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「最後まで読んだよ」と本を返した元恋人。挟まれた半券に傷ついた私

  • 2026.7.1
ハウコレ

本に挟まっていたのは、最後に二人で行った展覧会の半券でした。しおりのように差し込まれたその紙は、本の終わりよりずっと手前で止まっていて、私はその意味を考え続けました。

テーブルに戻ってきた文庫本は、貸したときよりも角がやわらかくなっていました。返しに来た元恋人は、向かいの椅子に浅く腰かけたままです。半年付き合った相手と向き合うのに、交わす言葉はもう、ほとんど残っていませんでした。

読んだよ、と答えた元恋人

貸したのは付き合って間もない頃で、私が一番好きな小説でした。最後まで読んでほしいと、あのとき何度も頼んだ一冊です。だからカップを片づける前に、私は聞いてみました。「最後まで読んだ?」彼は短くうなずいて答えました。「最後まで読んだよ」言い終えると、彼はコーヒーに口をつけないまま先に席を立っていきました。引き止める理由も、もう見つかりませんでした。

しおりがわりの、一枚の半券

受け取った本を開いたのは、片づけをしていたときでした。中ほどのページに、薄い紙が一枚はさまっていました。最後に二人で行った展覧会の半券です。会場の名前も、入った順路の案内も、あの日のまま残っていました。彼はこれを、しおりがわりに使っていたのだとわかりました。一番好きな小説の途中に、二人の最後の一日が挟まっていたのです。

終わりまで、たどり着いていなかった

半券がはさまっていたのは、物語の終わりではありませんでした。読み残したページは、まだ三分の一ほどあったのです。最後まで読んだと、彼は言ったのに。私が一番知ってほしかった結末まで、彼はたどり着いていませんでした。あの展覧会は、私にとって忘れられない一日でした。それを彼は、本にはさんだまま忘れてしまえたのかもしれません。

そして...

本を本棚に戻すべきか、しばらく決められませんでした。半券は、結局もとのページにはさんだままにしました。彼があの一日をどう思っていたのか、確かめる方法はもうありません。それでも、私にとっては大切な一日だったと、その事実だけは手放さずにおこうと思います。

(20代女性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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