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南仏のアイリーン・グレイの別荘「E-1027」を見た感動が、いまだに醒めない話【エディターの偏愛録】

  • 2026.6.29

孤高のデザイナー、アイリーン・グレイの傑作

メインルームからの眺め。建物は崖の上に立っていて、崖を降りていつでも海にアクセスできるようになっている。 Hearst Owned

少し前の話ですが、昨年秋に南仏のロクブリュヌ・カップ・マルタンという村にある、アイリーン・グレイの別荘「E-1027」を見に行ってきました。その感動が未だ醒めず、アイリーン・グレイが個人的にますます知りたいデザイナーになっています。

「E-1027」はインテリアデザイナーだった彼女が初めて手掛けた建築で、恋人のジャン・バドヴィッチと過ごすために建てられました。建物の名前も2人のアルファベットが由来で、EはアイリーンのE、以降の数字はアルファベットの順番を指し、10=J(ジャン)、2=B(バドヴィッチ)、7=G(グレイ)となっています(ロマンチック!)。

建築はもちろん、家具やテキスタイル、壁の色やレタリング(壁に文字入れをする手法)まで、すべてのしつらえを彼女が手掛け、アイリーン・グレイの美意識が細部に至るまで貫かれている名作建築です。 しかし、建物のその後の運命は思いのほか波乱万丈なのですが…長くなりますので、その話はまた別の機会に。

どこまでが建築で、どこまでが家具?

わたしが最も感動したのは、建築の捉え方そのものでした。まるで壁に沿って成長するツタ系植物のように、家具がゆるゆると拡張して、それが建築の一部になっていく、不思議な一体感があるのです。 例えば下の写真の仮眠スペースは、壁からスイベル式の小さなテーブルが出てきて、本を立てかけられるようになっていたり。とにかくあらゆるディテールにアイリーン・グレイのこだわりが感じられて、見逃せないのです…!

リビングの先につくった仮眠スペース。ソファベットの向かいにはシャワールームがあります。海から帰ってきて正面の勝手口から入り、シャワーを浴びて読書を楽しんでいたのかしら。と妄想しました。 Hearst Owned

今年、没後50年を迎え再び注目が高まる

リビングスペース。この建物のためにデザインされたサイドテーブル“E-1027”は、いわずと知れた名作家具ですが、日本ではミニマルな空間で選ばれていることが多いので、なんだか新鮮でした。「そうか、こうやって使うために考えたのか」と妙に納得。高橋の欲しい家具ランキングに瞬く間に食い込む結果に。 Hearst Owned

ライフスタイルが多様化する今は、家族や暮らしに合わせて可変できるモジュール式の家具が多く登場していますが、こんな風に「特定の建物や、特定の人」のために1対1で考え抜かれた家具も、やっぱり力強い魅力があるなと改めて実感しました。

1976年10月に98歳でこの世を去ったアイリーン・グレイは今年で没後50年。偶然にも、1926年に彼女が発表した“ビバンダムチェア”も発表から100年を迎え、クラシコンから特別仕様のモデルが発売されるなど、アニバーサリーイヤーにあたります。亡くなる直前に自ら写真や資料を燃やし、残されたものが少ないデザイナーですが、改めて彼女のデザイン哲学を深堀したいと思った旅でした。

ちなみに「E-1027」の見学ツアーは、この建物のほかに、徒歩圏内にあるル・コルビュジエの「カップ・マルタンの休暇小屋(キャバノン)」や、同じくコルビュジエが手掛けた「ユニテ・ド・キャンピング」やレストラン「ヒトデ軒(エトワール・ド・メール)」も一緒に見られるので、行くのは大変ですが、かなりお得感あるツアーです!

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