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「今日は一本、電車を遅らせましたね」ホームで顔を近づけてきた無表情の男。不気味な行動に背筋が凍った

  • 2026.7.27

数センチ先に、無表情の顔

通勤で使うホームに、毎朝きまって同じベンチに腰かけている男がいた。

何を考えているのか、まるで読めない顔をしている。

駅で見かけるようになって、もう何か月になるだろう。

名前も知らない。話したこともない。

ただ、私が電車を待つ間、いつも視界の隅にその男が座っている。それだけの、顔なじみとも呼べない相手だった。

ある朝、電車を待って並んでいると、その男が私の背後についた。強い視線を感じて振り向くと、男の顔が、鼻先が触れそうなほど近くにあった。

「ひっ」

思わず声が漏れ、私は後ろへ飛びのいた。

男は何事もなかったように顔を戻し、また前を向いて動かなくなった。

気味が悪かったが、その日はそれで終わった。

ただ一度きりの、妙な出来事。そう思おうとした。

けれど、その日から男は、明らかに私を意識するようになった。

遅らせた一本まで、見ていた

翌日からというもの、ホームに立つたび、遠くから男の目がこちらを追ってくるのが分かった。

私が乗る車両の前へ移動すると、男もいつの間にか、同じ車両の列に並んでいる。

避けようと、別の号車に乗ってみた。すると翌朝には、男はその号車の、私の真正面に立っていた。

どれだけ場所を変えても、結果は同じだった。

先頭車に乗れば先頭車の前で、最後尾に乗れば最後尾の前で、男は私を待っている。

まるで、私がどこに立つかを、乗る前から知っているようだった。

「昨日は、こちらの車両でしたね」

低い、平らな声だった。

「あなたには、関係ないでしょう」

「関係ありますよ。毎朝、一緒なんですから」

返す言葉が見つからなかった。

この男は見ている。

ぞっとして、目をそらすほかなかった。

ある朝、思いきって、いつもより一本あとの電車を待つことにした。

これで会わずに済む。そう思っていた。

ところが、ホームに上がると、男はもうベンチにいて、まっすぐ私を見た。

そして、隣に来てこう言ったのだ。

「今日は一本、電車を遅らせましたね」

心臓が跳ねた。時間をずらしたことすら、この男には筒抜けだった。

「なぜ、そこまで…」

「べつに。あなたを、見ているだけですよ」

男の目には、怒りも笑いも、何の感情もなかった。

ただ、私という人間を観察する、ガラス玉のような目だった。

それきり男は口をつぐみ、私の隣で、同じ電車を待った。

あれから毎朝、あの男はホームのどこかにいる。私が乗る車両へ、当たり前のように合わせて。

今朝も男は無言のまま、ガラス玉のような目で、私が動くのを、じっと待っている。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、60代以上・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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