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「線路の安全確認のため一時運転見合わせです」案内を続ける駅員…退勤後にニュースで知った“予想外の真相”

  • 2026.7.26
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出典:photoAC ※画像はイメージです

こんにちは。元鉄道駅員の川里です。

今回は、私が駅員時代に体験した「トラブルの真相」を紹介します。私が体験したのは、地球が列車を止めた瞬間でした。

運転見合わせの原因は「安全確認?」

2026年は7月に入っても比較的涼しい印象がありましたが、どうやら夏はスーパーエルニーニョ現象なるものの影響で、やはり異例の暑さになるとの予測もあるそうです。

私が働いていた鉄道会社では、私の退職と前後して服装の規程が緩和され、夏服と冬服を個人の判断で自由に衣替えできるようになりました。もしかしたら、今は1年中夏服という駅員や乗務員もいるのかもしれません。

まだ厳しい服装規程が残っていたある暑い夏の日、指令から一斉連絡がありました。

「〇〇線のA駅―B駅間で乗務員が異音を感知。線路の安全確認を行うため、〇〇線は一時的に運転を見合わせます」

おや、野生動物と接触でもしたのかな、と感じました。列車が野生動物をはねてしまい、安全確認のために停止することはしばしばあります。

野生生物との接触であれば、通常は運転再開まであまり時間はかかりません。ところがこのときは、動物をはねたにしては時間がかかり、運転見合わせの理由も「列車の安全確認」ではなく「線路の安全確認」という、違和感のあるものだったのです。

スリップにしては違和感のある季節

線路のなにを確認しているというのでしょう。当時の私には、ひとつだけ心当たりがありました。列車がスリップした可能性です。

実はこの年の冬、雨によって列車の車輪がレールの上でスリップし、安全確認のため列車を停止させる事態が起きていました。

列車のスリップ(鉄道会社の社員は「空転」と呼びます)は雨や雪の日だけでなく、落ち葉が付着しても発生することがあります。

しかしこのときは草木が青々と茂るよく晴れた夏の日。木から伸びた細い枝が列車にぶつかることはあっても、スリップの原因となる事象があるようには思えません。

ニュースで知った事実

結局、私はこのとき、最後まで運転見合わせの原因がよくわからないまま

「線路の安全確認中です。運転再開までお待ちください」

との案内を続けることになりました。もしかしたら社内メールなどでは新しい情報が流れていたのかもしれませんが、改札口にずっと立っていた私にまでは届いていませんでした。

運転は無事に再開され、どうやら残業の必要はなさそうという上司の判断のおかげで、私は定時で退勤できました。制服から通勤用のスーツに着替える途中、ふと、スマホの通知に目が留まりました。勤め先である鉄道会社のニュースでした。

「暑さで線路曲がり、一時運休」

ここで私は初めて、真相を知ることになりました。どうやら、あまりの暑さに鉄が異常なほど膨張し、線路を曲げてしまったとのことでした。

「ガタンゴトン」の正体

ちなみに、鉄道の線路は起点から終点までずっとレールがつながっているわけではありません。保線や工事に関わったことはありませんが、聞いた話では線路1本は長さ25メートルが標準なのだそうです。

線路と線路の間には継ぎ目ができますが、この継ぎ目は線路同士をぴったり密着させず、少し間を空けます。こうすることで、本来なら鉄が膨張しても線路が曲がることはないはずでした。線路設置時の想定を気温が上回ってしまったということでしょう。

列車の走るオノマトペとして「ガタンゴトン」を思い浮かべる人も多いと思いますが、これは列車の車輪が線路同士の継ぎ目を通るときの音です。新幹線は高速走行できるように車内が密閉されており、また特別な長いレールを使っているため、「ガタンゴトン」という音は聞こえません。

これが地球温暖化の影響か…

線路が曲がってしまう以前から、社内の勉強会で「自然災害の激甚化には危機感を持って対策しなければならない」との会社経営陣の見解を聞いてはいました。

しかし大雨や台風ならともかく、ただ暑いというだけで自分に直接の影響が生じるとは考えておらず、「これが地球温暖化の影響なのか!」と衝撃を受けました。

詳しいメカニズムの説明は省略しますが、地球が暖かくなれば台風が巨大化し、大雨も増えます。全国のあちこちで、大雨や台風などにより線路が使えなくなり、長期運休を余儀なくされたり、路線バスやBRT(バス高速輸送システム)に転換して廃線となってしまったりする路線も少なくありません。

二酸化炭素を出さないエコな乗り物とも評価される電車が、二酸化炭素の増加による地球温暖化の影響で走れなくなるとは、なんということでしょうか。

地球規模の問題は、目の前の業務もあって自分ごとにしにくい部分がありますが、このときばかりは自分や鉄道会社も地球の一員なのだということを痛感させられました。


ライター:川里隼生

鉄道会社の駅係員として8年間、4つの駅を経験しました。コロナ禍やデジタル化を通して移り変わってきた、会社としての鉄道サービスの未来像と、お客様それぞれが求めている鉄道サービスのあり方の両方から学んだことを記事にしていきます。


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