1. トップ
  2. ヘルスケア
  3. 「熱中症予防のため」“真水”を大量に飲んだ50代男性→数時間後、“全身の痙攣”で救急搬送され…待ち受けていた“恐ろしい事態”

「熱中症予防のため」“真水”を大量に飲んだ50代男性→数時間後、“全身の痙攣”で救急搬送され…待ち受けていた“恐ろしい事態”

  • 2026.8.7
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

周術期管理において、多様な疾患をお持ちの患者さまの安全管理に携わっている麻酔科専門医の松岡雄治です。今回は、猛暑期や運動時に注意が必要な「水中毒(低ナトリウム血症)」のメカニズムと予防法について解説します。

「熱中症予防のためには水分補給が大切だが、清涼飲料水の糖分が気になる」と考えた50代男性のMさん。夏の朝、ハードなランニングを終えたMさんは、真水を選び大量に飲み干しました。

しかし数時間後、Mさんは激しい吐き気と全身の痙攣を起こして倒れ、救急搬送されました。診断名は「水中毒(重度低ナトリウム血症)」。集中治療室での治療を経て回復しましたが、「水分だけでなく塩分も適切に補給すべきだった」と振り返っています。なぜ、熱中症予防のための水分補給がこのような症状を引き起こしたのでしょうか。

水中毒(低ナトリウム血症)が発生するメカニズム

大量の発汗後に真水だけを摂取した際、体内では以下のような反応が起こります。

  1. 塩分の喪失(発汗):汗をかくことで、水分とともに体内の主要な電解質であるナトリウムが失われます。
  2. 血液の希釈(飲水):この状態で真水のみを大量に摂取すると、血液中のナトリウム濃度が急速に低下します(低ナトリウム血症)。
  3. 浸透圧による水の移動:体内の浸透圧を平衡に保とうとする働きにより、水分が血液中から細胞内へ移動します。
  4. 脳細胞の膨張(脳浮腫):水分が脳細胞内に流入して浮腫(むくみ)が生じます。頭蓋骨という限られたスペースの中で脳が圧迫されるため、頭痛、嘔吐、痙攣や意識障害などを引き起こします。

水分補給における適切な方法と注意点

undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

汗をかいた際に水分を補うこと自体は熱中症対策として極めて重要ですが、「どのような飲料を、どのように飲むか」が大切です。

ナトリウム濃度が低い水などの飲料は、大量発汗時にそれだけを多量に摂取すると低ナトリウム血症を引き起こすリスクがあります。補給の際は、喉の渇きを感じる前からこまめに少量ずつ飲むことが推奨されます。

一方で、喉が渇いていないにもかかわらず「健康のため」と義務感から短時間に過剰な量の真水を飲むことも避けましょう。通常、健康な腎機能があれば余分な水分は尿として排出されますが、短時間の過剰摂取や体調・持病によっては調整が追いつかなくなることがあります。

なお、厚生労働省の指針では、通常の日常生活において飲み物から摂取する水分量の目安は1日約1.2Lとされています。ただし、運動時や猛暑下で大量に発汗した場合は、発汗量に応じた追加の補給(電解質を含むもの)が必要です。

水中毒が疑われる初期サイン

熱中症の症状と重なる部分もありますが、大量の水分を摂取した後に以下の症状が現れた場合は注意が必要です。

1. 水を大量に飲んだ後の急速な頭痛や吐き気

補給後にもかかわらず、締め付けられるような頭痛や嘔吐が急速に悪化する場合。

2. 急激な体重増加やむくみ

短期的に体内の水分量が過剰になることで、顔や手足にむくみが出たり、急速に体重が増加したりする場合。

3.頭がぼーっとして「生あくびが何度も出たり、会話が噛み合わない」

脳浮腫の影響により脳機能に障害が生じ始めると、生あくびの頻発、意識の混濁、会話が成り立たなくなるなどの症状が現れます。

安全な水分・塩分補給のために

水中毒を防ぐ基本は、「のどが渇く前からこまめに少量ずつ飲むこと」です。また、激しい運動や屋外作業などで大量に汗をかいた場合は、真水だけでなく、状況に応じて経口補水液や塩分を含んだ飲料を活用することが有効です。

一方で、スポーツドリンクの摂取に気をつけるべき方もいらっしゃいます。高血圧、腎臓病、心臓病などの持病があり、主治医から日常的な塩分や水分の摂取制限を受けている方の場合は、スポーツドリンクや経口補水液の利用について、あらかじめ主治医に相談しておくことを勧めます。

もし、真水を大量に飲んだ後に激しい頭痛やだるさを感じたとき、あるいは会話が噛み合わないなどの異変を感じたときは、我慢せずにまずは内科や救急外来を受診してみてください。異変を感じた際は早期に対応することが重要です。


参考:健康のため水を飲もう講座(厚生労働省)

監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

の記事をもっとみる

注目コンテンツ