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歯科医「見逃してほしくない」→実は『歯周病』の初期サインかも…受診すべき“3つのサイン”とは?

  • 2026.8.12
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「歯周病を放置すると口だけでなく全身の病気にも影響する」という話を耳にしたことはありませんか?口の中の病気が、なぜ命に関わる心筋梗塞などの心臓疾患と関係しているのでしょうか。

「歯周病が進むと体にどんな悪影響があるの?」「歯医者に行かないと全身のリスクが高まる?」といった疑問や不安を抱く方も少なくありません。実は、歯周病と全身の健康(心筋梗塞など)の間には、私たちが思うよりも複雑な仕組みが隠されています。

必要以上に怖がることはありませんが、お口の炎症は全身と深くつながっています。この記事では、歯科医師の鷹巣多紀さんの見解に基づき、歯周病が体に与える影響や、見逃してはいけない歯ぐきのサイン、そして明日からすぐに始められる正しいセルフケアについて分かりやすく解説します。

歯周病が全身に影響する?心筋梗塞との複雑な仕組みとは

---「歯周病が心筋梗塞につながる」と聞きました。お口の中の細菌が、血液に入って心臓を直接攻撃するということなのでしょうか?

鷹巣 多紀さん:

「「歯周病が心筋梗塞につながる」と聞くと、口の中の細菌が血流に乗り、心臓を直接攻撃するように感じるかもしれません。ただ、実際の仕組みはもう少し複雑です。

歯周病は、歯と歯ぐきの境目にたまったプラーク(細菌のかたまり)から始まります。プラークによって歯ぐきに炎症が起こり、さらに歯を支える骨まで壊れ始めた状態が「歯周炎」です。炎症が続くと、歯と歯ぐきの間の溝である「歯周ポケット」が深くなり、その内側には傷つきやすい面が広がります。そこから細菌や細菌の成分が血液中へ入り、一時的な菌血症(血液中に細菌がいる状態)が起こることも報告されています。

もう一つ考えられているのが、「炎症」を介した経路です。炎症が起きている歯ぐきでは、サイトカインと呼ばれる、炎症に関わる物質がつくられます。こうした物質が全身に影響すると、血管の内側を覆う細胞である「血管内皮」の働きが乱れたり、血小板が集まりやすくなったりする可能性があります。血管の壁に脂質などがたまる動脈硬化や、血のかたまりである血栓のできやすさに関わる変化です。

心筋梗塞の多くは、心臓へ血液を送る冠動脈の壁にできた病変が破れ、そこに血栓が生じて血流が途絶えることで起こります。歯ぐきで慢性的な炎症が続くことが、この流れを後押ししているのではないかと考えられ、研究が重ねられてきました。

歯周炎がある人では、ない人に比べて、心筋梗塞など動脈硬化に関係する心血管疾患が多いという関連が示されています。ただし、歯周病と心筋梗塞には、喫煙、糖尿病、肥満、加齢といった共通するリスク要因もあります。

現時点で「歯周病が心筋梗塞を直接引き起こす」という因果関係は確定しておらず、歯周病を治療すれば心筋梗塞を防げるという証拠も、まだ十分ではないのが実情です。

必要以上に怖がることはありませんが、口の中の炎症も全身と無関係ではない、と覚えておいてください。」

見逃してはいけない歯周病のサインと受診の目安

---自分では気づきにくい歯周病ですが、どのような初期サインに気をつければよいでしょうか?また、歯科受診を怠るとどうなるのでしょうか。

鷹巣 多紀さん:

「見逃してほしくないサインは3つあります。①歯みがきやフロスのときに血が出る、②歯ぐきが赤く、ぷっくりと腫れている、③歯ぐきが下がって歯が以前より長く見えることです。

出血や腫れは、プラークに反応して歯ぐきに炎症が起きているサインかもしれません。やっかいなのは、痛みをともなわないことが多い点です。「強く磨きすぎただけ」「最近疲れているから」と考え、受診を先延ばしにしてしまう方も少なくありません。

炎症が歯ぐきだけにとどまっている「歯肉炎」の段階であれば、毎日のケアを見直し、歯科で必要な処置を受けることで、健康な状態へ戻せる可能性があります。ところが、炎症が奥へ進み、歯を支える骨が失われる「歯周炎」になると、完全に元どおりにするのは難しくなります。歯ぐきが下がる、歯と歯の間に隙間ができる、歯が揺れる、膿が出るといった変化は、すでに病気が進んでいるサインかもしれません。

ただし、見た目や痛みの有無だけで、歯周病の進み具合を判断することはできません。歯科では、歯周ポケットの深さ、検査時の出血、歯の揺れ、エックス線写真などを確認し、総合して診断します。

では、歯周病を放置して受診を怠るとどうなるのでしょうか。ここは不安をあおらず、分けて考えることが大切です。歯科受診が遅れたこと自体がすぐに心筋梗塞などの重病を引き起こす、と証明されたわけではありません。

ただ、歯周炎を放置すると、口の中の炎症が長引き、病気が進んで歯を支える骨などへのダメージが広がるおそれがあります。また、歯周炎のある人は、ない人に比べて心血管疾患が多いという関連も報告されています。

異変をそのままにせず歯科で確かめることは、まずご自身の歯を守るために大切です。口の中の炎症も全身と無関係ではないことを知っておいてください。 なお、歯ぐきの出血や腫れには、歯周病以外の原因が隠れている場合もあります。症状を繰り返すようなら自己判断せず、早めに歯科で検査を受けましょう。」

お口の炎症を抑える!明日から始められるセルフケア

---歯周病を防ぎ、口の中の炎症を抑えるために、日頃のケアで意識すべきポイントや効果的な方法を教えてください。

鷹巣 多紀さん:

「歯周病を防ぎ、口の中の炎症を抑えるために、毎日のケアは大切です。明日から一つだけ増やすなら、「夜に1回、歯と歯の間を掃除する」ことをおすすめします。

歯ブラシの毛先は、歯と歯が接している部分には届きにくいものです。隙間が狭い場所にはデンタルフロス、少し広い場所には歯間ブラシが向いています。フロスは歯ぐきへ勢いよく押し込まず、歯の側面に沿わせて上下に動かしてください。

歯間ブラシは、太いものを無理に押し込まないことが大切です。力を入れずに通り、ブラシの毛が両側の歯にやさしく触れるサイズを目安にしましょう。どの道具やサイズが合うか分からない場合は、歯科衛生士に相談すると、選び方や正しい使い方を教えてもらえます。

普段の歯みがきは、フッ化物配合の歯みがき剤を使い、1日2回、1回2分ほどが基本です。やわらかめの歯ブラシを歯と歯ぐきの境目に当て、1〜2本ずつ小刻みに動かしましょう。力を入れて大きく横にゴシゴシこすると、汚れを十分に落とせないうえ、歯ぐきを傷つけることがあります。

「しっかり磨く」ことと「強くこする」ことは同じではありません。血が出る場所を避けるのも、反対に強くこするのもおすすめできませんので、やさしい力で清掃してください。それでも出血や腫れを繰り返す場合は、歯科を予約しましょう。

また、自宅のケアだけでは取り除けない汚れもあります。プラークが硬くなった歯石や、深い歯周ポケット内の汚れには、歯科での検査と処置が必要です。歯肉炎予防の効果が確認された成分を含む洗口液は、補助として役立つことがありますが、歯ブラシや歯間清掃の代わりにはなりません。

心筋梗塞などのリスクを下げ全身の健康を維持するには、禁煙、適度な運動、血圧・血糖・コレステロールの管理なども欠かせません。歯ぐきのケアとあわせて続けてください。

最初の一歩は、「今夜から歯間清掃を始める」「気になるサインがあれば歯科で確かめる」。まずはこの2つで十分です。」

歯周病の予防から始める、全身への健康アプローチ

歯周炎を放置すれば、大切な歯を失うだけでなく、全身への影響を広げる恐れもあります。

大切なのは、まず自分自身の歯ぐきに目を向け、「出血」「腫れ」「歯ぐきの下がり」といった歯周病のサインに気づくこと。そして、気になる異変をそのままにせず歯科受診で確かめ、口内の炎症をしっかり管理することです。

明日からできる最初の一歩として、「夜に1回、デンタルフロスや歯間ブラシで歯と歯の間を掃除する」という簡単な習慣を取り入れてみてはいかがでしょうか。禁煙や運動といった全身の健康管理とあわせて、まずはできることから始めてみましょう。


監修者:鷹巣 多紀
大学病院口腔外科にて研修後、一般歯科にて勤務。現在は1児の母として子育てと仕事に奮闘しています。
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