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「少しだけ、時間をもらえないかな」と告白を保留した俺→彼女の帰り道で、ひとり決めていたこと

  • 2026.6.30
ハウコレ

机に置かれた異動の打診を、俺は何度も裏返していました。遠い支社への話で、答える期限は迫っています。普段なら迷わない俺が決めかねていたのは、毎日並んで帰る相手がいたからでした。その相手から、思いがけず気持ちを打ち明けられたのです。

即答できなかった理由

「ずっと前から、あなたのことが好きでした」

いつもの角で、彼女はまっすぐにそう言いました。うれしくないはずがありません。けれど、頭の片隅にはずっと、あの打診が引っかかっていました。ここでうなずいて、来月には遠くへ移るかもしれない。彼女を、ここでずっと待たせてしまうことになる。それだけは避けたくて、俺は「少しだけ、時間をもらえないかな」と口にするのが精一杯でした。

帰り道で考えていたこと

保留にしたあとも、俺は帰り道を変えませんでした。改札の柱の前で、いつものように彼女を待ちます。彼女が自販機の前で温かい缶に手を伸ばせば、俺は黙ってもう一本のボタンを押しました。角のパン屋の前で彼女の足が止まることも、俺の体にしみついています。

突き放したかったわけではありません。このありふれた道を手放せるかどうか、俺はその道で自分に問い続けていました。答えは、歩くほどにはっきりしていきました。

同じ道を選ぶまで

迷いに区切りをつけたのは、いつもの角の手前でのことでした。俺は立ち止まって、彼女に打ち明けました。

「異動の話が出ていて、すぐに返事ができなかったんだ」

遠くへ移る話を断り、この街に残ると決めたことも伝えました。はっきり答えられないままもやもやさせてしまったことを、まず詫びました。そのうえで、ずっと言いたかった言葉を口にしました。

「これからも、君と同じ道を帰りたい」

そして...

あの打診の紙は、断りたいという旨を書いて上司に返しました。代わりに俺が選んだのは、改札からあの角までの、何でもない帰り道です。待たせてしまった時間は、これから並んで歩きながら埋めていくつもりです。彼女の帰り道だけは誰より覚えている、その自信が今の俺にはあります。

(20代男性・会社員)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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