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〈蟹ブックス〉×〈青山ブックセンター本店〉×〈knott books〉鼎談。書店のリアルを聞く

  • 2026.5.13

エッセイ集『書店員の怒りと悲しみと少しの愛』が発売。8人の書店員が書店の現状、ひいては出版業界について綴り語った一冊だ。そこには知られざる書店の一面がある。本書を手がけた出版社代表が、現場に立ち続ける書店員2人に、そのリアルを尋ねた。

photo: Kazufumi Shimoyashiki / text: Ryota Mukai

左から、〈青山ブックセンター本店〉山下 優、〈knott books〉長嶺昌史、〈蟹ブックス〉花田菜々子
BRUTUS

話してくれた人

山下 優
やました・ゆう/1986年東京都生まれ。〈青山ブックセンター本店〉店長。2010年から勤務し18年より現職。店舗の運営や出版プロジェクト「Aoyama Book Cultivation」などを手がける。

長嶺昌史
ながみね・まさふみ/1981年和歌山県生まれ。〈knott books〉代表。人文書出版社の営業担当などを経て2026年に独立。初めての刊行書として2月に『書店員の怒りと悲しみと少しの愛』を発売。

花田菜々子
はなだ・ななこ/1979年東京都生まれ。〈蟹ブックス〉店主。〈ヴィレッジヴァンガード〉〈HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE〉などを経て2022年に独立。著書に『モヤ対談』など。

書店の仕事はシット・ジョブ⁉その現場に迫ります

長嶺昌史

書店員にとっては当たり前だけど、一般には知られていないことってたくさんあると思うんです。例えば、雑誌の付録付け。出版社で働く人にも知らない人がいるくらいなので。

山下優

付けるのも、外して捨てるのも書店ですからね。

長嶺

捨ててるんですね。

山下

発注などにFAXを使っているのも、昔から変わりません。

花田菜々子

〈蟹ブックス〉ではFAXはほとんど使ってなくて。PDFをメールでもらうようにしています。

山下

羨ましい!〈青山ブックセンター〉では電話をなくして、仕事の効率が上がりました。発注・品出し・オンラインショップの発送・イベント準備・レジ・雑誌の付録付け……と、段取りをつけて進めていても、電話が鳴れば中断せざるを得ませんでした。

同様に、出版社の営業担当者にはアポを取ってもらっています。ただ、FAXを読み上げるだけという場合もあって。

長嶺

出版点数が多いことが一因でしょうね。読むことはおろか、内容を把握し切れないほどになっている。

花田

読む、ということで言うとお客さんに「お店の本は全部読んでるんですか?」と聞かれることがあって。

山下

読んでない本を売ることも仕事ですもんね。

花田

それに、読んでいることと売り上げが上がることは必ずしもつながらないと思うんです。

長嶺

「ゲラ読み」と言ったりしますが、発売前の本の見本を書店に配ることがありますよね。ただ、感想を書けば入荷冊数が確保できたり、サイン本が手配できるようになったりすることがあって。業務の一環のようだけど、勤務時間中に読む余裕はないと。

花田

元は、規模の小さな書店でも担当者の熱意で入荷数を増やせる、という制度だったと思うんです。でも今や出版社からのエサみたいになっていて。

長嶺

感想送ったら本送るよって、出版社は偉そうな感じもしますね。

花田

この件に関してはずっと上から目線ですよ、文芸の大手出版社は。

長嶺

いち版元として肝に銘じます。

花田

書店は流通の最下流に位置しています。たとえ出版社や取次の不手際があっても、お客さんに頭を下げるのは書店の仕事です。一方で、ここ10年ほどで、書店が雰囲気のいい場所になってきたという感じがします。端的に言うと、ヘイト本が減っている。

山下

確かに、一時に比べてヘイト本自体が話題になることは減りました。

花田

ショート動画に流れたと思うんです。その分の売り上げは減ったかもしれませんが、書店の居心地はいい。

山下

ここ数年はイベントが当たり前にできる環境になってきました。始めた頃は断られることも少なくなくて。出版社も協力的になってきました。

長嶺

書店も取次も出版社も、みんな本を売りたいと思っている。だけど、噛み合わない状態が続いています。

山下

ひとまず、今は安すぎる本が多いので、出版社には本に適正な値づけをしてほしい。価格を上げる分、出版社は今以上に営業や広報をして一冊一冊の魅力を伝えていく必要はある。ただ、そうやって手をかけられた本こそ、ぜひ売りたいと思うんです。
『書店員の怒りと悲しみと少しの愛』  制作のきっかけは、大塚真祐子さんによる一文「書店員の仕事はシット・ジョブなのか?」(初出は雑誌『多様体』第6号)。本稿のほか、エッセイ7編とインタビュー1編を収録する。knott books/2,090円。

書店員たちのリアル

〈青山ブックセンター本店〉店長・山下優さんの場合

  • 雑誌に付録を付けるのも売れ残りを処分するのも仕事。
  • 出版社とのやりとりにはいまだにFAXを使っている。
  • 読んでない本を売ることこそが実は書店員の仕事。

〈蟹ブックス〉店主・花田菜々子さんの場合

  • 店に落ち度がなくとも、お客さんに謝るのが仕事。
  • 出版社から送られてくるゲラは必ずしも読まない。
  • 刊行記念等のイベント準備も書店員が手がける。
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左から、〈青山ブックセンター本店〉山下 優、〈knott books〉長嶺昌史、〈蟹ブックス〉花田菜々子
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