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「電気代がタダに」営業の勧めで“太陽光パネル”を契約→初期費用200万で設置するが…10年後、60代夫婦に届いた“2通の通知”

  • 2026.8.5
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。FPで家計相談を行っている柴田です。

エアコンなしでは眠れないこの季節、電気代の明細を見るたびにため息が出ますよね。

今回は、10年前に自宅の屋根へ太陽光パネルを載せた60代のAさんのお話です。「いい買い物をした」と思いきや、10年後に届いたのはまさかの見積書2枚。太陽光そのものが悪いという話ではなく、「見るべき数字が違っていた」という失敗談です。

「発電した分だけ浮いて、余れば売れる」に納得した

10年ほど前、Aさん(60代・女性)の家に太陽光発電の訪問営業がやってきました。

応対した夫の隣で、Aさんも話を聞いていました。営業マンのトークはよどみないものでした。

「発電した分だけ電気代が浮きます。余った電気は電力会社が買い取ってくれます。ローンを組んでも売電収入で払っていけるので、実質タダみたいなものです」。

見せられた試算表には「11年で初期費用を回収、以降は丸ごとプラス」のような内容が書かれていました。初期費用はおよそ200万円。先に乗り気になったのは夫でしたが、家計簿を預かるAさんも「老後の電気代がタダになるなら」と背中を押し、一部ローンを組んで契約しました。

実際、設置してしばらくは電気代が目に見えて下がり、売電収入も試算表どおり月1万円前後入ってきたようです。夏のエアコンも「発電中」と思えば罪悪感なし。夫婦で「いい買い物をした」と満足していたそうです。ここまでは、営業マンの言うとおりだったのです。

10年後、立て続けに届いた「お知らせ」と見積書

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

異変は昨年でした。

まずパワーコンディショナー(パワコン。発電した電気を家庭で使える電気に変換する機器です)が故障し、電気工事店の見積書には「交換費用:約25万円」の文字。ほぼ同じ時期に電力会社からは「買取期間満了のお知らせ」が届き、売電単価は1kWhあたり30円台から8円台へと、およそ4分の1に下がりました。

さらに、屋根の塗り替えを検討したところ、リフォーム会社から「パネルをいったん外して戻す脱着費用が別途30万円ほどかかります」と言われる始末。「想定外だ」とうなる夫を横目に、Aさんは2枚の見積書を持って私のところへ相談に来られました。

維持費と売電下落を織り込んで、私が20年トータルで試算し直すと、収支はよくてトントン、屋根工事のタイミング次第でははっきりマイナスという結果になりました。

見落としていたのは「設置した後」にかかるお金

Aさん夫婦がまったく見ていなかったのが、設置後のコストです(というより、営業マンの説明不足でもあります)。パワコンの寿命は一般に10〜15年程度で、交換には20万円台からの費用がかかります。

屋根の葺き替えや外壁リフォームの際には、パネルの脱着費用も発生します。

そして、FIT(固定価格買取制度)による住宅用の買取期間は10年間。いわゆる「卒FIT」後の売電単価は大きく下がるため、当初の試算どおりには回収が進みません。もうひとつ盲点なのが撤去費用です。廃棄費用の積立が義務づけられているのは10kW以上の事業用が中心で、住宅用(10kW未満)は対象外。将来の撤去・処分費は自己負担になります。

投資的側面から見た太陽光発電の留意点

Aさんの試算をやり直しながら、改めて確認したポイントがあります。太陽光発電は「約200万円の初期費用を投じて回収を図る」という意味で、実質的な投資商品の一種と言えます。

しかし、一般的な金融投資と比較した場合、収益構造や維持費用(メンテナンスコスト)の面でいくつか留意すべき特性が存在します。

1.アップサイドが限定的である

株式や不動産なら、値上がりで投資額が2倍、3倍になる上振れがあり得ます。しかし太陽光の売上の源は日照時間。10年、20年待っても日照時間が2倍、3倍になることはなく、売上の上限は事前に概ね決まっています。

さらに、パネルやパワーコンディショナーなどの設備は経年劣化に伴い発電効率が徐々に低下する特性があります。そのため、長期的な発電量や売電収入は、初期の状態を維持するよりも緩やかに減少していく傾向にあります。Aさん宅の発電量も、設置当初と比べてじわじわ減っていました。

2.実物資産特有のリスク要因が存在する

太陽光発電には、気象条件や物理的なトラブルに起因するさまざまなリスクが存在します。例えば、天候不順による発電不足や電力会社による出力制御のほか、地震・台風・落雷などの自然災害による不具合、ケーブル等の盗難、雑草の繁茂に伴うトラブルなどが挙げられます。

証券口座内で取引が完結する株式や債券(ペーパーアセット)とは異なり、屋外に設置された「実物設備」であるため、物理的な環境変化や災害の影響を受けやすいという側面があります。

3.運用管理の手間とコストが発生する

導入時には業者選定や各種契約・手続きが必要となり、稼働開始後も定期的な点検やメンテナンス、故障時の修繕手配、周辺環境の維持(除草など)といった管理が発生します。

金融商品に比べて所有者側の負担項目が多く、トラブル発生時には対応に時間や手間を要します。実際にAさんの夫も、パワーコンディショナーの故障に際して施工業者の選定や相見積もりに一定の時間を費やすこととなりました。

販売側の説明のみを鵜呑みにせず、こうした運用コストやリスクを把握しておくことが重要です。「電気代の節約や自家消費の補助」という目的であれば有効な手段となり得ますが、純粋な「高利回り投資」として捉えるには慎重な検討が必要です。

太陽光発電は「維持・管理」コストも試算

太陽光発電の導入を検討する際は、「電気代が安くなる」という導入初期のメリットだけでなく、維持・管理に伴うコストもあわせて試算することが欠かせません。具体的には、パワーコンディショナーの交換費用や屋根改修時の脱着費用、卒FIT後の売電単価の下落、将来的な撤去費用などをあらかじめ織り込んでおく必要があります。

また、収益の上限が限定的であることや、実物資産ならではのリスク・管理の手間が存在することも踏まえ、自らの目的(自家消費メインなのか、資金回収目的なのか)に合致しているかを冷静に判断しましょう。


執筆・監修:柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,200記事以上の執筆実績あり。

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