1. トップ
  2. エンタメ
  3. 20年前、デビュー曲から作家チームを様変わりさせた夏 2作連続首位で駆け抜けた方向転換のダンスナンバー

20年前、デビュー曲から作家チームを様変わりさせた夏 2作連続首位で駆け抜けた方向転換のダンスナンバー

  • 2026.8.3
undefined
※ChatGPTにて作成(イメージ)

KAT-TUNの作家クレジットをあらためて辿り直すと、2作目にして早くも訪れていた大きな分岐点に気づく。2025年に活動を終えた彼らにとって、そこはまだキャリアの入り口に近い時期だった。

デビュー曲『Real Face』を手がけたのは、スガシカオと松本孝弘という国内ロック畑の2人。そして2作目の『SIGNAL』で、JOKER以外の作家チームは総入れ替えとなる。

KAT-TUN『SIGNAL』(作詞:ma-saya・JOKER/作曲:Joey Carbone・LISA HUANG)ーー2006年7月19日発売

国内ロックの骨太さを名刺代わりにしたデビュー

2006年3月22日、KAT-TUNは『Real Face』でCDデビューを果たした。その少し前には、デビュー前のアーティストとして史上初となる東京ドーム単独公演を開き、チケットは争奪戦となった。曲が世に出る前から、日本一大きな会場が埋まる。そんな規格外の熱狂を引き連れたスタートだった。

『Real Face』の作詞はスガシカオ、作曲は松本孝弘。ファンクの匂いをまとうシンガーソングライターと、B'zのギタリストとして時代を築いた人だ。新人アイドルのデビュー曲に、日本のロック畑を代表する書き手と弾き手を迎えた座組だった。

つまり送り出す側は、甘さより先に尖りと骨太さを名乗りとして差し出した。王子様の型に収まらない6人の危うい熱を、国内ロックの重量感で受け止める設計だ。前代未聞の動員を実現した新人に、生半可な曲は預けられない。そこには、実力者の名前でまず土台を固めようとする制作側の覚悟を感じる。

結果は100万枚を超える大ヒット。2006年の年間ランキング1位まで駆け上がり、6人はいきなり時代の真ん中に立った。ここまで売れてしまうと、次の一手は難しい。普通なら、同じ路線をなぞるのが定石だろう。

海外ソングライターへ、設計図をまるごと描き替えた

およそ4か月後の『SIGNAL』で、クレジットは一変する。作曲はJoey CarboneとLISA HUANGの海外ソングライターコンビ。作詞はma-sayaが手がけ、ラップパートの詞をJOKERこと田中聖が担当した。編曲はAKIRA(PALM DRIVE)。国内ロック路線から、ビートを軸にしたダンス路線へ。2作目にして、音の設計図をまるごと描き替えたのだ。

重心の低いデビュー曲とは対照的に、『SIGNAL』は夏の光が似合う軽やかな疾走感をまとっている。弾むビートの上を6人の声が駆け、間に差し込まれるラップが曲の加速装置になる。洋楽的なメロディに乗せられた日本語の言葉たちも、ビートを邪魔せず推進力に変わっていくのが気持ちいい。

この振り切り方には、タイアップも呼応していた。『SIGNAL』はNTTドコモ「FOMA new 9シリーズ」のCMソングで、メンバー自身が出演。近未来を思わせる映像世界に、未来へ走り出すようなダンスサウンドが重なった。

携帯電話が生活の真ん中へ滑り込んでいく2006年。着信を待つ画面を眺め、親指でメールを打っていたあの頃の時間の流れに、この曲は新型モデルの顔として滑り込み、時代の空気ごと記憶に刻まれていった。

路線を変えても揺るがなかった数字

蓋を開ければ、『SIGNAL』は週間ランキング1位。デビューから2作連続の首位で、累計は約57万枚を数えた。2006年の年間ランキングでも5位に食い込み、日本ゴールドディスク大賞の「ザ・ベスト10シングル」にも選ばれている

音を大きく変えることは、ついたばかりのファンを試す行為でもある。デビュー曲で惚れ込んだロックの手触りが、次の曲にはもうない。それでも支持がまったく揺るがなかった事実に、6人が背負っていた期待の大きさと、どんな曲でも自分たちの色に染めてしまう力を感じる。デビューの熱狂がまぐれでないことを、方向転換ごと受け止めさせて証明した2作目だった。

なお、この年の10月には赤西仁が語学留学をするために活動休止を発表する。『SIGNAL』は、その発表より前に6人体制でリリースされたシングルだ。夏の疾走の直後に立ち止まりの季節が訪れたことを思うと、この曲の屈託のない明るさがいっそう眩しく響く。

様変わりが灯した青信号

大ヒットしたデビュー曲と次に仕掛けた2作目で、ここまで作家チームを様変わりさせた例はそう多くないかもしれない。ロックもダンスも自分たちの声で鳴らせると示したこの夏の2作は、まだ駆け出しの6人が見せた最初の大きな振れ幅だった。

翌2007年春には赤西仁が戻り、6人はふたたび並んで走り出した。歌詞もまた、迷いや孤独を抱えた誰かが顔を上げ、一歩を踏み出すまでを描く内容だ。タイトルの『SIGNAL』は、そんな迷いの中にいる誰かへ差し出された小さな知らせのようにも読める。立ち止まりかけた心に前へ進む合図を送る歌を、走り出したばかりの6人が歌う。この重なりが、曲をただの路線転換作以上のものにしている。

大ヒットの直後に、成功の型をあっさり手放してみせた6人。その大胆な一手こそが、この先どこへでも行けるという未来への青信号だったように映る。2006年の夏、確かに信号は青だった。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

の記事をもっとみる

注目コンテンツ