1. トップ
  2. エピソード
  3. 「邪魔だから」夫が陶芸を箱に詰め、私は近所を2周した

「邪魔だから」夫が陶芸を箱に詰め、私は近所を2周した

  • 2026.7.20
ハウコレ

並んでいた器の代わりに、箱の側面には私の名前を書いた付箋がありました。

数日後、玄関から運び込まれた大きな木箱の梱包を、夫が解き始めます。妊娠中の私が帰宅すると、和室の棚から器が消え、廊下に段ボール箱が積まれていました。

棚の景色が変わっていた日

陶芸は結婚前から続けてきた私の趣味です。棚に並べた器には、教室で先生に褒められた日や、初めて釉薬を調合した記憶が残っていました。台所へ向かうと、夫は炊飯器の前でお米を研いでいました。「私の作品たちは、どうしたの?」と聞いた私に、夫は振り向きもせずに答えました。

「邪魔だから」

「邪魔」と呼ばれた器のこと

米を研ぐ音だけが続いていました。妊娠したから片付けろということなのだろうか。それとも、その前から邪魔だと思っていたのだろうか。私は玄関に戻り、靴を履き直して外へ出ました。近所を2周する間、涙は出ませんでした。ただ、頭の中で夫の放った「邪魔」の2音が繰り返し鳴っていました。

翌日、箱の前に座った時間

翌日、夫が仕事に出てから、私は廊下の箱の前に座りました。側面には私の名前が書かれた付箋が貼られていました。開けようとした指を、途中で止めました。実家の母に電話しかけて、そのままやめました。夫にとっての「邪魔」が、私にとって何だったのか。

そして...

数日後、夫は玄関から大きな木箱を運び込みました。木材と塗料の匂いがしました。梱包の隅から、私の作業机と同じ色の木肌がのぞきました。私は段ボール箱を開け、青い釉薬の湯呑みを、届いたばかりの飾り棚の中央に置きました。夫は湯呑みに向かって「割れたら危ないから」と言いました。私が見ていた景色が、全部ではなかったのかもしれません。

(30代女性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ