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「お前は役立たずだ」母を責める父。だが、母の決断に父から笑顔が消えた

  • 2026.7.22
「お前は役立たずだ」母を責める父。だが、母の決断に父から笑顔が消えた

食卓で毎晩聞いた言葉

小学生の頃、うちの食卓には、いつも同じ声が響いていた。

「お前は役立たずだ」

言われているのは母だった。父は帰ってくると、上着も脱がないうちにその一言を投げる。

「役立たずって、何が」

「全部だよ。全部」

父は転職を繰り返していた。長くて一年、短ければ数ヶ月。辞める理由は、いつも上司か同僚か会社のせいだった。

それでいて、家のことは何ひとつしない。脱いだ靴下は廊下に落ちたまま、茶碗は食べた場所に置きっぱなし。母がパートから帰って、それを全部拾って回る。

「ごはんは?」

「今から作るね」

「遅いんだよ」

子ども心にも、変だと思っていた。

何もしていないのは、どう見てもそっちなのに。

母は何も言い返さず、湯気の立つ皿を父の前に置いた。

私はその横で、味噌汁の椀をじっと見ていた。

父がやわらかい声を出すのは、飼っていた犬にだけだった。

「お前だけだな」と頭をなでる。散歩も餌も、していたのは母なのに。

何も持たずに出ていった日

私が中学に上がる少し前、母が決めた。

「離婚します。この子と、私で暮らします」

父は鼻で笑った。

「お前ひとりで、何ができるんだ」

笑ったのは、父だけだった。

話し合いの席には、祖母と伯母が来ていた。

テーブルには、通帳と家計簿が並べてあった。

「この十年で、あんたが家に入れたお金、ここに全部出てるわよ」

「…それは、事情があって」

「事情なら、この子が毎月やりくりした記録にも書いてあるわ」

父の顔から、笑いが消えていった。

言い返そうと口を開くたび、数字が返ってくる。最後には、誰とも目を合わせなくなった。

祖母が湯呑みを置く音が、やけに大きく響いた。父はソファのほうへ視線を逃がし、それきり座り直しもしなかった。

荷物をまとめる日、父が持ち出せた物はほとんどなかった。家の中の物は、ほとんど母が働いて買い揃えた物だったからだ。

玄関で、父は最後に振り返った。

「犬に、会わせてくれ」

母は、静かに首を横に振った。

「その子の世話も、全部私がしてきました」

父は何か言いかけて、飲み込んだ。

バッグをひとつ提げて、そのまま出ていった。犬は最後まで、母の足元から動かなかった。

あれから二十年あまり。母は今も同じ家に住んでいて、あの頃よりずっとよく笑う。

役立たずと呼ばれ続けた人が家に残り、全部を押し付けた人が何も持たずに出ていった。

 

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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