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医師から『前立腺がん』と宣告された70代父→半年前から、腰に起きていた“ちょっとした異変”に「年齢のせいと放置しなければ…」

  • 2026.8.10
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。泌尿器科専門医の小内友紀子です。

「歳のせいで腰が痛むのは仕方ない」 ご高齢のご家族がそうおっしゃるのを聞いて、「マッサージにでも通っていれば良くなるだろう」と受け流してしまうことはありませんか。

前立腺がんというと、「尿の出が悪くなる」「頻尿になる」「血尿が出る」といった尿にまつわる男性特有の病気というイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし、実は尿の症状がほとんど出ないまま、思いがけない場所に最初の症状が現れることがあります。

今回は、単なる腰痛だと思って様子を見ていたら、実は前立腺がんが骨に転移していたというエピソードをご紹介します。

※本エピソードは複数の患者さんの経験をもとに再構成した事例です。特定の個人を指すものではありません。

マッサージに通っても治らない腰痛

75歳の男性・Bさんは、半年ほど前から腰の痛みを訴えるようになりました。

ご本人は「年齢のせいだろう」と深く気にせず、近所のマッサージ店に通う日々。ところが、施術を受けても痛みは一向に改善せず、むしろ少しずつ強くなっている様子でした。

離れて暮らす50代の娘・Cさんは、久しぶりに実家に帰った際、父の歩き方がぎこちなくなっていることに気づきました。

「お父さん、そのマッサージ、もう半年も行っているのに効いていないんじゃないの。一度ちゃんと病院で診てもらって」

Cさんに背中を押される形で、Bさんは近所の整形外科を受診することになりました。整形外科でレントゲン検査を受けたところ、骨に気になる影(骨破壊や骨硬化の像)があるとのことで、前立腺がんの骨転移が疑われ、泌尿器科への紹介となりました。

PSAの数値と骨への転移

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

泌尿器科では、まず前立腺がんの腫瘍マーカーである「PSA(前立腺特異抗原)」の値を採血で調べました。結果は基準値を大きく超える数値でした。続いて前立腺の組織を採取して調べる「針生検(せいけん)」を受け、前立腺がんであることが確定しました。

さらに、がんが骨に広がっていないかを調べる「骨シンチグラフィ」などの画像検査を行ったところ、複数の骨に転移が見つかりました。Bさんの長引く腰の痛みは、この骨転移によるものだったのです。

前立腺がんは一般に進行が緩やかであることが多く、初期には自覚症状がほとんどありません。そのため、排尿障害などの典型的な症状が出る前に、骨への転移による痛みがきっかけで見つかるケースも珍しくありません。

特に前立腺がんは、背骨や骨盤、太ももの骨などに転移しやすい性質があります。60代以上の男性で、湿布やマッサージ、整形外科での治療を行っても改善しない原因不明の腰痛や背部痛が続く場合は、前立腺の可能性も考慮することが大切です。

ホルモン療法で痛みが改善。定期的な経過観察が鍵

「がんが骨にまで転移しているなんて、もうダメかもしれない。年齢のせいと放置しなければ…」

診断を聞いたBさんは大きく落ち込み、ご家族も強い不安に包まれました。しかし主治医からは、「前立腺がんは骨転移がある場合でも、男性ホルモンの働きを抑える『ホルモン療法(内分泌療法)』がとてもよく効く特徴があります。痛みを抑えながら、長期間にわたって普段通りの生活を続けられる方も多くいらっしゃいますよ」と説明がありました。

前立腺がんは男性ホルモンを栄養にして増殖する性質があるため、その補給を断つホルモン療法が治療の中心となります。

Bさんもホルモン療法と痛みを抑えるお薬(鎮痛薬や骨修飾薬)による治療を開始したところ、腰の痛みが徐々に和らいでいきました。体調が持ち直し、以前のように散歩や外出を楽しめる日が増えたそうです。

ただし、ホルモン療法は非常に有効な治療法ですが、年単位の長期間服用を続ける中で、徐々に薬が効きにくくなる(去勢抵抗性前立腺がんへ移行する)場合もあります。そのため、痛みが引いたあとも自己判断で通院をやめず、定期的にPSA値を測定しながら経過を観察していくことが不可欠です。

長引く腰痛、整形外科だけで済ませていませんか

高齢のご家族の腰痛や体の痛みを、「年のせい」と決めつけて放置するのは禁物です。

まずは整形外科を受診し、骨や筋肉に異常がないか診てもらうのが基本ですが、マッサージや湿布で様子を見ても改善しない痛みが続くときは、泌尿器科的な原因(前立腺がんなど)が隠れている可能性も視野に入れましょう。

前立腺がんのスクリーニング検査である「PSA検査」は、わずかな採血だけで調べることができます。自治体の人間ドックや住民健診のオプション、あるいは内科や泌尿器科などの医療機関で簡単に受けることが可能です。特に50代以上の男性や、血縁者に前立腺がんの既往がある方は、定期的な受検をおすすめします。

ご家族の「なんだかいつもと違う」「治療しているのに痛みが引かない」という気づきが、病気の発見につながることもあります。気になる症状があれば、早めの受診を検討してみてください。


執筆・監修:小内 友紀子
公益財団法人ときわ会 常磐病院 泌尿器科 診療副部長、東京女子医科大学病院 泌尿器科 講師、医師、医学博士
女性泌尿器科医師として、普段は女性によくある尿もれから、男性の前立腺癌をはじめとする泌尿器科領域の癌診療まで診療しております。
【資格】医師 / 医学博士 / 泌尿器科専門医・指導医 / 透析医学会専門医・指導医 / 排尿機能学会専門医

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