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「認知症が進んだのも夫婦関係が良くなかったから」お盆に老人ホームに面会に来た弟の一言…→介護士の胸がざわついた理由

  • 2026.8.26
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

お盆時期は、高齢者施設に多くのご家族が面会に訪れます。久しぶりの再会に笑顔が広がる一方で、家族だからこそ抱える複雑な思いに触れることもあります。

今回は、面会時にご家族の一言に戸惑いながらも、介護士として家族と利用者様に寄り添うことの大切さを学んだ出来事をご紹介します。

久しぶりの再会にあふれた笑顔

これは、わたしが有料老人ホームで働いていた時の出来事です。

お盆の時期になると、施設には普段なかなか面会に来られないご家族も多く訪れます。

ある日、一人の男性利用者様のもとへ、弟様が面会に来られました。弟様が施設を訪れるのは、その日が初めてでした。

利用者様は施設での生活を始めて約1年。入居当初と比べると身体機能は少しずつ低下し、認知症もゆるやかに進行していました。

「兄さん、少し痩せたんじゃないか」

「そんなことないさ。それにしても、遠いところありがとう」

久しぶりに再会したお二人は笑顔で言葉を交わされ、穏やかな時間が流れていました。

利用者様は弟様のことをしっかり認識されていましたが、言葉が思うように出てこなかったり、会話が途中で途切れたりする場面もありました。

弟様は笑顔を見せながらも、そんな変化に少し戸惑われているようでした。

面会後に聞いた、ご家族の本音

面会が終わり、弟様を玄関までお見送りした時のことです。

「兄さん、認知症が進んじゃったみたいだね。仕方ないけれど、ちょっと切ないものがあるよね」

そう話されたあと、弟様はさらにこう続けました。

「兄さんはもう施設に入ったんだから、奥さんとはあまり会わないほうがいいと思うんだ」

そして、

「認知症が進んだのも、夫婦関係が良くなかったからじゃないかな」

とも話されました。

その言葉を聞いたわたしは、返す言葉に迷いました。

何度も見てきた、夫婦の穏やかな時間

利用者様の奥様は、普段から頻繁に面会へ来られていました。

利用者様も奥様が来られると嬉しそうな表情を見せ、お二人でゆっくり話をされていました。

会話が以前のようにスムーズに続かないことがあっても、奥様は急かすことなく、利用者様の言葉を待っていました。

そんなお二人の姿を何度も見てきたわたしは、

「なんて素敵なご夫婦なのだろう」

と感じていました。

だからこそ、弟様から聞いた「会わないほうがいい」という言葉に、胸がざわついたのです。

弟様の気持ちも受け止める

久しぶりに再会したお兄様の変化を目の当たりにし、弟様も動揺されていたのでしょう。

以前はもっと話ができたはずなのに。

もっと元気だったはずなのに。

認知症が進行した現実を受け止めきれず、やり場のない思いを抱えていたのかもしれません。

もしかすると、これまでのお兄様夫婦の関係について、わたしたち介護士が知らない事情もあったのでしょう。

そう考えると、弟様の言葉を単純に「間違っている」と判断することもできませんでした。

これまで見てきたご夫婦の姿と、弟様の言葉。

その両方を知っていたからこそ、どちらか一方を責めることもできず、複雑な思いでお話を伺っていました。

介護士に求められる「中立に寄り添う姿勢」

利用者様やご家族には、それぞれ積み重ねてきた人生や人間関係があります。

介護士が知っているのは、その長い人生のほんの一部分に過ぎません。

だからこそ、自分の価値観だけで判断したり、どちらか一方の立場に立ったりすることはできないのだと感じています。

面会が増えるお盆は、久しぶりの再会を喜ぶ一方で、家族だからこその本音や葛藤に触れる機会でもあります。

さまざまな思いを受け止めながらも、利用者様が安心して暮らせる環境を支えていくこと。

それが、介護士の大切な役割なのだと改めて実感した出来事でした。


文:しまむら けいこ/介護福祉士・Webライター 

介護福祉士として10年以上、デイサービスや入所施設などさまざまな介護現場で経験を積む。現在も介護職として働くかたわら、Webライターとして活動。介護や暮らし、働き方について発信している。二児を育てるワーキングマザー。


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