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彼女の支出を「その他」にしたのは、口を出したくなかったから。伝えそびれた僕の事情

  • 2026.6.21
ハウコレ

夕食のとき、彼女がスマホの画面をこちらに向けてきました。映っていたのは、僕が管理している家計アプリです。「その他」という欄を指でなぞる彼女を見て、いつか聞かれると思っていた質問が、とうとう来たのだと分かりました。

自分にだけ厳しくつけた家計簿

同棲を始めるとき、家計アプリを用意したのは僕でした。自分の支出は、一円単位で細かく分けました。食費も、本も、ゲームも、すべて名前のついた欄に振り分けて、毎月見直していたのです。自分の浪費を抑えたかったからでした。

けれど彼女のぶんだけは、あえてひとつにまとめました。彼女が何を買ったのか、僕がいちいち確かめたくなかったのです。「その他」という欄は、僕にとって、そこには手を出さないという印のつもりでした。

お金で揉め続けた家の記憶

僕がそうしたのには、理由がありました。実家では、母が父の使ったお金を一円残らず記録し、何に使ったのかを問い詰めていたのです。食卓ではいつもお金の話が続き、家のなかには張りつめた空気が流れていました。

子供ながらに、お金を数えられることがどれほど人を追い詰めるかを、僕は感じていたのだと思います。だからこそ、好きな人の財布の中身だけは、決して数えたくなかった。彼女の自由を守っているつもりでいたのです。

やさしさのつもりが、距離になっていた

彼女に画面を見せられて、「私の支出だけ、その他なんだね」と言われました。沈んだ声でした。「……気づいてたんだ」と返すのが精一杯で、「君の使い方に、いちいち口を出したくなかったんだ」と続けました。

けれど言いながら気づいたのです。僕は理由を一度も伝えず、家計の形を一人で決めていた。彼女を縛りたくないという気持ちが、いつのまにか、彼女を蚊帳の外に置くことになっていたのだと。守っているつもりで、僕は距離を作っていました。

そして...

その夜、僕たちはアプリを開き直し、彼女の欄を一から作りました。彼女の分にもきちんと項目を作って、二人で見られるようにしたのです。

実家のことも、少しだけ話しました。数えてくれていいと笑ってくれた彼女を見て、ようやく本当のことを言えた気がしました。「その他」にまとめたのは、彼女を遠ざけたかったからではありません。ただ、大切に思う気持ちは、言葉にしなければ距離にしかならないのだと、分かったのです。

(30代男性・会社員)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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