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「よくある鼻風邪だろう」“黄色い鼻水”を放置→数週間後、生臭いにおいを放つようになり…50代男性に告げられた“意外な病名”

  • 2026.8.17
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

周術期管理において、多様な疾患をお持ちの患者さまの安全管理に携わっている麻酔科専門医の松岡雄治です。

「風邪をひいた後、どうも鼻水が黄色くて長引く。よくある鼻風邪だろう。」と放置した50代男性Oさん。

数週間後、鼻水は止まるどころか生臭いにおいを放つようになり、いつも頬の奥に鈍い痛みを感じるようになってしまいました。結局、耳鼻科と歯科を受診し、告げられた診断名は「歯性上顎洞炎(しせいじょうがくどうえん)」。
手術と原因となった歯の抜歯により事なきをえましたが、「あの時、ただの鼻風邪だと油断せず、すぐに病院に行けばよかった…」と深い後悔を口にしています。なぜ、風邪をひいた後のちょっとした油断が、激しい頬の痛みと悪臭を招くのでしょうか。

今回は、見逃してはいけない「長引く鼻水に隠された奥歯のSOS」について解説します。

歯性上顎洞炎は上の奥歯と鼻を繋ぐ「薄い防壁の突破」

なぜ、いつまで経っても治らない黄色い鼻水や悪臭が発生するのでしょうか。上の奥歯の根元から、鼻の横の空洞(上顎洞)へと感染が広がるメカニズムは、以下のように進行します。

【奥歯の細菌が鼻に侵入するフロー】

  1. 解剖学的な危うさ(薄い防壁):上顎の奥歯の根元は、鼻の横にある空洞「上顎洞」と、薄い骨一枚で隔てられているだけで、非常に近く接しています。
  2. 細菌の侵食(穿通):むし歯や歯周病、過去の歯科治療後の再感染により、歯根の奥で細菌が繁殖し、骨の防壁を越えて広がります。
  3. 上顎洞での膿の発生:上顎洞の粘膜に細菌が侵入して激しい炎症(歯性上顎洞炎)が起こり、膿が溜まります。
  4. 内科治療への抵抗:耳鼻科で風邪薬をもらって飲み続けても、大元の原因である「歯根の細菌」が残り続けるため、なかなか治りにくいのが特徴です。

「痛まない歯」と「長引く鼻づまり」に潜む危険な罠

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「鼻水の原因が歯にあったなんて」「忙しいから市販薬で様子を見よう」と考えてしまうのは無理もありません。

しかし、知っておいていただきたい重要なポイントがあります。実は、歯性上顎洞炎の最大の特徴は「歯が痛まないケースが多いこと」です。

原因となる歯は、すでに神経がダメージを受けていたり、過去に神経を抜いていたりして、温度刺激などで痛みを感じない状態になっていることが少なくありません。さらに、歯の根元の膿が上顎洞へ通り抜ける「抜け道」ができていると、圧力が逃げるため、歯の痛みをほとんど感じないのです。

この病気は働き盛りの20代〜60代に多く、近年ではインプラントが上顎洞に突き抜けたり、歯科材料が迷入したりして発症するケースも増えています。自己判断で放置すると、炎症が目の周りや脳の近くにまで波及して重症化するリスクもあります。

手遅れになる前に、確認すべき3つのサイン

大掛かりな処置が必要になる前に、以下の3つの初期サインをご自身で確認してみてください。

1. 鼻水が「片方の鼻からだけ」出て、明らかに「生臭いにおい」がする

一般的な風邪や花粉症は両側の鼻に症状が出ますが、歯性上顎洞炎は片側性が基本です。また、生ゴミのような強い嫌なにおいを伴うのが特徴です。

2. 下を向いたりお辞儀をしたりすると「片方の頬や目の下がズキズキ重く痛む」

上顎洞(頬の裏の空洞)に膿が溜まっているため、下を向いたときに重力で圧力がかかり、頬部に鈍い痛みが走ります。

3. 「ジャンプしたり階段を下りたりする」と上の奥歯に響く

歯自体の痛みはなくても、振動による物理的な刺激が炎症を介して、上の奥歯に「ズーン」と不快な響きとして伝わります。

ただの鼻風邪とはちょっと違うと思ったら

「まさか鼻水の原因が上の奥歯だったなんて…」と原因が分からないまま悩み、受診を先延ばしにしてしまうのは無理もないことです。

予防と早期発見の第一歩は、「下を向いたときに片方の頬だけが重く痛まないか」「鼻水が片方からしか出ないか」「嫌なにおいがしないか」をセルフチェックすることです。

もし当てはまるサインがある場合は、まず耳鼻咽喉科を受診し、「歯が原因の可能性はありますか?」と医師に伝えてみてください(必要に応じて歯科・口腔外科と連携して治療を行います)。

少しでもお口や鼻の違和感を感じたら、我慢せずに医療機関を頼ってくださいね。


監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

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