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うつ傾向が強い人ほど、「いいね」を貰うとSNS投稿が増える

  • 2026.7.23
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

SNSに投稿した写真や文章に「いいね」が付くと、うれしくなり、また何かを投稿したくなることがあります。

こうした反応は誰にでも起こり得ますが、その影響の強さは、心の状態によって変わるのかもしれません。

新たな研究では、うつ病の診断を公表している人や、うつ症状が強い人ほど、「いいね」を多く受け取った後に投稿数を増やす傾向が強いことが示されました。

これは「うつ病では報酬に対する反応が鈍くなる」という従来の説とは、一見すると正反対の結果です。

研究の詳細は、米プリンストン大学(Princeton University)により、2026年7月8日付で『JAMA Psychiatry』に掲載されています。

目次

  • 1700万件の投稿から「いいね」の効果を調査
  • なぜ「いいね」でSNS投稿が増えたのか?

1700万件の投稿から「いいね」の効果を調査

研究チームが調べたのは、Xで「いいね」を受け取ったことが、その後の投稿行動にどのような影響を与えるかです。

分析には、合計7736人のユーザーによる1700万件を超える投稿が使われました。

研究者たちは、参加者の集め方や、うつ症状の測定方法が異なる3つのデータセットを分析。

1つ目には、X上でうつ病と診断されたことを公表していた1045人と、無作為に抽出された5001人が含まれていました。

2つ目と3つ目では、参加者自身にうつ症状の程度を尋ね、3つ目では標準化された質問票も使用されました。

研究者が注目したのは、ある日に普段より多くの「いいね」を受け取ったとき、その人が翌日に普段より多く投稿するかどうかです。

つまり、単純に「人気のある人ほど投稿数も多い」と比較したわけではありません。

その人自身の通常時と比べて、前日に受け取った反応が、翌日の投稿行動をどの程度変化させたかを分析したのです。

その結果、3つのデータセットすべてで、うつ病の診断を公表していた人や、うつ症状が強い人ほど、「いいね」と翌日の投稿数との結びつきが強くなっていました。

言い換えると、うつ傾向が強い人では、「いいね」を多く受け取った日の翌日に投稿数を増やす傾向が、相対的に強く見られたのです。

効果量自体は小さいものでしたが、参加者の構成や症状の測り方が異なる3つのデータでも、同じ方向の結果が再現されました。

なぜ「いいね」でSNS投稿が増えたのか?

今回の結果は、「うつ傾向のある人は、いいねを貰うと誰でも必ず投稿を増やす」という意味ではありません。

研究が示したのは、うつ傾向が強いほど、「いいね」の多少に応じて翌日の投稿行動が変化しやすいという統計的な関連です。

また、研究では、参加者が「いいね」をどれほど心地よく感じたかは測定していません。

そのため、うつ傾向のある人ほど「いいね」を強い喜びとして感じていたと結論づけることもできません。

従来の実験室研究では、うつ病の人は金銭などの報酬に対する反応が弱く、報酬を受けても行動を変化させにくい傾向が報告されてきました。

ところが、今回の現実世界のSNSデータでは、反対の傾向が確認されました。

研究者は、その理由の一つとして、SNSの「いいね」が、実験室で与えられる小さな金銭報酬よりも、本人にとって意味のある社会的な報酬として働く可能性を挙げています。

現実の人間関係で得られる社会的な反応が少ない人は、SNSをその代わりとして利用し、「いいね」をより重視する可能性もあります。

ただし、これは今回の結果を説明する仮説であり、研究によって直接証明された仕組みではありません。

さらに詳しい分析では、「いいね」に対する反応の強さは、うつ症状だけではなく、不安とうつが重なる症状群と関連していました。

一方、強迫傾向や侵入思考は、「前日に多く投稿した人が翌日も投稿を続ける」という別の行動パターンと結びついていました。

また、今回の研究は、投稿履歴とうつ症状との関係を観察したものであり、因果関係を証明したものではありません。

うつ症状が「いいね」への反応を強めた可能性もあれば、「いいね」に行動を左右されやすい状態が、うつ症状と関係している可能性もあります。

社会的な孤立など、別の要因が両方に影響している可能性も否定できません。

研究対象もTwitter利用者に限られており、InstagramやTikTokでも同じ結果になるとは限りません。

それでも今回の研究は、SNSと心の健康を考えるとき、単なる利用時間だけを見るのでは不十分であることを示しています。

重要なのは、どのような報酬を受け取り、それによって行動がどう変わっているかという点です。

「いいね」は、画面上に現れる小さな記号にすぎません。

しかし、その小さな反応が次の投稿を促す力は、利用者の心の状態によって違っているのかもしれません。

参考文献

Why “Likes” Hit Harder When You’re Depressed
https://www.psychologytoday.com/us/blog/cell-on-the-self/202607/why-likes-hit-harder-when-youre-depressed

元論文

The Reinforcement Effect of Social Media Likes in Depression
https://doi.org/10.1001/jamapsychiatry.2026.1430

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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