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「お菓子あるから、家に上げて」社宅で感じた視線。だが、会社への相談で状況が一変

  • 2026.7.26

ドアの前に、いつも立っている

夫の勤め先が用意した社宅で、私たち家族の新しい生活が始まった。

一階が我が家、二階には同じ年ごろの子どもを持つ夫婦が暮らしていた。

初めのうちは、感じのいいご近所さんだと思っていた。二階の奥さんは、顔を合わせるたびに明るく声をかけてくる。

けれど、その距離の詰め方は、だんだん普通ではなくなっていった。私が出かけようとドアを開けると、なぜかいつも、彼女がその前に立っているのだ。

「今日はどちらへ?」

「ちょっと、買い物に」

朝も昼も、時間を問わず。まるで私の外出を、待ち構えているようだった。

ある日、彼女は玄関先で紙袋を掲げて言った。

「お菓子あるから、家に上げて」

「すみません、今日はちょっと」

他人を家に入れるのが苦手な私は、やんわり断った。それをきっかけに、彼女はぱたりと来なくなった。

ほっとしたのも束の間、今度は別の形で視線が始まった。公園で子どもと遊んでいると、二階のカーテンの隙間から、目だけがずっとこちらを追ってくるのだ。

買い物から帰れば、二階の窓がすっと閉まる。ベランダに洗濯物を干していると、真上から視線が降ってくる。

振り仰いでも、そこにはもう誰の姿もない。

ただ、カーテンだけがかすかに揺れていた。

会社に相談した、その後で

限界を感じたのは、彼女がこう言ったときだった。

「お子さん、今日は少し帰りが遅かったのね」

子どもが何時に帰宅したかまで、彼女は把握していた。全身に鳥肌が立った。

その夜、私は夫に打ち明けた。

「毎日、家のことを全部見られてるみたいで怖い」

「社宅のことなら、会社の担当に相談できる」

夫はすぐに動いてくれた。社宅を管理しているのは会社だ。担当者を通して、二階へ静かに話が伝わったという。

住民から視線について困っているという声が出ている。

担当者はそう、誰の名前も出さずに二階へ伝えたらしい。責める言葉はひとつもない。それでも、思い当たる人には、痛いほど届く伝え方だった。

それからの彼女は、別人のようだった。廊下ですれ違っても、以前のように話しかけてこない。

「…ごめんなさいね」

ぽつりとそれだけ言うと、目を合わせられないまま、そそくさと去っていく。

あれほど毎朝ドアの前に立っていた人は、いつしかカーテンを固く閉ざすようになった。今では私の顔を見るなり、逃げるように背を向ける。詰めてきた距離は、そっくりそのまま、向こうから遠ざかっていった。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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