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“すり足”で歩く父。「年を取ったから仕方ない」と思いきや…医師から子どもに告げられた“事実”に「もっと早く気づいていれば…」

  • 2026.8.1
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆様こんにちは。日々心身の不調と向き合う医師、松岡です。

Nさん(仮名)が近くに住む両親の様子を見に行ったときのことです。お父さんの歩幅が狭くなり、トイレに間に合わないことが増えていました。「年を取ったから仕方ない」と納得していました。

しかし、ある日、すり足でつまずき転倒して骨折し、手術を受けることになりました。そのまま車椅子生活となり、言葉も出ないほど認知機能が低下した父の姿に切なさを感じたNさんは医師から驚くべき話を聞きます。

「もっと早く気づいていれば、また一緒に歩いて旅行に行けたかもしれないのに」と後悔しないために、見るべきポイントとはどこにあったのでしょうか。今回は、老化と誤認されやすい「脳の病気」の危険なサインと、手遅れになる前に取るべき行動について分かりやすく解説します。

歩幅の減少は「脳が水に圧迫されている」危険なサイン

なぜ「ただの老化」という油断が、取り返しのつかない事態を招くのでしょうか。小刻みな歩行などを引き起こす特発性正常圧水頭症(iNPH)は、脳脊髄液という水が頭の中に過剰に溜まることで起こります。

【脳が圧迫され機能が失われるフロー】

・脳脊髄液の滞留
脳の周囲を循環してクッションの役割を果たす水(脳脊髄液)が、何らかの原因で頭の中に過剰に溜まります。

・脳室の拡大と圧迫
行き場を失った水が、脳室という脳内の部屋を水風船のようにパンパンに膨らませ、周囲の脳組織を内側から強く圧迫します。

・神経伝達の遮断
圧迫により、足の動きや排尿、記憶をコントロールする神経回路が引き伸ばされて障害され、歩行障害や尿失禁などが引き起こされます。

「ただの老化」と「治る認知症」の境界線

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

足取りが重くなったり、トイレの失敗が増えたりしたとき、「年のせいだから」と納得してしまうご家族は少なくありません。

しかし、特発性正常圧水頭症(iNPH)は、一般的なアルツハイマー型認知症などとは異なり、適切な治療(頭に溜まった過剰な髄液を腹腔などにバイパスさせる「シャント手術」など)を行うことで、症状の改善や進行の抑制が期待できるという大きな特徴があります。(※改善の程度には個人差があり、全ての症状が完全になくなるわけではありません)

これを単なる老化と思い込んで放置してしまうと、脳への圧迫が長期間に及び、神経細胞が回復困難なダメージを受けてしまうおそれがあります。その結果、いざ手術をしても運動機能や認知機能が十分に回復しなくなり、寝たきりや深刻な介護状態へつながってしまうこともあります。

早期発見と適切な治療により、再び自分の力で歩く日常を取り戻せる可能性がある病気であることを知っておくことが大切です。

重症化する前に、確認すべき3つのサイン

ご家族の老いを「仕方ない」と見過ごさず、回復のチャンスを逃さないために、以下の危険サインに注意してみましょう。

1.歩幅が小さく、足の裏を床に擦るように歩く(すり足歩行)

足の筋力低下だけでなく、脳からの指令がうまく伝わっていない可能性があります。「ガニ股で、足が地面に張り付いたような歩き方」は特徴的なサインの一つです。

2.トイレが近く、間に合わずに漏らしてしまう(尿失禁)

加齢による膀胱の衰えだけでなく、脳が排尿のコントロールを正しく行えなくなっているサインかもしれません。

3.ぼんやりとして自発性がなくなり、注意力が低下した

出来事を忘れる記憶障害よりも、「反応が遅くなる」「何事にも無関心になる」といった意欲の低下が目立つのも特徴です。

「年のせい」と諦めないで!小さな異変に気づくことが大切な家族を守る

親やご家族の歩き方の変化、トイレの失敗、意欲の低下などを「単なる老化」だと自己判断して放置してしまうと、回復のチャンスを逃し、寝たきりや深刻な介護状態につながってしまう恐れがあります。

大切なご家族の健康と日常を守るために、以下のポイントを意識してみましょう。

  • 3つの危険サインを見逃さない:「すり足でガニ股の小刻み歩行」「突然の尿失禁」「反応の遅れや意欲の低下」がないか注意深く観察する。
  • 「早期発見・早期治療」で改善を目指す:特発性正常圧水頭症(iNPH)は手術で症状の改善が期待できる病気であることを知り、放置せずに医療機関へ繋げる。
  • スマホ動画を活用して専門医へ相談する:本人が受診を渋る場合は、普段の歩き方をスマートフォンで撮影し、それを持って脳神経外科や脳神経内科を受診してみる。

「もう高齢だから」と思い込まず、少しでも違和感を覚えたら早めに脳神経外科・脳神経内科などの専門医へ相談することが、後悔を防ぎ、家族の笑顔を守る第一歩になります。


※本記事は一般的な啓発を目的としたものであり、特定の医療行為の勧誘や診断を代行するものではありません。症状がある場合は必ず脳神経外科、脳神経内科、またはかかりつけ医にご相談ください。

監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など

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