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アルミ・ラティアの言葉とたどる『マリメッコ展』が7月4日からスタート

  • 2026.6.26
アルミ ・ラティア(1912‐1979)Photo: Matti Saanio / The Finnish Museum of Photography

創業から75年を迎えたマリメッコの展覧会、『マリメッコ展 模様のちからMarimekko: Art of Print making―Beauty, Dream, Love』が今夏いよいよ開幕。時代を超えて愛される「模様のちから」の秘密に迫る。

『エル・デコ』2026年6月号より。



アルミ ・ラティア(1912‐1979)Photo: Matti Saanio / The Finnish Museum of Photography

「マリメッコ」の創業者、アルミ・ラティア(1912~1979年)は、大学でテキスタイルデザインを学んだ後、広告代理店でコピーライターとしてキャリアを積み、1951年にマリメッコを立ち上げる。プライベートにおいても生涯にわたって詩や手紙、日記などに自身の思いを書き留め、文筆家として知られていた。研ぎ澄まされた審美眼を持ち、自身の思想を明確な言葉で伝える術に長けた表現者でもあった人物だ。

<写真>創業者のアルミ・ラティア。夫が経営していたテキスタイルブランド、プリンテックスの魅力を伝えるため、その生地を使ったドレスをつくったのが「マリメッコ」の始まりだ。

Photo Tony Vaccaro /Tony Vaccaro Archives

展覧会の軸になるのは創業者の遺した言葉

7月4日から京都文化博物館で開幕し、東京都庭園美術館やひろしま美術館など全国を巡回する展覧会『マリメッコ展 模様のちからMarimekko: Art of Print making―Beauty, Dream, Love』では、彼女が遺した言葉を手がかりに、創業時からブランドに息づく不変の美学をひもといていく。中でも展覧会のキーワードとして、14歳の時にラティアが日記につづった言葉に注目する。「責任はただ一つ―― 美である。現実はただ一つ―― 夢である。ただ一つの力―― 愛。」

少女だったラティアがこの文を記した十数年後、第2 次世界大戦が始まる。彼女が生まれ育った街フィンランドのパルカヤルヴィはロシア領となり、故郷を失う。しかしそれでも彼女は夢を諦めなかった。マリメッコが手掛ける鮮やかな色や大胆なパターンは単なる装飾ではない。「全ての人が、日常を喜びに満ちたものにする権利がある」というラティアの宣言だったのだ。

<写真>1960年代のマリメッコで働くスタッフの様子。手にしているのは1965年にアンニカ・リマラが描いた“ライネ”。現在でもアイテムが展開されているパターン。

Photo Tony Vaccaro /Tony Vaccaro Archives

例えば“美”に着目した展示では、ブランドの美学や哲学を体現する約70点のドレスが一堂に会す。“夢”をテーマに掲げた展示ではデザイナーが思い描く独創的なアイデアを現実のものへ変えてきた、プリントファクトリーに注目。日本の気鋭アートユニット、プラプラックスが展示構成を担当し、迫力ある映像でクリエイションが生まれる様子を再現する。“愛”のパートで示すのは、ブランドの未来。展覧会の共同キュレーターを務める、「マリメッコ」のデザインディレクター、ミンナ・ケメル=クトゥヴォネンは「『マリメッコ』がこれからもより良い未来を信じて進んでいく姿を、日本のアーティストとのコラボレーションを通じて表現したいと考えました」と語る。選ばれたのは、日本のファッションブランド、「ミナ ペルホネン」のデザイナーである皆川明だ。

<写真>ラティアのサマーハウスに飾られたマイヤ・イソラのテキスタイル。

Photo Tony Vaccaro /Tony Vaccaro Archives

「皆川さんとは以前から交流がありましたが、実は去年空港やレストランで偶然出会うことが続いて。何かのサインかもしれないと直感したんです。彼の独自の視点で『マリメッコ」を解釈した素晴らしい作品が既に出来上がっていて、みなさんに見ていただくのが楽しみです」。

美を信じ、夢を実現してきた模様のちから。デザインが人々にもたらす希望と喜びを会場で体感したい。

<写真>世界的に注目され始めた1960年代にアメリカの雑誌『ライフ』に掲載されたビジュアル。撮影した写真家のトニー・ヴァッカロはこの時に出会ったモデル、アニヤ・レフトに一目ぼれし後に2人は夫婦となった。

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『マリメッコ展』3つのキーワード

「マリメッコ」にゆかりのあるクリエイターのエピソードと共に、展覧会の見どころをラティアの3つの言葉に合わせて紹介する。

(左)図案・ドレス:アンニカ・リマラ《ケイダス》/《モンレポス》1967年© Marimekko Oyj Suomi-Finland Annika Rimala 1967(右)図案:脇阪克二《カタラ》/ドレス:リーサ・スヴァント《リエユ》1970年© Marimekko Oyj Suomi-Finland Katsuji Wakisaka/Liisa Suvanto 1970

Keyword 1:Beauty

ブランドの初期から歴代のドレス約70点が集結

まだフィンランドの女性がコルセットを付け、窮屈な装いに縛られていた1950年代。全ての人が制約から解放され自由に生きてほしいという願いを込めて、ラティアはブランド名を「マリ(フィンランドで一般的な女性の名前)のメッコ(ドレス)」と名付けた。現在も息づくフィロソフィーを、希少な初期作から近年のコレクションまで約70点のドレスを通してフィーチャーする。

<写真> 1 日本人デザイナー脇阪克二の“カタラ”を使ったドレス。会場では脇阪のドローイングの展示もある。 2 1967年発表のドレス“モンレポス”。

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「Be yourselfという言葉がクリエーションの支えに」

「マリメッコ」では何をつくるかは100%デザイナーに任されていて、つくるものを考えることからがデザイナーの仕事。採用するか否かは会社が決めました。日本で会社の方針に従ってデザインしていた僕はカルチャーショックを受け、何もつくれなくなりました。アルミから言われた「Be yourself!!」という言葉を支えに生きてきたと感じています。

脇阪克二(わきさかかつじ)
1968年に日本人として初めて「マリメッコ」に入社。“ブブー”など数々の名作を生む。現在は京都のブランド「SOU・SOU(そうそう)」で活動を行う。

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Keyword 2:Dream

デザイナーの発想を実現する創作プロセスに迫る

材料や技術に制約があった戦後の創業初期から、常にデザイナーの描くビジョンを共に分かち合い、形にしてきたものづくりに注目。会場では工場の道具やデザイン画などの資料がその歴史の深さを物語る。さらにアートユニットのプラプラックスが本社工場のプリント現場を迫力ある映像演出で表現。デザイナーの描いた模様がプリントとして生まれる瞬間を体感できる。

<写真> 3 幅広い色展開が生まれた石本藤雄の“マイセマ”。 4 昨年発表された鈴木マサルが手掛けた“ランタクッカ”。道端に咲く見過ごしがちな小さな花を大胆なスケールで表現した。

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「クリエイトするということは自由であること」

1983年、パリで開かれた見本市で、恐らくデザイナーであろうドイツの方に私の手掛けた“マイセマ”が「見本市の中でベストワン」と言われました。自分にとって初めて、かつ一度きりの経験で、うれしかったのを覚えています。クリエイションとは、自分から湧き起こるものから始まる。「マリメッコ」での仕事は自由があった。手にした人もそれを感じとるのかもしれません。

石本藤雄(いしもとふじお)
1974年にマリメッコ社に入社し、32年にわたり400点以上の柄を発表した。フィンランドの自然を映した叙情的な表現で知られる。現在は愛媛県を拠点に活躍している。

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「リスクを恐れず哲学を貫く姿勢が、使う人を前向きにする」

私にとってテキスタイルデザインに興味を持つきっかけとなった存在なので、「マリメッコ」との協業ではその哲学に敬意を払いながら、今の時代を反映するデザインにしたいと思っています。鮮やかな色や大胆な柄を採用することはある意味、シンプルなものよりもリスクを伴う。それを恐れずに思想を体現する姿勢が、使う人の気持ちを前に向かせると思います。

鈴木マサル(すずきまさる)
テキスタイルデザイナー。2009年から「マリメッコ」でデザインを手掛ける。大胆な構図と豊かな色彩感覚を生かし、動物や植物など生命あふれるパターンを描く。

Photo : YUKI OGAWA

Keyword 3:Love

皆川明の視点で描く創造の未来

「人々が集えば本物で意味のあるものを創造できる」という信念の下、さまざまなクリエイターと協業してきた「マリメッコ」。ここではブランドが歩む次なる未来を「ミナ ペルホネン」のデザイナー、皆川明の視点を通して描き出す。北欧とのつながりが深い皆川が、時代性と不変性を併せ持つ、ブランドの創造性の本質を表したインスタレーションを発表。また、両者が協業して生まれたテキスタイルも公開される。

<写真>工場で語らうデザインディレクターのミンナ・ケメル=クトゥヴォネンと皆川明。

Photo : YUKI OGAWA

<写真>本社でカラー選定をする様子。作品名は“Tuulla(風が吹く)”、皆川が水彩で描いたドローイングをもとに製作。

皆川 明Photo: Yayoi Arimoto

「『マリメッコ』は暮らしの灯火。その未来を形にしたい」

創立から今日まで、「マリメッコ」のデザインが暮らしの灯火のように人々の喜びとなり、フィンランドのみならず世界の人々の暮らしを照らし続けています。その時の積み重ねが本当に素晴らしいと思います。今回の展示では、彼らのデザインがエターナルでエモーショナルであり続け、その思想が未来につながっていくさまを具現化したいと考えています。

皆川 明(みながわあきら)
デザイナー。1995年にミナ ペルホネンを設立。洋服やインテリアなど多彩なクリエイションを手掛ける。ブランドの思想を伝える展覧会『つぐ』が全国巡回中。

提供:マリメッコ展 模様のちから

『マリメッコ展 模様のちから Marimekko: Art of Printmaking-Beauty, Dream, Love』

会期/2026年7月4日(土)~9月6日(日)
会場/京都文化博物館 4・3階展示室(京都府京都市中京区三条高倉)
時間/l10:00~18:00(金曜は19:30まで。入場はいずれも閉室の30分前まで)
休館日/月曜(7月20日は開館、翌21日休館)
tel. 075-222-0888

<巡回予定>
東京都庭園美術館
会期/2026年10月3日(土)~12月20日(日)

ひろしま美術館
会期/2027年1月30日(土)~3月28日(日)

北九州、富山、名古屋、長崎ほか

<写真>プラプラックスによる会場イメージ図。工場の巨大なプリント機から着想を得た映像作品を展開する。※画像はイメージです。開催会場により内容は異なる可能性がございます。

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『エル・デコ』2026年6月号

右上:Klaava, Annika Rimala, 1967/ 下:Viidakko, Pentti Rinta, 1981/ 左上:Seppel, Antti Kekki, 2022

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