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「ドンッ」自宅で転倒した70代父→口を開けると耳前に痛みが。数日後、病院へ行くと…歯科医から告げられた“予想外の原因”

  • 2026.8.11
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。歯科医師の鷹巣多紀です。

夜中に「ドン」という音がして廊下へ行くと、ご高齢の父親が座り込んでいる——。受け答えができ、目立った出血がなければ「大したことはない、一晩様子を見よう」と判断してしまいがちです。

顎の骨折は、見た目の大きな腫れや出血だけでなく、「噛み合わせが変わった」「入れ歯が収まらない」という口の機能の異変として現れることが多いのをご存知でしょうか。

Aさんの父親に起きたこと

Aさんは50代の女性で、70代の父親と暮らしています。

ある夜、父親が廊下で足を滑らせ、顎先を床にぶつけました。
父親はすぐに受け答えができ、口元には小さな赤みがある程度でした。「これくらいなら大丈夫」と話したため、Aさんもその晩は見守ることにします。

翌朝、父親は「入れ歯がずれた気がする」と言い、朝食をほとんど残しました。Aさんは、転んだ拍子に入れ歯の位置が変わったのだろうと考え、やわらかい食事を用意します。

しかし、数日たっても上下の歯がうまく合いません。口を開けると耳の前が痛み、以前より口が開きにくくなったため、歯医者へ行くことにしました。

歯科医師は入れ歯を削る前に、「最近、顔や顎をぶつけませんでしたか」と尋ねます。Aさんが転倒の時刻と顎先を打ったことを伝えると、噛み合わせ、口の開き方、顎の圧痛、入れ歯の収まり方を確認されました。骨折の可能性が疑われたため、精密検査が受けられる歯科口腔外科へ紹介されることになったそうです。

CTで下顎骨骨折が判明

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

病院の歯科口腔外科で精密なCT検査を行った結果、顎の関節に近い下顎の骨(下顎骨関節突起など)が折れ、骨の位置がずれていることが分かりました。診断は下顎骨骨折です。

入れ歯自体が破損・変形したのではなく、骨折によって下顎全体の骨の位置がずれてしまったことが、噛み合わせの違和感や「入れ歯が収まらない」原因だったのです。

父親は骨を元の位置に戻して固定する手術や処置を受けました。適切な消炎・固定期間を経て骨の状態を確認した後に入れ歯を再調整し、数週間後には無事に家族と同じ食卓を囲めるようになりました。

Aさんは、「入れ歯だけの問題だと思い込み、転んだことや顎を打ったことを最初から話す発想がありませんでした」と振り返ります。転倒直後に会話ができていたことも、判断を遅らせる要因となっていました。

骨折はぶつけた場所だけに起こるとは限らない

下顎の骨はアーチ状のリング構造をしているため、顎先(オトガイ部)に受けた大きな衝撃が骨を伝わり、最も細く脆い耳の前の関節付近(関節突起)で骨折を起こすことが非常によくあります(間接骨折)。そのため、顎先の傷が小さくても、離れた耳の前や噛み合わせに重大な症状が出ることがあるのです。

転倒や強打の後に確認したい主なチェックリストは以下の通りです。

  • 上下の歯(または入れ歯)が以前と同じように噛み合わない
  • 口が指2本分以上開きにくい、開けると耳の前や顎が痛む
  • 下唇や顎先に「しびれ」や正座の後のような感覚麻痺がある(神経損傷のサイン)
  • 耳の中からの出血(外耳道出血)や、口の中の粘膜からの出血・内出血がある

受傷直後は興奮やショックで痛みに気づかず、数日経って「食事が噛めない」ことで初めて骨折に気づくケースも少なくありません。

入れ歯が急に外れる、同じ位置に収まらないといった変化も重要なサインです。転倒があった場合は「入れ歯の不具合」と自己判断せず、必ず顎の骨や関節に異常がないか歯科医院で確認してもらいましょう。

 

受診時は転倒の経過も伝える

歯医者(歯科・歯科口腔外科)へ行くときは、以下の情報を整理して伝えてください。

  1. いつ、どこで転んだか(受傷日時)
  2. 顔や顎のどこを、どのようにぶつけたか
  3. 意識障害、吐き気、頭痛、出血の有無
  4. いつから噛みにくさや痛みが出たか
  5. 普段使っている入れ歯(破損していても持参する)

転倒・顔面打撲の際、激しい頭痛、吐き気・嘔吐、意識が朦朧とする、視界の異常、大量の出血、息苦しさなどがある場合は、歯科受診を待たず直ちに脳神経外科等を受診するか、119番(救急車)を呼んでください。

高齢者の場合、受傷直後は正常でも、数週間〜数ヶ月後に「慢性硬膜下血腫」を発症することもあるため、頭部全体の経過観察が必要です。

転倒後の「噛み合わせの変化」を見逃さない

Aさんの父親に起きていたのは、入れ歯のずれではなく下顎骨骨折でした。骨折を治療してから入れ歯を調整し、再び家族と食事を取れるようになりました。

転倒後に入れ歯が急に合わなくなったら、入れ歯だけでなく顎の骨や関節も確認する必要があります。会話ができる、腫れが少ないという様子だけでは、顎の骨折の有無は判断できません。

いつ、どこで転び、顎のどこを打ったのかを歯医者へ伝えてください。噛み合わせのずれや口の開けにくさがあれば、画像検査を含めて確認する手がかりになります。


※本記事は一般的な歯科・口腔外科学的情報の提供を目的としたものです。

執筆・監修:鷹巣 多紀
大学病院口腔外科にて研修後、一般歯科にて勤務。現在は1児の母として子育てと仕事に奮闘しています。
歯科医師ママkiki|note: https://share.google/uUYsDiSMnkNKZCrOw X: https://x.com/kikimama0405 

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