1. トップ
  2. ヘルスケア
  3. ある朝、“陰嚢”が大きく腫れ上がった40代男性→「ただごとではない」病院に行くと…医師から告げられた“恐ろしい病名”とは?

ある朝、“陰嚢”が大きく腫れ上がった40代男性→「ただごとではない」病院に行くと…医師から告げられた“恐ろしい病名”とは?

  • 2026.8.23
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。泌尿器科専門医の小内友紀子です。

「ちょっと調子が悪いだけだろう」

夫が体調不良を訴えても、忙しい毎日の中でそう考えて、様子を見てしまうことはありませんか。フルニエ壊疽(えそ)という病気をご存じでしょうか。聞き慣れない名前ですが、進行が非常に早く、命に関わることもある病気です。

今回は、数日の間にあっという間に症状が進行し、大きな手術と長期入院が必要になったフルニエ壊疽のエピソードをご紹介します。

※本エピソードは複数の患者さんの経験をもとに再構成した架空のものです。特定の個人を指すものではありません。

数日前からの違和感が、一晩で急変

45歳のEさんは、以前の健康診断で血糖値の高さを指摘されていましたが、「少し食事に気をつければ大丈夫だろう」と、それほど深刻には受け止めていませんでした。

数日前から、お尻の周りに軽い痛みを感じていたEさん。妻のFさんは「風邪でも引いたのかしら」くらいに思っていたそうです。ところが、ある朝起きると状況は一変していました。陰嚢(いんのう)が大きく腫れ上がり、触るとぶくぶくとした違和感があるとEさんが訴えたのです。

「これは普通じゃない」
Fさんはただごとではないと感じ、すぐに泌尿器科を受診するようEさんに強くすすめました。

泌尿器科でCT検査を受けたところ、フルニエ壊疽と診断され、手術で炎症を起こしている組織を取り除くしかないと告げられました。

抗生剤だけでは治せない理由

フルニエ壊疽は、肛門や陰部の周りの皮膚から入り込んだ細菌が、皮膚の下の組織で急速に増殖し、組織を壊死(えし)させてしまう病気です。細菌が作り出すガスによって、皮膚の下がぶくぶくとした感触になるのも特徴のひとつです。進行がきわめて速く、発症から短期間で命に関わる状態になることもあるため、緊急性の高い病気として知られています。
適切な治療を行っても死亡率が10〜30%程度におよぶとされる、極めて重篤な超緊急疾患(メディカル・エマージェンシー)です。

壊死してしまった組織には血液が十分に届かないため、点滴や飲み薬の抗生剤だけでは薬の成分が患部に行き渡らず、効果が限定的です。そのため、壊死した組織を手術で取り除き、感染を広げないようにすることが治療の柱になります。抗生剤による治療は並行して行われますが、あくまで手術による感染源の除去とセットで初めて効果を発揮するものと理解しておくとよいかもしれません。

糖尿病や免疫の働きが弱っている方は、フルニエ壊疽のリスクが高いとされています。血糖値が高い状態が続くと、細菌に対する体の防御力が落ちやすく、感染が広がりやすくなるためです。Eさんも、以前から指摘されていた血糖値の高さが、発症の背景のひとつだったと考えられました。

2週間以上の入院を経て

undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

手術では、壊死した部分の組織を取り除く処置が行われました。感染を確実に取りきるため、一度の手術だけでなく、傷の状態を見ながら複数回に分けて処置を行うことも珍しくありません。Eさんの場合も処置を繰り返す必要があり、入院は2週間以上にわたりました。入院中は、感染のコントロールと並行して、血糖値をしっかり管理する治療も行われました。

長い入院生活の中で、Eさんは「まさかこんな大ごとになるとは思わなかった」と振り返っていたそうです。傷の処置を重ねながら少しずつ回復し、血糖コントロールも安定した状態で退院することができました。付き添っていたFさんも、「あのとき無理にでも病院に連れて行ってよかった」と胸をなでおろしていました。

ちょっとした違和感を見過ごさないで

フルニエ壊疽は、多くの方にとって聞き慣れない病気かもしれません。ですが、進行の速さゆえに、対応が遅れると命に関わることもある病気です。陰部やお尻の周りの痛みや腫れ、皮膚の違和感が急に強くなったときは、様子を見る時間は一切ありません。夜間や休日であっても躊躇せず、ただちに救急外来を受診してください。意識障害や強い倦怠感など体調が急変している場合は、迷わず救急車を呼びましょう。

また、受診時のタイムロスを防ぐためにも、受付で「陰部やお尻の周りが急激に腫れて痛む」旨を明確に伝え、泌尿器科、皮膚科、肛門外科、あるいは救急外来で一刻も早く診察を受けることが重要です。

糖尿病をお持ちの方や、そのご家族は、こうした感染症のリスクが高まることも知っておいていただきたいと思います。「これくらい」と思う違和感が、大きな病気のサインかもしれません。


執筆・監修:小内 友紀子
公益財団法人ときわ会 常磐病院 泌尿器科 診療副部長、東京女子医科大学病院 泌尿器科 講師、医師、医学博士、女性泌尿器科医師として、普段は女性によくある尿もれから、男性の前立腺癌をはじめとする泌尿器科領域の癌診療まで診療しております。
【資格】医師/ 医学博士 / 泌尿器科専門医・指導医 / 透析医学会専門医・指導医 / 排尿機能学会専門医

の記事をもっとみる

注目コンテンツ