1. トップ
  2. カルチャー・教養
  3. 脳の健康に効く最強の食事法「DASH」とは

脳の健康に効く最強の食事法「DASH」とは

  • 2026.6.30
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

「脳にいい食事」といえば、過去の多くの研究では「地中海食」が代表格として挙げられます。

魚、野菜、オリーブオイルを多く取る地中海食は、健康的な食習慣として間違いありません。

しかし今回、米ハーバード大学(HU)らの大規模研究で、地中海食よりも脳の健康を促進する食事があることが明らかになりました。

それが高血圧対策のために生まれた「DASH食」です。

本研究では、約15万9000人を対象に、6種類の食事パターンと認知機能の関係を長期的に調査。

その結果、DASH食に近い食事をしていた人ほど、後年に認知機能の低下を感じるリスクが低く、客観的な認知機能も良好な傾向が見られたのです。

研究の詳細は2026年2月23日付で学術誌『JAMA Neurology』に掲載されています。

目次

  • DASH食とは、どのような食事か?
  • 6つの食事法の中で「DASH食」が最も脳の健康に関連

DASH食とは、どのような食事か?

DASH食とは、「Dietary Approaches to Stop Hypertension」の略で、日本語では「高血圧を防ぐための食事法」という意味です。

もともとは血圧を下げることを目的に作られた食事法であり、現在も高血圧の予防や改善を目指す食生活として知られています。

ただし、DASH食は単に「塩分を減らす食事」ではありません。

重要なのは、塩分を控えながら、体内のナトリウムを排出しやすくする栄養素をしっかり取ることです。

特に重視されるのが、カリウム、カルシウム、マグネシウム、食物繊維、不飽和脂肪酸です。

カリウムは余分なナトリウムの排出に関わり、カルシウムやマグネシウムも血管の収縮や拡張、ナトリウムの処理に関係します。

また、食物繊維は腸内環境や代謝の面から健康を支え、不飽和脂肪酸は血管や脂質代謝に良い影響を与えると考えられています。

そのため、DASH食では、野菜、果物、豆類、海藻、魚、ナッツ類、低脂肪の乳製品などが積極的に勧められます。

具体的な食品でいえば、アボカド、ブロッコリー、にんじん、トマト、かぼちゃ、海藻、アーモンド、いわし、しらす干し、大豆、納豆、キウイ、バナナなどです。

また、主食となるお米も、白米より玄米を選ぶ方がいいです。

日本人の食生活に置き換えるなら、野菜や海藻、大豆製品、魚を増やし、牛乳やヨーグルトは低脂肪のものを選ぶイメージです。

一方で、控えるべき食品もあります。

塩分の多い加工食品、赤肉、加工肉、砂糖を多く含む飲み物、菓子類、揚げ物、過度のアルコールなどです。

つまりDASH食とは、「何か1つの健康食品を食べる」方法ではなく、食事全体のバランスを血圧や血管にやさしい方向へ整える考え方なのです。

6つの食事法の中で「DASH食」が最も脳の健康に関連

今回の研究では、研究チームは米国の大規模コホートを用いました。

対象者は合計15万9347人で、食事内容は約4年ごとに長期間記録されました。

チームは、参加者の食事が6つの健康的な食事パターンにどれほど近いかをスコア化しました。

1つ目が「AHEI-2010」で、慢性疾患のリスク低下を意識して作られたもの。これが「地中海食」に最も近い食事法。

2つ目が「健康的植物性食品指数」で、植物性食品を多く食べているかを意識したもの。

3つ目が「プラネタリー・ヘルス食指数」で、人間の健康だけでなく、地球環境への負荷も意識した食事。

4つ目が「rEDIH」で、インスリンが過剰に出やすい食事パターンかどうかを意識したもの。

5つ目が「rEDIP」で、体内炎症を起こしにくい食事かどうかを意識したもの。

6つ目が「DASH食」です。

そのうえで、参加者が後年に「記憶力や認知機能が落ちた」と感じているか、さらに一部では客観的な認知機能検査の結果も調べました。

結果として、6つの食事パターンはいずれも、健康的な食事に近いほど認知機能の低下リスクが低い方向の関連を示しました。

つまり、脳の健康に良い食事はDASH食だけ、というわけではありません。

しかし、その中でも最も強い関連を示したのがDASH食でした。

DASH食への遵守度が最も高い人たちは、最も低い人たちに比べて、主観的認知機能低下のリスクが約41%低いことと関連していました。

また、DASH食に近い食事をしていた人たちは、客観的な認知老化テストや作業記憶テストでも、より若い認知年齢に相当する結果を示していました。

特に注目されるのは、この関連が中年期の食事でも見られた点です。

45〜54歳ごろからDASH食に近い食事をしていた人では、後年の認知機能低下リスクの低さとの関連が目立っていました。

これは、脳の健康を守る食習慣は、高齢になってから急に始めるものではなく、中年期から積み重ねるものかもしれないことを示しています。

ただし、この研究は観察研究です。

そのため、DASH食をすれば認知症を防げる、あるいは脳が若返ると断定することはできません。

健康的な食事をしている人は、運動習慣、喫煙、体重、医療へのアクセスなど、他の生活習慣も異なる可能性があるからです。

それでも、血圧や血管の健康を守るDASH食が、脳の老化とも関連していた点は重要です。

脳は細い血管から酸素や栄養を受け取りながら働いています。

そのため、心臓や血管に良い食事が、長い目で見れば脳にも良い方向に働く可能性があります。

DASH食は、特別なサプリメントや極端な食事制限ではありません。

野菜、魚、豆類、海藻、低脂肪乳製品を増やし、塩分、加工肉、甘い飲み物、揚げ物を控えるという、地味ですが続けやすい食習慣です。

今回の研究は、脳の健康を守る鍵が、意外にも「血圧を守る食事」の中にあるかもしれないことを示しています。

心臓に良い食事は、脳にとっても良い食事なのかもしれません。

参考文献

The Best Diet For Brain Health Is Probably Not What You Think
https://www.sciencealert.com/the-best-diet-for-brain-health-is-probably-not-what-you-think

元論文

Dietary Patterns and Indicators of Cognitive Function
https://doi.org/10.1001/jamaneurol.2026.0062

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

元記事で読む
の記事をもっとみる