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【木村多江さん】本来のロック魂が炸裂!? 舞台で見せる、今までにない姿とは

  • 2026.6.25

【木村多江さん】本来のロック魂が炸裂!? 舞台で見せる、今までにない姿とは

7月3日から上演される舞台『わたしの書、頁(ページ)を図る』で主役の町子を演じる木村多江さん。地味で孤独で退屈な毎日を送る図書館職員の役だ。一見、静かな図書館という空間でくり広げられる、にぎやかな妄想世界が見どころだ。トラウマを抱えた町子が、妄想から一歩を踏み出した先にあるものは……。

Profile

きむら・たえ●東京都生まれ。学生時代から舞台活動を始め、96年ドラマデビュー。以後、数々の映画やドラマに出演し、2008年の初主演映画『ぐるりのこと。』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞など多数受賞。NHKBS「美の壺」の天の声を担当し、NHK Eテレ「木村多江の、いまさらですが…」に編集長役でレギュラー出演している。映画『Never After Dark』、『おそ松さん 人類クズ化計画!!!!!?』にも出演中。初主演となる紀伊國屋書店創業100周年記念公演『わたしの書、頁(ページ)を図る』は7月3~19日に東京・紀伊國屋ホールで上演される。日本舞踊(師範)、野菜ソムリエの資格をもつ。

誰の頭の中にも外から見えない「本当の自分」が

「メタバース」というインターネット上の仮想空間で、アバター(自分の分身となるキャラクター)として活動する……、そんなSF小説のような未来はすでに始まっている。そこでは誰もが理想の自分になって、現実の世界ではなし得ないことをやってのけたりするのだ。

しかし、考えてみるとメタバースが誕生する前から私たちは「本当の自分」や「なりたい自分」を自分の内側に隠していたりする。その姿は外からうかがい知ることはできず、知っているのは自分だけ、という。

だから、一見おとなしそうな人が実は過激な一面を持っていたり、強気に見える人が本当は臆病だったり……。そんな真の姿が何かのはずみで表に出ること、「人は見かけによらないものだ」とまわりの人々は驚愕する。

図書館の常連は社会になじめない孤独な人たちなのか?

たとえば、表面上はしーんと静かな図書館の部屋。そこでは手にした本の中の世界で各々が生きている。体は同一空間に存在していても、ひとりひとりの頭の中では異なる世界が展開されているのだ。

7月に上演される舞台『わたしの書、頁を図る』は、まさにそんな図書館で繰り広げられる笑いあり涙ありのストーリー。

とある町の図書館に勤める柳沢町子(木村多江)は、図書館を訪れる常連たちの様子や選ぶ本から、その人物像や職業、日常を想像するという、地味で孤独で退屈な毎日を送っていた。一見すると、無口で平凡な図書館職員。しかし、その頭の中は妄想が暴走気味のちょっと危ない(?)女性だった。

町子の妄想によると、常連の利用者たちは皆、何かしらの悩みを抱え、社会に馴染めない人たちだ。本の中の世界が唯一の落ち着ける場所に違いないと勝手に妄想しているのだった。

殻にこもっていた人間が人と関わるときに生まれる葛藤

実は町子自身も人との関わりの中で深く傷ついた過去を持ち、そのトラウマから抜け出せない人間だった。古キズから目を背けるように、現実世界との間に壁を作って暮らす。心を満たせるのは本の中の世界だけ。しかし、そんな妄想過多の一見平穏な日常は、図書館に現れたひとりの青年によって崩されていく。

自主映画を撮っているというその青年は、町子に「いつも通りの姿を撮らせてほしい」という。「なぜ、私を?」と激しく戸惑う町子。やがて撮影は図書館の常連たちも巻き込んでいく。そして、カメラに映し出された彼らの真の姿は町子が断定的に思い込んでいた人物像とは大きく異なるものだった。

否応なく妄想の世界から出て、現実世界で人と関わることを余儀なくされた町子。

「癒えたと思っていた傷口から膿がジュクジュクと出てきて、あまりのつらさに逃げ出したくなるのですが、町子は元の世界に戻ることなく、それまでとはまったく異なる選択をしていくことになるんです」(木村さん)

町子の取った行動とは……。

図書館なのに、歌あり、楽器演奏あり、会話あり?

「図書館という空間で繰り広げられる華やかな物語を見てみたい」というのは、新進気鋭の脚本・演出家である小沢道成さんの言葉。木村多江さんを主人公に、とずっと構想をあたためてきた物語が、この『わたしの書、頁を図る』だという。『わたしの書、頁を図る』という、ちょっと難解なタイトルについて木村さんの解釈を聞いてみた。

「私もわからなくて、調べてみたんです。図書館が舞台であることからも『書』は本のことですよね。そして、『人生のページをめくる』という表現があるように、人の一生を一冊の本に例えることもあります。だから、『わたしの書』とは『わたしの人生』。そして、『図る』には『目的を達するために考えて行動する』という意味があるようなので、漫然とページをめくるのではなく主体的に意思を持って自分の人生を作っていくという物語だと思っています」

小沢さんからは「ロックな木村多江を見てみたい」とオファーされたそうだ。

「でも、いただいた役は図書館職員だったので『あれ?どういうこと?』と意外でした。後日、台本を読んでみると、妄想の中の町子はおしゃべりで行動的で『あなたはこうするべきよ』とか『一歩進むべきよ』といったことを強く主張できる人だったんです。なるほど、これがロックね、と納得しました」

静かにしていなくてはいけない図書館なのに、登場人物たちは妄想の中で楽器を演奏したり、歌ったり、会話したり、とてもにぎやかだ。

「実は私も劇中で歌うんです。それが今から恐怖(笑)」

それぞれの人生の物語は、人と関わりによって紡がれていく

シリアスからコメディまで幅広い演技力に定評のある木村多江さんだが、今回の舞台では、さらに見たこともないような木村さんが見られるという。一体、この人ののびしろはどれだけあるのか。

楚々としてしとやかなイメージの木村さん。でも、その内面にはロックな要素が多分にあると自己分析する。

「私の中に眠るロック魂が炸裂する予感が(笑)」

町子の人生の物語を観ながら、観客たちも自分の人生を振り返ることになるだろう。

「人間って不器用だけどいとおしいなと思えたり、ありきたりに思える日常の輝きに気づいたりできるんじゃないかと思います」

「本」とも密接な関わりのあるこのお芝居は、新宿・紀伊國屋書店のホールで創業100周年の記念公演として上演される。

【Information】紀伊國屋書店創業100周年記念公演『わたしの書、頁を図る』

図書館職員として何の変哲もない退屈な時間を繰り返す柳沢町子。よく見かける利用客らの人物像や日常を妄想しては、また元の退屈な日常に戻る日々。しかし、自主映画を制作する青年の出現により、常連利用客たちの真の姿や想いを知ることとなり、激しく葛藤し、変化していく。誰もが持ちうるそんな葛藤を、新進気鋭の脚本・演出家がデジタルとアナログを融合し情感豊かに緻密に描き出す。表現力豊かな個性あふれる出演者たちの芝居、歌、演奏も見どころ。

7月3日(金)~19日(日) 紀伊國屋ホール
作・演出・美術:小沢道成
出演:木村多江/味方良介 光嶌なづな 中井智彦/坂口涼太郎 猫背 椿
https://watashinosho.jp/


撮影/中村彰男 構成・文/依田邦代

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