相場、維持費、業界動向まで幅広く執筆。SEO記事・コラム・インタビューなど媒体横断で制作し、専門知識を生活者の言葉に翻訳して「買う/持つ」の判断を支援します。加えて、カスタムを含む実車取材・体験を通じて得た一次情報を記事に落とし込み、机上の知識にとどまらない“現場感”のある解説を強みとしています。


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