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「駅に行くなら、こっちの道が近いよ」道の真ん中で手のひらを向けて私を止めた男。突然の行動に恐怖した瞬間

  • 2026.7.18

手のひらを向けて、その人は道の真ん中で私を止めた

暑い日の午後だった。

少し急いでいた私は、汗をぬぐいながら見慣れた道を歩いていた。

買い物を済ませ、あとは家に帰るだけ。

そんな、なんてことのない帰り道だったはずだ。

向かいから来た年配の男性が、すれ違う直前でぴたりと足を止める。

そして私のほうへ、ゆっくりと手のひらを向けた。

通せんぼをするように、道の真ん中で。何が起きたのか、一瞬わからなかった。

「今、なんで止められたんだろうって思ったよね。なんで泣きそうな顔してるのかなと思ってね。どうしたの」

穏やかな声だった。

けれど男性は、私の返事を待たずに言葉を重ねていく。

泣いてなどいない。暑さで顔がこわばっていただけだ。私は小さく首を横に振ったが、その否定はどこにも届いていないようだった。

男性の視線は、私の目のずっと奥を見ているようで落ち着かない。

こちらが口を開くたび、その言葉はやわらかい声にかき消されていった。

会話が、まるで噛み合っていかない。

私の言葉は素通りし、男性は自分のなかにある筋書きに沿って話し続ける。

私が黙っていると、また別のことを話し始めた。

逃げ出したいのに、足がその場に貼りついたように動かない。

ただ視線を落とすことしかできず、時間だけが妙に長く感じられた。

「近所に住んでいる」という一言が、後からじわりと重くなった

「駅に行くなら、こっちの道が近いよ」

行き先を告げてもいないのに、男性は私が駅へ向かうものと決めていた。

そして続けた。「自分、ここの近くに住んでてね」と。世間話のような、ごく軽い調子だった。

私は曖昧に会釈をして、できるだけ自然を装いながら、その場を離れた。

歩き出してから、その言葉がじわりと重くなっていく。近くに住んでいる。

つまりこの人は、いつもこの道のどこかにいる。

私が毎日通る、この見慣れた道に。

さっきまで安心して歩いていた場所が、急に知らない場所のように思えた。

振り返る勇気はなかった。まだあの手のひらが、私のほうを向いている気がした。

角を曲がるまで、背後で足音が近づいてこないかだけをずっと気にしていた。早く帰りたいのに、うまく足が前に出ない。

家に着いて鍵をかけた後も、落ち着かなかった。またすれ違うかもしれない。

次はどこで、どんな話を始めるのだろう。あの穏やかな声を思い出すたび、背中がひやりとする。今もあの道を歩くとき、私は向かいから来る人の手元を、つい見てしまう。あれから、あの午後の光景が頭を離れたことは一度もない。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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