1. トップ
  2. ビジネス・マネー
  3. “iDeCo900万円”を受け取ろうとした60歳男性→「控除があるから大丈夫」と思いきや…窓口で突きつけられた“想定外の事実”

“iDeCo900万円”を受け取ろうとした60歳男性→「控除があるから大丈夫」と思いきや…窓口で突きつけられた“想定外の事実”

  • 2026.8.22
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。金融機関でマネージャーを務めながら、家計のご相談に日々向き合っている中川です。

今回ご紹介するのは、iDeCoを一時金で受け取ろうとしていた男性(60歳)の体験談です。「iDeCoにも退職金にも退職所得控除があるから、税金はほとんどかからない」と考えていましたが、2026年1月から受け取りのルールが変わっており、想定外に税金がかかる計算になりました。

iDeCoは受け取り方が大事です。iDeCo特有の受け取る順番と退職金との間隔で税額が変わる仕組みについてご紹介します。

「どちらにも控除があるから大丈夫」と思っていた

Aさん(60歳・会社員)は50歳で転職し、前職の企業型確定拠出年金の資産をそのままiDeCoへ移しました。以後10年、毎月2万3,000円を積み立ててきました。

残高はおよそ900万円です。

前職の企業型で10年、iDeCoで10年。確定拠出年金の加入期間は通算20年になり、60歳から受け取れる状態でした。

いまの会社は65歳まで働けます。勤続15年で、退職金は1,000万円ほどの見込みです。

「iDeCoにも退職金にも退職所得控除がある。両方使えるなら、税金はほとんどかからないはずだ」

そう考えて、60歳時にiDeCoを一時金で受け取ろうとしていました。

退職所得控除600万円が200万円に減る…

undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

金融機関の窓口で相談したAさんは、退職所得控除をiDeCoと退職金の両方に満額では使えないと知ります。

退職所得控除は期間の長さに応じて増え、20年までは1年あたり40万円です。

iDeCoの一時金を先に受け取ると、そのあとの退職金の控除から、確定拠出年金の加入期間と会社の勤続期間が重なっている分が差し引かれます。
Aさんの加入期間20年のうち、いまの会社で働いていた10年が重なります。引かれるのは、この10年分の400万円です。
勤続15年の退職金の控除は600万円。ここから400万円が引かれ、退職金の受取時に使える控除は200万円になります。

退職金は、控除を引いた残りの半分が課税の対象です。支給される退職金が1,000万円、控除が200万円だと課税の対象は400万円。所得税と住民税をあわせて、およそ78万円かかります。
重なる期間がなければ、課税の対象は200万円。税額はおよそ30万円で済んでいました。

なお、iDeCoの900万円には加入20年分の控除800万円が使えます。こちらの税額はおよそ7万6,000円で、支払う税金は比較的少なくて済みます。負担が増えるのは、あとから受け取る退職金です。

税額の計算式は次のとおりです。

  • 退職金・重なりあり:(1,000万円-200万円)÷2=400万円。所得税400万円×20%-42万7,500円=37万2,500円、住民税40万円。あわせて約78万円
  • 退職金・重なりなし:(1,000万円-600万円)÷2=200万円。所得税200万円×10%-9万7,500円=10万2,500円、住民税20万円。あわせて約30万円
  • iDeCoの一時金:(900万円-800万円)÷2=50万円。所得税2万5,000円、住民税5万円。あわせて約7万6,000円

所得税には、別途、復興特別所得税2.1%が加わります。

2026年から「9年」に広がった

Aさんが驚いたのは、この調整の対象になる期間でした。

これまでは、退職金を受け取る年から見て「前年以前4年内」にiDeCoの一時金を受け取っていた場合だけが対象でした。5年空けて退職金を受け取れば、控除が差し引かれることはなかったのです。

その期間が令和7年度の税制改正で「前年以前9年内」に広がりました。令和8年(2026年)1月1日以後にiDeCoの一時金を受け取り、そのあとに退職金を受け取る場合に適用されます。

2026年にiDeCoを受け取ると、2027年から2035年までに受け取る退職金が調整の対象です。対象外になるのは2036年以降になります。65歳、つまり2031年に退職するつもりだったAさんの計画では、間に合いません。

受け取ってからでは選び直せない

では順番を入れ替えればよいかというと、そうもいきません。退職金を先に受け取る場合にも同じ調整があり、こちらは「前年以前19年内」が対象です。空ける期間はさらに長くなります。

一時金で受け取るか、年金形式で分けるか、組み合わせるか。加入期間、勤続年数、金額、受け取る年。この組み合わせで税額は変わります。

Aさんは受け取り方をいったん保留にし、税理士に試算を依頼しました。

いったん受け取ってしまえば、選び直しはできません。iDeCoを受け取る際の税金関係は複雑です。iDeCoの受給を申し込む前に、退職金の予定額と受け取る時期を持って、税理士や金融機関へ相談してみてください。


執筆・監修:中川 佳人
金融機関勤務の現役マネージャー。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。20年にわたり、資産形成や家計管理・住宅ローンなどの実務に携わってきた経験を活かし、記事の監修や執筆を行っている。専門的な内容を、誰にでもわかりやすく伝えることをモットーとしている。

の記事をもっとみる

注目コンテンツ