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学園ラブコメで「キス55回」した美人女優。モデルや歌手としての「顔」を魅せた美女とは

  • 2026.7.29
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2019年12月、BVLGARI AVRORA AWARDS 2019授賞式に出席した西内まりや(C)SANKEI

55回。2013年にフジテレビ系で放送された学園ラブコメ『山田くんと7人の魔女』で、第1話から第7話までに数え上げられたキスシーンの回数である。最終話にいたっては、回想を含めて60回。放送当時、この数字だけが独り歩きするほど話題になった。その物語の中心にいたのが、ティーン向けファッション誌の顔として知られていた西内まりや。ドラマの主演としては、地上波でこれが最初の1本になる。

数の話に見えて、これは起用の話だ。同じ場面を何度も繰り返す企画には、その反復に耐えられる顔が中心に要る。数の多さは、主演へ向けられた要求の高さでもあった。誌面でカメラの前に立つことを仕事にしてきた人が、主演の座でその要求を丸ごと引き受けている。数字の衝撃は、そのまま起用の的確さの記録でもある。

誌面の真ん中で顔を更新してきた

西内が最初に立っていたのは、テレビカメラの前ではなく雑誌のカメラの前だった。2007年からローティーン向けファッション誌『ニコラ』の専属モデルとして活動し、2010年にはティーン誌『Seventeen』の専属へ移る。2015年に卒業するまで、ページの中心で読者に顔を見せ続けた。

専属モデルは毎号誌面を任される仕事だ。台詞もなければ物語の助けもない。静止した1枚のなかで、表情と身体だけを成立させなければならない。そこで問われるのは美しさそのものより、その号の企画にどう合わせられるかである。読者層の上がる雑誌へ移れば、求められる顔も変わる。同じ人が、読者の年齢に合わせて自分の見え方を更新し続けた。被写体としての強度は、女優になる前から鍛えられていたのだ。

見せ場が日常に変わる

2013年、フジテレビ系『山田くんと7人の魔女』で白石うらら役を演じ、地上波ドラマ初主演を務める。夏に放送された作品で、冒頭の数字はここから出ている。

キスシーンは本来、1本のドラマにいくつも置かれるものではない。数が少ないからこそ1回に緊張が乗り、見せ場として機能する。ところがこの学園ラブコメでは、それが1話のなかで何度も繰り返される。繰り返されれば、1回ごとの特別さは薄れていく。緊張の消えた場所で、それでも画面を持たせなければならない。見せ場を1回に集約する作り方では、この物語は動かない。だからキスは事件としてではなく、演じる役の日常として画面に置かれることになる。

日常として置かれたものを、毎回わずかに違う温度で返せるかどうか。そこが主演に問われた技術だった。毎回きちんと恥じらってみせれば画面は重くなり、慣れた顔で流せば物語の熱が抜ける。その中間を、1話のうちで出し入れし続ける。しかもキスの場面では視線が顔に集まる。逃げ場のない距離で表情だけを見られる時間が、この1本にこれだけ積み重なった。

明るい看板のまま遠い役へ

2014年、『LOVE EVOLUTION』で歌手デビューし、同年の第56回日本レコード大賞最優秀新人賞を受賞する。歌う仕事と演じる仕事が、同じ年に並んだ。学園ラブコメの明るさが歌の場でも通用した時期である。ここで普通なら、看板は固まる。清新さで名を上げた人には清新な仕事が集まり、その像を守る方向へ活動が寄っていくからだ。モデル出身の俳優がまず置かれるのも、たいていは整った見た目がそのまま役になる場所で、そこから外へ出るのに時間のかかる人は少なくない。

ところが演じる場所は、少しずつ反対側へ動いていく。2016年公開の映画『CUTIE HONEY -TEARS-』では主演を務め、艶のあるアクション作品の中心に立った。学園ものの明るさで覚えられた顔を、丸ごと別の温度の物語に据える配役である。

2021年にはNetflix『全裸監督 シーズン2』でサヤカ役を演じ、約4年ぶりに女優の現場へ戻っている。間を置いて戻った先が配信ドラマの話題作だったことに、この人の振れ幅を感じさせる。雑誌の仕事で身につけたのは、美しさの固定ではなく、企画ごとに見え方を作り替える手つきだった。誌面で読者層に合わせて変わってきた人になら、次の顔も用意できる。現場がそう踏んだから、振れ幅のほうへ仕事が渡された。

数では測れない耐久力

2025年5月、西内まりやは芸能界からの引退を発表した。誌面に立った2007年から数えれば、10年以上を画面とページの中心で過ごしたことになる。専属モデルとしての数年、地上波ドラマでの初主演、歌の舞台、そして映画の主演作。並べてみると、どの場面でも求められていたのは、レンズの前で見え方を作れる力だった。キスの回数で語られた学園ラブコメも、レコード大賞の壇上も、その一点でつながっている。

静止した1枚で顔を成立させる仕事から始めた人が、動く画面でも同じことをやり通した。数字は入口としては強い。55回や60回という数そのものより、それを毎回成立させた顔の耐久力のほうが、この人の仕事の中身に近い。数で記憶された人ではある。ただ、その数を支えていたのは、数では測れない部分のほうだった。


※記事は執筆時点の情報です

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