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「最後までもらった方が得」“失業給付90日分”を使い切ろうとした60代男性→後日、FPに試算されて驚いた“再就職手当の盲点”

  • 2026.9.13
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

退職後に失業給付を受けていると、「せっかく受け取れるのだから、最後までもらってから再就職した方が得」と考える人もいるかもしれません。

しかし、失業給付をすべて受け取る前に再就職すると、一定の条件を満たした場合に「再就職手当」を受け取れる仕組みがあります。

つまり、早く働き始めたからといって、残っている失業給付がすべて無駄になるとは限りません。

今回は、失業給付を受け取れる日数が90日だった63歳男性が、20日分を受け取ったところで再就職先が決まり、「あと70日残っているのに、今働いたら損では?」と迷った事例から考えます。

「90日分は全部もらいたい」63歳男性が考えていたこと

63歳のHさんは、会社員として働いたあと、自己都合で退職しました。雇用保険に加入していた期間は約8年です。

まだ働くつもりはありましたが、「次の仕事は焦って決めなくてもいい」と考え、失業給付を受けながら再就職先を探していました。Hさんが失業給付を受け取れる日数は90日。1日あたりの金額は5,000円です。

失業の認定を受けながら90日分をすべて受け取った場合、

5,000円×90日=45万円となります。

Hさんは、この45万円をひとつの目安にしていました。「これまで雇用保険料を払ってきたんだから、受け取れる分は全部もらってから働いた方が得だろう」そんな思いもあり、当初は再就職を急いでいませんでした。

ところが、20日分の失業給付を受け取ったころ、以前の仕事で付き合いのあった知人から仕事を紹介されます。

面接を受けると話は順調に進み、月給22万円ほどの条件で採用されることになりました。仕事内容にも大きな不満はなく、自宅からも通いやすい職場です。Hさんにとって、条件は悪くありませんでした。

それでも、すぐに働き始めることには迷いがありました。

「残り35万円がもらえなくなる?」70日残して再就職へ

Hさんがこの時点までに受け取ったのは20日分です。5,000円×20日=10万円でした。

90日のうち20日を受け取ったため、残っているのは70日です。このまま失業の認定を受けながら給付を受け続けた場合、単純計算では、5,000円×70日=35万円となります。

Hさんは、この35万円が気になりました。「今から働いたら、この35万円はもらえなくなるんですよね。それなら、もう少し失業給付を受け取ってから働いた方が得ではないですか」

そこで確認したのが「再就職手当」です。再就職手当は、失業給付を受け取れる日数を一定以上残して再就職し、ほかの条件も満たした場合に受け取れる手当です。

残っている日数が、もともとの給付日数の3分の2以上なら70%、3分の1以上なら60%を使って金額を計算します。

Hさんの場合、もともとの給付日数は90日です。90日の3分の2は60日。Hさんは70日残しているため、ほかの条件も満たせば70%の計算になります。5,000円×70日×70%=24万5,000円です。

Hさんは、「早く働いたら、残っている失業給付は全部なくなると思っていました」と驚きました。もちろん、このまま失業給付を受け続けた場合の35万円と比べると、再就職手当の24万5,000円は10万5,000円少なくなります。

再就職すれば、その後は月給22万円ほどの条件で働くことになります。見るべきなのは「失業給付35万円を全部受け取れるか」だけではありません。再就職手当と、その後に得られる収入まで含めて考える必要があるのです。

再就職すれば誰でも受け取れるわけではない

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

再就職手当は、早く働き始めれば必ず受け取れる手当ではありません。

たとえば、再就職する前の時点で失業給付の日数が3分の1以上残っていることや、1年を超えて働く見込みがあること、7日間の待期期間を終えた後に就職することなど、複数の条件があります。

また、退職前に働いていた会社や、その会社と資本・人事・取引などで密接な関係がある会社へ再就職した場合は、原則として対象になりません。

自己都合退職などで失業給付の支給開始までに制限がある人は、再就職する時期や仕事を紹介された方法によっても条件が変わります。金額にも上限があります。

2026年8月1日以降、再就職手当を計算するときに使える1日あたりの基本手当額は、60歳以上65歳未満の場合、5,454円が上限です。

今回のHさんは1日5,000円なので、この上限にはかかりません。なお、通常の失業給付そのものでは、60歳以上65歳未満の1日あたりの最高額は7,830円です。通常の失業給付と再就職手当では、計算に使える上限額が違う点にも注意が必要です。

「あといくらもらえるか」だけで決めない

失業給付を受けていると、「あと何日残っているか」「あといくら受け取れるか」に目が向きやすくなります。

今回のHさんも、このまま受給を続ければ単純計算で35万円になるため、その金額を受け取れなくなることを気にしていました。

しかし、再就職を考えるときは、失業給付だけを比べても十分ではありません。Hさんの場合、条件を満たせば24万5,000円の再就職手当を受け取れる可能性があります。さらに、再就職後は月給22万円ほどの条件で働くことになります。

もちろん、早く再就職すれば必ず得になるとは限りません。給与だけでなく、仕事内容、どのくらい働けそうか、社会保険料なども含めて考える必要があります。

だからこそ、「失業給付を最後まで受け取らないともったいない」という理由だけで、条件の合う再就職先を見送るのは慎重に考えたいところです。

60代の再就職では、「あといくら失業給付を受け取れるか」に加えて、「再就職手当はいくらになりそうか」「再就職後にどのくらいの収入が見込めるか」まで並べて考えることが大切です。


※事例は制度を分かりやすく解説するため、内容の一部を調整しています。再就職手当の支給可否や金額は、離職理由、残っている給付日数、再就職した時期、再就職先の雇用条件などによって異なります。実際の支給については管轄のハローワークで確認してください。

執筆・監修:石坂貴史
証券会社IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー・証券外務員)、マネーシップス代表。累計1,200件以上の相談対応に加え、金融記事の制作・校正・監修の対応を行っています。専門は「金融・経済、不動産、保険、相続、税制」。資産運用やライフプラン設計では、分散投資の考え方と人の心理を踏まえた行動設計をもとにサポートしています。
保有資格:証券外務員一種、2級FP技能士、AFP、NISA取引アドバイザー、日本証券アナリスト協会認定 資産形成コンサルタント、金融リテラシー検定

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