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27年前、アイドルが刻んだ“低音ラップ”の衝撃!あの6人組が「通念」をそっと裏切った一曲

  • 2026.7.30
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2023年10月、映画『白鍵と黒鍵の間に』初日舞台挨拶に登壇した森田剛(C)SANKEI

6人が声を重ねて踊りながら歌う。V6と聞いて多くの人がまず思い浮かべるのは、そういう整った王道アイドルの佇まいだろう。ところがこの1曲は、その通念をそっと裏切るところから始まる。

V6『太陽のあたる場所』(作詞:BANANA ICE/作曲:BANANA ICE・笹本安詞)ーー1999年7月14日発売

再生してすぐに届くのは、甘い歌声ではない坂本昌行の低い声によるラップだ。地を這うようなトーンが先に鼓膜を叩き、そのあとでようやくメロウなサビが顔を出す。王道アイドルの看板を背負いながら、入り口だけは思いのほか渋い。この意外性こそが、太陽のあたる場所というやわらかいタイトルの裏側にある。

低い声を先に聴かせる落差の設計

この曲のおもしろさは、歌声の配置そのものにある。まず坂本の低音ラップが空気を沈め、次に6人が渡していくメロウなサビが日なたの温度を運び、終盤は坂本以外のメンバーも含む軽やかなラップが締める。低い声で幕を開け、明るい声で満たし、また軽い声で切り上げる。3段階の声の設計図が1曲の中に敷かれている形だ。

サビだけを聴けば、よくできたポップスとして流れていく。だが冒頭と終盤のラップパートを含めて聴くと、この曲がただの歌ものではなく、誰の声をどこに置くかという構成そのものを聴かせる曲だとわかる。声質の違う6人を、順番と役割で活かし切る。それがこの曲の技術的な芯だ。

低音ラップからサビへ移る瞬間の落差も見逃せない。地に沈んだ声のあとに来るメロウな旋律は、実際の音の高さ以上に明るく響く。先に低さを聴かせておくからこそ、サビの陽だまりのような質感が際立つ。声の設計は、単に役割を割り振るだけでなく、聴き手の耳に落差そのものを設計するところまで踏み込んでいる。

合いの手ではなく曲の主役に置かれたラップ

1999年当時、アイドルの楽曲でラップが使われること自体は珍しくなかった。ただ、その多くは合いの手程度の彩りで、曲の構造の中心には置かれなかった。この曲はそこが違う。ラップは飾りではなく、曲の入り口そのものを担っている。サビへ向かう助走ではなく、サビと並び立つ主役の一つとして扱われている。

ダンスと歌声を売りにするグループが、あえて低く沈んだ声から曲を始める。その選択には、聴き手の耳を一度緊張させてからほどく狙いがあったはずだ。可愛らしさだけで押し切らない、という作り手の意志が、この構成の中に透けて見える。ラップパートの言葉数も詰め込みすぎず、一語一語をゆっくり置いていく運びで、勢いよりも重心の低さを聴かせる書き方になっている。

後年に連なる攻めた選曲の先駆け

アイドルという形式の中で、あえてラップを構造の核に据える。この姿勢は、のちにデビューするKAT-TUNのような、攻めた選曲を武器にするグループの系譜に連なるものだと言いたくなる。もちろんKAT-TUNの登場はこの曲よりずっと後のことで、直接の影響関係を語れるわけではない。それでも、可愛らしさや整った歌唱だけに寄りかからない挑戦の気風は、1999年の時点ですでにこの曲の中に息づいていた。当時の芸能界には、王道の枠に収まらないチャレンジを許容する空気があり、この1曲もその系譜の先頭に近い位置にいる。

甘さと硬さ、整った歌唱と荒削りなラップ。相反する要素を1曲の中に同居させる作り方は、後年になって同じアイドルという枠の中で繰り返されていく発想でもある。この曲はその発想が、まだ珍しかった時代に置かれた一つの起点として聴くことができる。

アニメ主題歌育ちの作家が担った折衷

作詞と作曲を手がけたBANANA ICEは、下町兄弟というユニットの中心人物でもある。その筆致は勢いよりも構成の妙で聴かせるタイプだ。この曲もまた下町兄弟が手がけている。

ラップがJ-POPやアイドル歌謡へじわじわ浸透していく時期に、アイドルグループに声の構成を託す。畑違いに見える組み合わせが、実際には低音ラップとメロウなサビという振れ幅の大きい構成を、破綻なくまとめ上げている。派手な実験ではなく、丁寧な折衷。その手つきが、この曲を単なる話題性のラップ曲で終わらせなかった理由だろう。

サビの旋律線がなだらかで覚えやすいのも、下町兄弟の特徴でもある「聴いてすぐ口ずさめる」書き方が生きている証だろう。ラップという尖った要素を持ち込みながら、着地点はあくまで親しみやすいメロディに置く。その二枚腰の作りが、この曲を実験曲ではなく愛されるシングルにしている。

光を当てず並んで歩き出す応援歌

坂本の低い声で始まり、6人のサビでやわらかく満たされ、また軽いラップで送り出される構成は、迷いから抜け出す背中を押す並走のようにも聴こえる。沈んだ声から始まって、最後は軽快に締める。その温度の上がり方が、前向きさを押しつけずに手渡す応援歌になっている。夢を追う理由すら見失った主人公に、いきなり光を当てるのではなく、まず低い場所に立ってから一緒に日なたへ歩き出す。曲の構成そのものが、その並走の形をなぞっている。

シングルは累計30万枚を超えるセールスを記録。数字以上に残っているのは、王道アイドルの看板を掲げながら、ラップから始めることを恐れなかった、その1曲の作り方そのものだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

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