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北海道で一番予約が取れない人気宿「ここ以上に自分を生かせる場所はない」地元出身女性のおもてなし

  • 2026.7.2

小樽市から車を走らせること約1時間。
積丹半島の西側に、海と山が寄り添うように広がる人口約1万人のマチ「岩内町」。

ここには、全国から予約が絶えない 「髙島旅館」があります。

毎年1月1日に日付が変わったその瞬間から1年間分の予約の電話が殺到するこの旅館。

こんこんと湧き出る源泉かけ流しの温泉。
そして積丹ブルーの海が育む絶品のウニやアワビをはじめ、あふれんばかりの海の幸が多くの人を魅了します。

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もちろん、旅の癒しはそれだけではありませんよね。
地元愛にあふれた「ホスピタリティ」も髙島旅館も魅力であり自慢です。

ここで1年半ほど前から旅館スタッフとして働くのが、斎藤未佳さん(23)。

「ここ以上に自分の出自を生かせる場所はないかな。人の役に立てているという実感をもてます」

岩内町生まれ、岩内町育ち。
今回は、一度は町を出た女性が、地元・岩内町で誇れる居場所と夢を見つけたきっかけを伺います。

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連載|私のきっかけ

「とにかくマチを出たかった」一度は外の世界へ

実は今回の取材、編集部スタッフがプライベートでこの旅館を訪れたとき、お部屋についてくれた斎藤さんがとても印象に残っていたことがきっかけで、取材のお願いをしました。

お料理一品一品は魚の産地から特徴まで説明を丁寧にしてくださって、お土産を買うおすすめスポットや、ランチを食べるならどんなお店があるかまで、たくさん教えてくれました。

旅館の魅力と岩内町という土地の魅力が、斎藤さんのおもてなしのおかげでさらにグッと引き上がって楽しいひとときになったんです。

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そんな斎藤さんは髙島旅館で働いて1年半ほど。生まれも育ちも岩内町です。
もともと、この町で漁師をしていた祖父の家で暮らしてきました。

「母が子どものころに建った家なので、当時はどうしても古さが気になって。友だちの家へ遊びに行くたび、『新しいお家っていいな』と憧れていました」

当時は「とにかく町を出たかった」と話す斎藤さん。
高校卒業後は家を出て倶知安町へ。美容師の姉との2人暮らしをスタートさせます。

憧れの新生活と、直面した「現実」の厳しさ

待ち望んだ新生活は、楽しさの一方で、生きることの大変さも教えてくれました。

リゾート地として人気のエリアの倶知安町は、家賃も物価も高く、生活を維持するのは想像以上にハード!

「姉と生活費を折半しながら、なんとかやりくりする毎日でした」

当時「やりたい仕事も特になかった」斎藤さん。一方で「必ずどんな仕事でも1年は続けよう」と決めていたそう。パチンコ店での勤務は2年10か月ほど。

姉の結婚が決まり、同居を解消するタイミングで、一人で今の生活を支えるのは難しいと判断した斎藤さんは、一度は飛び出した実家へ戻る決意をしました。

古くても、温かく自分を迎え入れてくれる場所。一度離れたからこそ、帰れる家があることのありがたさが身にしみました。

母との縁から「髙島旅館」へ

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地元へ帰ってきた斎藤さんはその後、アパレルショップで勤務しましたが、まだまだ働きたい!と別の居場所を探していました。

今働いている、地元の「髙島旅館」を繋いだのは、清掃スタッフとしてすでに勤務していた母でした。

「最初はとにかく実家から通えるところで、早くお金を貯めたいし働きたいと思って、何とか母に頼み込んで入れてもらえないかということで」

人口が少なくなりつつある地元で、働き口はそう多くない…この先に不安を抱えていた斎藤さんですが、髙島旅館の社長・高島将人さんは斎藤さんのことを心から歓迎してくれたといいます。

「岩内町で生まれ育った人が戻ってきて岩内町の旅館で働いてくれることは、本当にうれしい!」

温かく迎え入れてくれたその言葉が「何よりも心強かった」と話す斎藤さん。
「ここで体力の続く限りがんばっていこう」と決意し、全国にも知られる有名旅館の旅館スタッフとしてスタートを切ったのです。

目が回るほど忙しい。けれど、心は満たされる日々

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旅館スタッフの仕事は、決して楽ではありません。髙島旅館は、スタッフ総勢約20名。

斎藤さんと同じ「中居さん」ポジションは6〜8名のシフト制。
少数精鋭で、朝から晩まであらゆる仕事をこなします。

ある日は、午前10時に出勤すると、まずは朝食のあと片付け。ロビーの清掃、部屋のシーツの回収サポートなど多忙な午前中を過ごします。

午後も、その日使う食器の用意、ビールサーバーのセッティング(髙島旅館ではロビーでクラフトビールが楽しめます!)、タオル等の洗濯、午後3時からはフロントでチェックインを担当し、夕食時には配膳へ…。目が回るような忙しさ!

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「今でこそ、考えなくても次は何をするか、体が動くようになりましたけど、最初は本当に大変で…」

さらに、指導してもらいながら覚えていくときよりも、少し慣れてきてからが不注意での大きなミスが出やすくなり注意をしていたといいます。

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「特にうちの旅館は連泊していただくお客様は毎日メニューが変わります。夕食の配膳で違う品物を出してしまって、カバーしていただくのが大変だった…ということもありました。今は本当に細心の注意をはらうようにして、お客様にお料理を堪能していただくように心がけています」

この仕事の魅力については「人の役に立っているという実感が持てること。これまでの2倍も3倍も感じています」と斎藤さんは言い切ります。

多忙な日々を乗り越える元気のもとのひとつが、料理自慢の髙島旅館の「まかない」!

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女将さんがすべて手作りしてくれるまかないは、いつも7~8品ほどのおかずが並ぶのだそうです。

「小皿が何枚も並ぶやさしい味のまかないが本当においしくて大好きで!温かさとありがたさを感じています」

さらに仕事が終わったあとに、源泉かけ流しの温泉に入れるのも、一日の疲れを癒す最高のごほうびです。

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「こんなに恵まれた環境は他にないんじゃないかって、とてもありがたく思っています」

旅館を有名にすることよりも…

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休日の朝にはロビーで宿泊客向けに焼きたてパンの販売も

髙島旅館で働くなかで斎藤さんの心を大きく動かしたのは社長のまっすぐな「地元への思い」でした。

「うちの旅館はリピーターが7割ほど。旅の目的にしてくれている方がとても多いです。社長は『旅館を有名にすること以上に地元・岩内町を有名にしたい』と話していて、その地元愛や志に私自身もすごく刺激を受けています」

夏には花火を上げるイベントを開催したり、町内をめぐるツアーを企画したり…。
それだけではなく、地元の方に向けては、5月、町内で断水が続くなか温泉を無料開放したことも。

自分の利益だけでなく、町のためを思って行動する背中を見て「お客様が何を求めてここに来てくださっているのかをより考えるようになりました。配膳1つももっともっと丁寧に…という意識が高まりました」と斎藤さんは話します。

お客さまに届けたい「プラスアルファの価値」

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アワビがたくさん!夏には地元のウニも堪能でき、予約が絶えません

こうして、斎藤さんの中には「自分にしかできないおもてなし」への想いが芽生えはじめました。

「うちの料理は本当に自慢で、おいしいものを食べたときに勝る感動はないな、とお客様をみていても思います。私は作っているわけではないですがその価値をより高めていきたいと思って」

リピーターはすでに料理の知識も豊富な方も多いのでどうやって新たな感動を生み出せるかも考えるのだといいます。

「私がちょっと付加価値を高められるとしたら、お料理がどんな風に手が込んでいるのか、この食材はどんなルーツでここにきたのか…隙あらば板長や女将さんに質問しながら常に情報をアップデートしています」

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料理だけではなく岩内出身だからこそ知る地元のおすすめスポットをご案内することも。

「聞いていただいて、自分でも調べる中で改めて地元の美しさや面白さに気づくことも多いです」

さらに今苦労しているのが日本酒の知識だそう。
「私自身はあまり飲まないのですが、おいしいお料理に合うお酒を提案ができるようになりたいです」と向上心が尽きません。

「せわしなくない町」岩内町の魅力を再確認

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そんな日々の中で、あるお客さまがふと口にした言葉が忘れられないといいます。

「岩内町は『せわしなくないマチ』でいいね」

本当にその通り、と、斎藤さんはしみじみとうれしそう。

「岩内岳の裾野にある円山展望台からの夜景もキレイですし、夏には大きなお祭りが2つあってそれもおすすめですよ」

海もあって山もあって、自然豊か。生活に困らない便利さもありながら、時間が穏やかに流れている。

「本当にいいマチだなと改めて感じていますが、それもやっぱり一度マチを出なかったら絶対に感じられなかった。外に出たあの時間が今に生きていると思っています」

そして力強く、誇らしくこう話してくれました。

「これ以上、自分の出自が生かせる場所はない、とても充実しています」

きっかけをつかむためには「縁を大事に」

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北海道の地方のマチで、地元に根付き、地元の魅力を伝える…
斎藤さんが一度はマチを出ながらこの道を選び、決断していく「きっかけ」で大事にしていることは何なのでしょうか。

その問いに「周りとの縁を大事にしていくこと」と答えてくれました。

「周りに誇れる姿でいることで、縁がつながっていくのだと思います。そこに選ぶ道があるのかな。そして、家族や周りの人に誇れる選択なのかを考えて決断していく…それを大事にしています」

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今の目標は、祖父の時代から続く実家をリフォームすること。

「そのときは絶対に、地元の岩内町の企業にお願いしようと思っています。それが私なりの地元への恩返しのひとつでもあるんです」

一度町を出たから気づけた、故郷のすばらしさや家族のありがたさ。
さまざまな仕事を経てたどり着けた、生まれ故郷を誇れる仕事。

人口減少、人口流出は、北海道の地方のマチでとても深刻な問題です。
そんな中見えた地元出身だからこそできる温かなおもてなしに、これからのヒントが見えてきます。

いわない温泉 髙島旅館

北海道岩内郡岩内町野束505

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文:木村
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は取材時(2026年3月)の情報に基づきます。

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