1. トップ
  2. ビジネス・マネー
  3. 「預金だともったいない」退職金1,800万円をNISAに入れようとした60代男性→後日、判明した事実に“血の気が引いたワケ”

「預金だともったいない」退職金1,800万円をNISAに入れようとした60代男性→後日、判明した事実に“血の気が引いたワケ”

  • 2026.9.14
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは、マネーシップス代表 ファイナンシャルプランナー/IFAの石坂です。

退職金を受け取ったあと、「このまま預金で持っていていいのだろうか」と考え、NISAに目を向ける人もいます。

NISAでは、1年間に投資できる金額に上限があります。つみたて投資枠と成長投資枠を合わせると年間360万円です。非課税保有限度額に1,800万円分の空きがあれば、毎年上限まで投資することで5年間でその枠に達します。

ただ、「制度上は投資できる」という理由だけで、老後資金の大半を投資に回してよいとは限りません。今回は、退職金2,000万円を受け取った60代男性の事例から、NISAを利用する前に確認しておきたい老後のお金について考えます。

※本事例は、プライバシー保護のため一部内容を調整しています。

「5年でほぼ全部投資できる」退職金2,000万円から考えたNISA計画

60歳で定年を迎えたTさんは、会社から約2,000万円の退職金を受け取りました。それまでに貯めていた預貯金は約300万円です。

定年後も再雇用で仕事を続け、65歳から年金生活に入る予定でした。まとまった退職金が口座に入ると、Tさんは「大部分を預金のまま置いておくのはもったいないのでは」と感じるようになります。

そこで調べたのがNISAでした。年間の投資上限が360万円、非課税保有限度額が1,800万円だと知り、Tさんはこう考えました。

「2,000万円あるなら、毎年360万円ずつ投資していけばいい。5年間で1,800万円まで使える」

毎年の給与から360万円を準備するわけではありません。すでに受け取った退職金を原資として、5年間に分けてNISAで投資するつもりでした。計算上、1,800万円を投資しても退職金は200万円残ります。そこに以前からの預貯金300万円を加えれば500万円です。

「現金が500万円あれば、十分だろう」

Tさんはそう考えていました。しかし、IFAとの面談で今後5年間の収支を整理してみると、見落としていたお金が次々に出てきました。

「現金500万円で本当に足りる?」65歳までの支出を計算すると…

undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

再雇用後の世帯の手取り収入は月約22万円。一方、夫婦の生活費は月約25万円を見込んでいました。

毎月約3万円の不足となり、年間では約36万円です。これが5年間続けば、約180万円を貯蓄から補う必要があります。

それだけではありません。築25年を超えた自宅では、2~3年以内に給湯器の交換や外壁の補修などが必要になりそうで、約150万円を見込んでいました。さらに4年後には、約120万円で車を買い替える予定です。

65歳までに見えている支出を合わせると、生活費の不足180万円、住宅関連150万円、車120万円で約450万円となります。

Tさんが持つ退職金と預貯金は合計約2,300万円です。そこから予定どおり1,800万円をNISAで投資すると、現金として残すのは500万円。その500万円から予定支出450万円を出せば、単純計算では残り約50万円です。

5年の間には、予定していなかった出費が発生することもあります。

IFAから「360万円まで投資できることと、360万円を毎年投資した方がよいことは別です。まず、投資後にいくら現金が残るか確認してみませんか」と伝えられ、Tさんは血の気が引きました。

「枠を使わないともったいないと思っていました。いつの間にか、1,800万円まで投資すること自体が目標になっていましたね」

Tさんの場合、NISAを使うことが問題だったわけではありません。近い将来に必要となるお金まで、投資する前提で考えていたことが問題でした。

1,800万円は「投資すべき金額」ではない

NISAには2つの投資枠があります。年間120万円のつみたて投資枠と、年間240万円の成長投資枠です。両方を利用すると1年間で最大360万円となり、非課税保有限度額は全体で1,800万円です。

ここで注意したいのは、1,800万円が「ここまで投資した方がよい」という基準ではない点です。NISAでは、対象商品から得た売却益などを非課税にできます。一方で、買った株式や投資信託の価格まで守られるわけではありません。

たとえば、自宅の修繕費150万円が必要になったとき、投資している商品の価格が下がっている可能性もあります。その場合、現金を作るために値下がりした状態で売却することも考えられます。

数年以内に使う予定のお金は預貯金などで準備し、しばらく使う予定のない資金について投資を考える方法があります。

先に決めたいのは「投資額」ではなく「残しておく金額」

退職金を受け取ると、「2,000万円のうち何割までNISAに入れてよいのか」と考えたくなるかもしれません。

しかし、誰にでも共通する割合を決めるのは難しいものです。退職金が同じ2,000万円でも、その後の給与や年金、毎月の生活費、住宅ローン、家の修繕予定などは人によって異なります。

まず確認したいのは、これから数年間に必要となるお金です。給与や年金で不足する生活費に加え、住宅や車など、予定している大きな支出も整理します。また、突然の医療費や家電の買い替えなどに備える資金も考えておく必要があります。

それらを確保したうえで、当面使う予定のないお金から運用額を考えていく方法があります。NISAで年間360万円まで投資できても、その金額を毎年使い切らなければならないわけではありません。

大切なのは、「1,800万円の枠をどう埋めるか」から考えるのではなく、「老後のために現金をいくら残しておくか」を先に考えることです。

退職金をNISAで運用するときは、投資できる金額よりも、投資したあとに残るお金に目を向けてみてください。


執筆・監修:石坂貴史
証券会社IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー・証券外務員)、マネーシップス代表。累計1,200件以上の相談対応に加え、金融記事の制作・校正・監修の対応を行っています。専門は「金融・経済、不動産、保険、相続、税制」。資産運用やライフプラン設計では、分散投資の考え方と人の心理を踏まえた行動設計をもとにサポートしています。
保有資格:証券外務員一種、2級FP技能士、AFP、NISA取引アドバイザー、日本証券アナリスト協会認定 資産形成コンサルタント、金融リテラシー検定

の記事をもっとみる

注目コンテンツ