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AIが、何でもやってくれる。じゃあ、私たちは何がしたい?——カリフォルニア発・「Google I/O 2026」体験記

  • 2026.6.25

Googleが毎年開催する開発者向けのカンファレンスイベント「Google I/O」。今年の「Google I/O 2026」は、5月19日から20日にかけてアメリカ・カリフォルニアのマウンテンビューで行われた。AI技術が急速に日常に浸透する今、Googleが考える未来とは?Google×BRUTUSの対話型AI「もしもし、ブルータス。」のプロジェクトメンバーである、クリエイティブインキュベーターチーム「Firstthing」の中山祐之介が、現地で目撃したテクノロジーの最前線をレポートする。

text & photo: Yunosuke Nakayama

Googleのロゴの入った建物
BRUTUS

Google I/Oって?

2008年に始まった「Google I/O」は、Googleが年に一度開く開発者向けのカンファレンスイベント。開催地は、Googleの本社が置かれるアメリカ・カリフォルニアだ。

「Android」も「Chrome」も「Google Home」も、私たちの日常に欠かせないGoogleのサービスの多くが、「Google I/O」で発表されてきた。Googleが次の1年でどのような未来を仕掛けようとしているのか、その設計図を一気に開いてみせる場なのだ。

僕たちFirstthingは昨年、GoogleとBRUTUSと一緒に、話せる雑誌「もしもし、ブルータス。」を作った。その縁で、今年のI/Oに招いてもらった。

話せる雑誌「もしもし、ブルータス。」
45年分のBRUTUSと、受話器ごしに話せる「もしもし、ブルータス。」
話せる雑誌「もしもし、ブルータス。」
受話器を取った人たちは、こちらの想像を超えて楽しんでくれた。
話せる雑誌「もしもし、ブルータス。」
BRUTUS
話せる雑誌「もしもし、ブルータス。」
BRUTUS

AIが、生活のあらゆる面に入り込んでいく

「Google I/O 2026」は、Googleの本社も位置するサンフランシスコ・ベイエリア南部の都市、マウンテンビューで行われた。

サンフランシスコに到着してまず驚いたのが、自動運転タクシーの「Waymo」が何の違和感もなく走っていること。実際に乗ってみると、教科書通りの安全運転を続ける無人車に、有人の車よりもなぜか安心してしまう自分がいる。往来する有人車もその状況を完全に受け入れているように見える。

これはまるっきり『トータル・リコール』の世界じゃないか!と興奮しつつも、同時に奇妙なむずがゆさを覚える。新しいテクノロジーは、かつてのようにSF的な衝撃としてやってくるんじゃなく、こうやって生活の隙間にじわじわと、あまりにもなめらかに染み込んでくる。

自動運転タクシーの「Waymo」
カリフォルニアでは、驚くほど自然に無人の「Waymo」が街を走っている。
自動運転タクシーの「Waymo」
BRUTUS
自動運転タクシーの「Waymo」
BRUTUS

会場となった「ショアライン・アンフィシアター」に到着すると、まずそのスケール感に圧倒された。普段は野外音楽ライブが開かれるような広大な敷地で、まるでフジロックのような雰囲気なのだ。

会場はまるでフェス会場!入口からワクワクが止まらない。

基本的に数日間かけて行われる「Google I/O」では、まず「Keynote」と呼ばれる初日のメインステージでの基調講演で、その年の目玉となるコンテンツが一気に発表されていく。「Keynote」はオンラインでも配信され、世界中で数千万人が視聴するほどの注目度だ。

続いて、それぞれのテーマを深掘りするセッションが行われていくほか、会場には様々な開発者やクリエイターが自らの活動を展示するデモスペースもある。世界中から数千人のエンジニアや研究者、テック関係者たちが押し寄せ、まだ世に出ていない最新テクノロジーを我先にと浴びていく。

様々な開発者やクリエイターが自らの活動を展示するデモスペース
BRUTUS
様々な開発者やクリエイターが自らの活動を展示するデモスペース
BRUTUS
様々な開発者やクリエイターが自らの活動を展示するデモスペース
BRUTUS

今年の「Keynote」での発表はやはりAI一色だった。Google CEOのサンダー・ピチャイは「完全にエージェントの時代に入った」と切り出し、人工知能研究チーム「Google DeepMind」創設者のデミス・ハサビスは、あらゆる入力から映像を生成する「世界モデル」として「Gemini Omni」を披露した。

AIが人間を“手伝う“段階は、もう終わった。音声入力だけで文書が仕上がる「Docs Live」、24時間休まず働く個人エージェント「Gemini Spark」、この30年で最大というアップデートを遂げた「Google 検索」——あらゆる場面で、AIが代わりにやってくれる。Waymoが街を走っていたように、AIもまた、いつの間にかそこにいる。

「Keynote」でのスピーチでは、繰り返し登場する「Humanity(人間性)/ Human Creativity(人間の創造性)」という言葉が印象に残った。AIを人間の創造性のために使うということ自体に異論はない。ただ、なぜあえてそこを声高に推すのか、「Keynote」のスピーチだけではピンと来なかった。

BRUTUS

AIは、人生を楽しむためのものだった

その違和感を覆してくれたのは、メインステージでの発表ではなく、デモスペースや個別のセッションに流れる異様な熱気の方だった。

「Directing the future」というセッションに登壇した、『ボーン・アイデンティティー』などで知られる映画監督のダグ・リーマンは、新作のAI映画『Bitcoin』で世界150以上の都市を舞台にしたと話していた。これまでの映画制作にあった「予算でロケ地を妥協する」という制約が、AIによって完全に消えたのだという。

だが彼は、そこで生まれた余白を、125人を超える本物の俳優をキャストし直すことに使ったらしい。「AIはズルをするための道具じゃない。人間が自らの制限を突破し、本当のHumanityを引き出すために使うものだ」

「AI Tools for Human Creativity」というセッションでは、Google Creative Labのクリエイターが「仕事を速くしたいんじゃない、プロセスを豊かにしたいんだ」と話していた。

給水自転車
給水自転車が会場を巡回し、ペダルを漕いだ水タンクが走っている。時々すこぶるアナログすぎる!
給水自転車
BRUTUS

また別のクリエイターは、日本のファッション誌をGeminiにアーカイブさせ、毎朝自分の服装を入力するとスタイリングのインスピレーションが返ってくるアプリを“自分のためだけに”作っていると語った。「オーディエンスはあなただけでもいい。好きなだけ奇妙でいい」。笑いながらそう言う顔を見ていたら、なんだか自分も手を動かしたくなってくる。

マヂカルラブリー・野田クリスタルさんが画像生成モデルNano Bananaで作った「ペットカードジェネレーター」のトレカ
会場では、マヂカルラブリー・野田クリスタルさんが画像生成モデルNano Bananaで作った「ペットカードジェネレーター」のトレカを、いろんな人に配っていた。
会場でのマヂカルラブリー・野田クリスタルさん
BRUTUS
GBikeという社用自転車
会場間の移動はGBikeという社用自転車。この場所だからこそか、ペダルを漕ぐたび、よりいっそう体の感覚を感じる。
GBikeという社用自転車
BRUTUS

立ち寄ったデモブースで、AIエージェントがあらゆるタスクを軽々こなすのを見ていた。便利すぎて、少し恐ろしくもある。一緒にいたメンバーがGoogleの社員にふと聞いた。

“What should we do?”
僕たちは、(最終的に)何をすべきなんだろう?

彼は少し笑って即答した。

Enjoy Your Life!
人生を楽しんで!

「Enjoy Your Life!」と答えてくれた彼が見せてくれたのは、自作のキャラクター育成アプリ。誰に公開するわけでもない、自分のためのAIの使い方だ。

私たちは、AIと何をする?

2026年のいま、世の中はAIを使ったタイパや効率化、あるいはAIに仕事が奪われる。そんな話ばかりが聞こえてくる。でも、その最前線にいる彼らが夢中になっていたのは、もっと違うことのように思えた。世の中の誰も評価しようがない、最高に奇妙なものをAIで自作して、ただ楽しむこと。世界を便利に変える技術の流れは、もう止まらない。完璧なインフラは、僕たちが何をしていようと着々と整っていく。だとしたら、その上で何を作るかくらい、自分の好きにやっていい。

木陰のパラソルの下は、いつも誰かの話し声でいっぱいだった。

帰国してから、学生の頃に思い描いていた「いつか作りたいものリスト」を引っ張り出して、頭から見返してみた。誰にも頼まれていないし、世の中に必要とされてもいない。けれど、当時の自分が確かに面白がっていた小さなアイデアたち。そのうちのひとつを、自分のためだけに、一度ちゃんと作ってみようと思っている。

AIが何でも一瞬で作れてしまう時代。面倒なことも、足りない技術も、ぜんぶAIが肩代わりしてくれる。頭に浮かんだことを、そのまま形にできる。でも、面白いのはきっとその先にある。作ったものを誰かに見せて、笑われたり、「バカだね」と言われたり、思わぬ反応が返ってきたり、調子に乗ってもう一個作ってみたり。AIがやる必要のない、どうでもいいこと。だからこそ、そこだけが最後まで、人間の手の中に残っている。AIが何でもやってくれるのなら、僕たちはもっと好きにやればいい。そっちの方がなんだか、ずっと面白そうじゃないか。

BRUTUS
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