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9900万年前の琥珀から「新種のヤモリ」を発見、ミャンマー

  • 2026.7.21
ヤモリを閉じ込めた琥珀/ Credit: Daza JD et al., Swiss Journal of Palaeontology(2026), CC BY 4.0

小さな琥珀の中から、恐竜時代を生きた新種のヤモリが発見されました。

見つかった個体の大きさは、頭から胴体の端までわずか1.6〜2.2センチほどです。

しかし、この発見で特に注目されたのは、その小ささだけではありません。

標本の1つには尾の付け根に特徴的な膨らみがあり、研究者たちは「そこにオスの交尾器官が収納されていた証拠だ」と考えています。

化石の性別を判定できる例は非常に少なく、今回の標本は、オスだと高い確度で判断できる最古級のトカゲ化石の1つとなりました。

研究の詳細は、米サム・ヒューストン州立大学(Sam Houston State University)により、2026年7月8日付で『Swiss Journal of Palaeontology』に掲載されています。

目次

  • 「世界最小級のヤモリ」と同じくらいのサイズ
  • 尾の付け根に残された「オスの証拠」

「世界最小級のヤモリ」と同じくらいのサイズ

研究チームが調査したのは、ミャンマー北部のカチン州で産出したとみられる2つの琥珀です。

この地域の琥珀は、放射年代測定から約9900万年前の中期白亜紀に形成されたと考えられています。

琥珀の中には、それぞれ非常に小さなヤモリの体が閉じ込められていました。

チームは、この動物を新属新種の「カリナスクアマ・ルスミティイ(Carinasquama rusmithii)」と命名しました。

属名のCarinasquamaは、ラテン語で「隆起」を意味する言葉と「鱗」を意味する言葉を組み合わせたもので、体表の鱗に複数の筋状の隆起があることに由来します。

ヤモリを閉じ込めた琥珀/ Credit: Daza JD et al., Swiss Journal of Palaeontology(2026), CC BY 4.0

2つの標本の頭胴長は約16.24ミリと約21.92ミリでした。

これは現生する世界最小級のヤモリとほぼ同じ大きさです。

小さい方の標本では、腕や脚の骨の端がまだ完全に癒合していなかったため、幼体だったと判断されました。

標本内部の保存状態は、一般的な化石とは少し異なります。

体内の組織や骨格の多くは失われ、もともと体があった場所は空洞になっていました。

一方で、その空洞を取り囲む皮膚や鱗、体の輪郭は細かく残されていました。

チームは高解像度のマイクロCTを使い、琥珀の内部に残った骨を立体的に分析。

その結果、頭部を覆う細かな鱗や、まぶたの特徴、あごの骨、手足の構造などに、ヤモリ類と共通する特徴が確認されました。

ただし、骨格は不完全であるため、チームはこの動物を現生ヤモリの直接的な仲間と断定せず、ヤモリ類を広く含む「Pan-Gekkota」に暫定的に位置づけています。

尾の付け根に残された「オスの証拠」

今回の研究で最も重要なのが、小さい方の標本に見られた尾の付け根の膨らみです。

トカゲやヘビを含む有鱗類のオスは、「半陰茎(はんいんけい)」と呼ばれる左右一対の交尾器官を持っています。

通常、半陰茎は体外に出たままではなく、総排出腔の後方にある尾の内部へ収納されています。

そのため、現生のオスでは尾の付け根が膨らんで見える場合があります。

チームは現生の小型ヤモリのオスとメスを比較し、化石に残された膨らみが、オスの半陰茎によって生じる形とよく似ていることを確認しました。

ただし、半陰茎そのものが琥珀の中に残っているわけではありません。

あくまで尾の外形に残された膨らみから、そこに一対の交尾器官が収納されていたと解釈したものです。

骨や歯と違い、このような柔らかな組織の痕跡は、通常の岩石化石にはほとんど残りません。

※ 画像はイメージです/ Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

今回の発見は、中期白亜紀の有鱗(ゆうりん)類がすでに半陰茎を持っていたことを示す、非常に珍しい証拠となります。

ただし、半陰茎が9900万年前に誕生したという意味ではありません。

研究者たちは、有鱗類が現れた三畳紀か、それ以前の祖先の段階ですでに成立していた可能性が高いと考えています。

また、この新種の足には、壁や木に張り付く現生ヤモリに見られる粘着性の指先がありませんでした。

爪も強く曲がっていないため、木の上よりも地面を中心に暮らしていた可能性があります。

ただし、これは足の形から推測されたものであり、実際の行動が直接確認されたわけではありません。

今回の琥珀は、小さな動物の姿だけでなく、通常なら失われてしまう性別の手がかりまで約9900万年間保存していました。

新種ヤモリの系統的位置や成体の姿には、まだ分からない点が残されています。

それでも、わずか数センチの体に残された尾の膨らみは、恐竜時代のヤモリ類がどのように繁殖していたのかを知る、貴重な窓になったのです。

参考文献

Oldest Known Male Gecko Found Preserved in Kachin Amber
https://www.sci.news/paleontology/carinasquama-rusmithii-14931.html

元論文

Evidence of male anatomy in a mid-Cretaceous Burmese miniaturised amber gecko
https://sjp.pensoft.net/article/188227/

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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