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「え、なんでですか…。」入院する父の口座から“50万円”を下ろしに行った60代娘、銀行員から告げられた一言に“困惑したワケ”

  • 2026.9.12
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。金融機関でマネージャーを務めながら、家計のご相談に日々向き合っている中川です。

今回ご紹介するのは、入院した父の医療費を引き出そうとして出金できなかった60代のAさんの体験談です。

「通帳も印鑑も預かっているのだから、問題ないはず」

そう思っていたAさんでしたが、窓口では本人の意思確認が必要だと説明されます。いざというときに困らないために、親が元気なうちに考えておきたい預金管理のポイントをご紹介します。

入院費を下ろしに行ったはずが、窓口で止められた

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

Aさん(60代)の父(90代)は、自宅で転んで入院しました。

手術と3か月の入院で、高額療養費の払い戻しを見込んでも、食事代や、手術後の1か月ほど入った個室の差額ベッド代を含めると、費用はおよそ60万円と見込まれました。父の年金は月18万円ほどで、預金は500万円あります。

父からは以前、「入院したらここから払ってほしい」と通帳と印鑑を預かっていました。

Aさんは窓口で50万円の払い戻しを申し出ました。

ところが、手続きは進みませんでした。

「ご本人の意思を確認させてください」と言われ...

窓口の担当者は、父本人の意思を確認したいと言いました。

「父は入院中で、受け答えもはっきりしません」

そう伝えると、担当者は困った表情を見せました。

預金は名義人本人のものです。名義人の判断能力が低下していると金融機関が判断した場合、家族であっても引き出しに応じられないことがあります。通帳と印鑑を持っているかどうかは、別の話だということでした。

「え、なんでですか…。父のお金で、父の入院費を払うのに…。」

Aさんは困惑しました。

医療費であれば、相談の余地がある

担当者は、続けて説明しました。

全国銀行協会は2021年2月、高齢のお客さまや代理の方と取引する際の考え方をまとめています。医療費など、本人のために必要な資金であることが明らかな支払いについては、親族からの依頼に応じることがあるという内容が含まれています。

ただし、これは本人の判断能力が低下し、かつ成年後見制度を利用していない(できない)場合に行う、極めて限定的な対応とされています。成年後見制度の利用を求めることが基本という位置づけです。

この考え方は各行の参考として示されたもので、すべての銀行に同じ対応を求めるものではありません。判断は個別の状況によって変わります。

このときは、病院の請求書と、Aさんが子であることを示す戸籍を提出し、銀行が父の状態と支払いの必要性を個別に確認したうえで、請求書で確認できた50万円の払い戻しが認められました。

「今回は何とかなりましたが、次はどうなるのでしょう」

Aさんは不安になりました。

元気なうちに検討したい三つの備え

担当者が勧めたのは、判断能力が保たれているうちに手続きを済ませておくことでした。

一つは代理人カードです。名義人が元気なうちに申し込めば、家族が同じ口座のお金を引き出せるようになります。ただし想定されているのは、主にATMでの入出金です。窓口での高額な払い戻しや定期預金の解約には別の届出が必要な銀行もあります。また、本人の判断能力が低下したことを銀行が把握した後も使えるとは限りません。使える取引と限度額、いつまで使えるのかを確かめておく必要があります。

二つ目は、判断能力が下がった後の取引を想定した専用の仕組みです。「予約型代理人」「代理人予約サービス」など、銀行によって名称や条件が異なります。通常の代理人の届出とは扱いが違いますので、取引のある銀行に確認してください。

三つ目は任意後見契約です。判断能力があるうちに、将来支えてもらう人と任せる内容を公正証書で決めておくもので、判断能力が下がったあとに家庭裁判所が任意後見監督人を選任することで効力が生じます。

「暗証番号を教えてもらっているから大丈夫だと思っていました」

Aさんはそう振り返りました。

本人のキャッシュカードと暗証番号を家族が借りて使うことは、多くの銀行の規定に反します。家族が使うのであれば、銀行が発行する代理人カードを使用することになります。

これらの備えがないまま判断能力が下がった場合でも、家庭裁判所に申し立てる成年後見制度という道はあります。ただし選任までには一定の期間がかかりますので、元気なうちに手を打っておくほうが、ご家族の負担は軽くなります。

親御さんが元気なうちに、どの口座を誰がどう管理するのかを話し合っておきましょう。


執筆・監修:中川 佳人

金融機関勤務の現役マネージャー。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。20年にわたり、資産形成や家計管理・住宅ローンなどの実務に携わってきた経験を活かし、記事の監修や執筆を行っている。専門的な内容を、誰にでもわかりやすく伝えることをモットーとしている。

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