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「咳き込んだら胸が痛む…」“休めば治る”と放置→数時間後、突然息ができなくなり…20代男性を待ち受けていた“恐ろしい病気”

  • 2026.8.6
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

みなさまこんにちは。周術期管理において、あらゆる病気をお持ちの患者さまを日々安全にお守りしている麻酔科専門医の松岡雄治です。今回は、見逃してはいけない「胸の痛みのSOS」について解説します。

「ちょっと咳き込んだら胸がピキッと痛む…。スポーツで筋を違えただけだろう。休めば治るよ」。サークル活動に打ち込むMさん(20代男性)は、友人の「念のため病院に行ったら?」という心配を笑い飛ばしました。

しかし数時間後、彼は突然息ができなくなり、冷や汗とともに崩れ落ちてしまい、救急搬送されました。救急搬送先で告げられた診断名は「緊張性気胸(きんちょうせいききょう)」。
緊急で胸に太い管を入れる処置(胸腔ドレナージ)を受け一命は取り留めましたが、現在は「また突然息ができなくなるのでは」という再発の恐怖がよぎるようになってしまいました。

なぜ、ちょっとした胸の痛みを放置しただけの油断が、このような事態を招いたのでしょうか。

緊張性気胸は胸の中で空気が逃げ場を失う「一方通行の罠」

なぜ、肺から漏れた空気が命を脅かすのでしょうか。胸の中で空気が溜まり続けるメカニズムは、以下のように進行します。

【肺のパンクから心停止へのフロー】

  • ブラ(風船)の破裂:肺の表面にある「ブラ」と呼ばれる脆い袋が破れ、空気が肺の外の空間へ漏れ出します。
  • 一方向弁の形成:漏れ口が一方向弁のようになり、「吸った空気は漏れるが、吐いても外に逃げない」という一方通行の状態に陥ります。
  • 心臓と大血管の圧迫:逃げ場を失った空気が胸の中でパンパンに膨張し、呼吸を苦しくするだけではありません。直接、隣にある心臓や太い血管を強く押し潰します。
  • 循環の破綻(ショック):押し潰された心臓には血液が戻れないため、全身に血液も送ることができなくなり心停止に至ります。

「ただの筋肉痛」と「心停止のカウントダウン」の危険な境界線

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「体を動かしたから筋肉痛だろう」「若くて体力もあるし寝ていれば治るはずだ」。毎日を全力で駆け抜ける若い皆さんが、急な胸の痛みを「いつもの疲れ」と解釈してやり過ごしてしまうのは、無理もありません。

しかし、本件と通してぜひお伝えしたい「危険な境界線」があります。自然気胸は「10代から30代の背が高く痩せている男性」に発症しやすいことが知られています。成長期に肺が縦に急激に引っ張られることで、肺の表面に脆い風船のような組織(ブラ)ができやすくなるためです。

見落とされてしまいやすい要因は「最初は軽い筋肉痛のような痛みしかない」ことです。「少し息苦しいけれど我慢できる」と放置して日常生活や運動を続けると、呼吸のたびに漏れた空気が胸の中に蓄積し、ただの気胸から「緊張性気胸」へと悪化してしまうのです。

悪化する前に、確認すべき3つのサイン

ただの筋違えと、緊張性気胸を見分けるため、以下の3つの初期サインをご確認ください。

1. 息を吸うと胸や背中にピキッとした鋭い痛みが走る

筋肉痛のような鈍い痛みではなく、原因もないのに「突然」鋭い胸痛や背部痛が起こるのが特徴です。

2. 歩いたり動いたりするとどんどん息苦しさが強くなる

空気が胸の中に溜まり続け、肺が縮んでいくため、進行性の呼吸困難を感じます。

3.首の付け根の血管が不自然に浮き出ている(頸静脈怒張)

心臓が空気で圧迫され、全身から心臓へ戻るはずの血液がせき止められ、首の静脈がパンパンに膨らんでいる極めて危険なサインです。

その違和感を見逃さないことがポイント

「若いのに少しの胸の痛みで病院に行ったら大げさかもしれない」。そうやって周りに気を遣い、限界まで我慢してしまうお気持ちはよくわかります。しかし、気胸の一種である緊張性気胸は致命的となりうる病気です。大袈裟などということはありません。

気になったら、まずは「深く息を吸って痛みが強まるか確認する」という簡単な一歩から始めてみましょう。もし少しでも息苦しさを感じたときは、気になるときにはまずは、呼吸器外科や救急外来を受診してみてください。

違和感を大切にすることが重症化や深刻な事態を防ぐ鍵になるのです。


監修者・執筆:松岡 雄治

総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

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