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大学で奨学金を借りた20代男性→就職後に月1.6万を返済していたところ…5年後、マイホーム購入で直面した“想定外の事態”

  • 2026.7.20
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

みなさま、こんにちは。元銀行員の金融ライター・池田です。

住宅ローンの審査については、「過去にクレジットカードやスマホ代の支払いで延滞があると審査に通らない」というイメージを強く持たれている方が多いのではないでしょうか。

確かに支払いの遅れ(滞納)は個人信用情報に傷がつき、審査に致命的な影響を与えます。 しかし、実は「これまでに一度も延滞したことがない人」であっても、他の借入があるというだけで、住宅ローンの審査に落ちたり、希望額から大幅に減額されたりするケースがあります。

今回は、奨学金の返還やカーローンの返済が、住宅ローン審査に思わぬ影を落としてしまった20代男性の事例をご紹介します。

奨学金を借りて大学を卒業したAさん

20代の男性・Aさん(仮名)は、大学を卒業して数年が経つ会社員です。 大学4年間は有利子の奨学金を借りており、就職後の秋から返還がスタートしました。

一人暮らしのAさんにとって、毎月約1万6,000円の返還負担は決して楽なものではありませんでしたが、将来のマイホーム購入やライフプランを見据え、毎月滞ることなく真面目に返還し続けていたといいます。

5年後、結婚してマイホームを購入することに

5年後、Aさんは職場の同僚と結婚し、妻が第一子を妊娠しました。 「子どもが生まれると、買い物や通院で車が必要になるだろう」と考え、カーローンを組んでファミリーカーを購入。

同時に、それまで暮らしていた賃貸アパートが手狭になるため、新築分譲マンション(4,200万円)の購入を決意し、住宅ローンの事前審査を銀行に申し込みました。 当時のAさんの年収は600万円。

「年収の7倍の物件だし、これまで他の一切のローンで延滞もない。問題なく満額借りられるだろう」 そう自信を持っていたAさんでしたが、数日後、銀行の担当者から告げられたのはまさかの回答でした。

「大変申し訳ございません。今回は、ご希望の4,200万円を満額でご融資するのは難しいという判断になりました」

一度も返済を遅れたことがないAさんは唖然としました。「どうしてですか? 奨学金もカーローンも、これまで1日も遅れずに払ってきたのに……」

担当者が説明した理由は、延滞の有無ではなく「返済負担率(返済比率)」にありました。

延滞がなくても立ちはだかる「返済負担率」の壁

住宅ローン審査では、過去の遅れを調べる「信用情報」のほかに、「年間のすべてのローン返済額が、年収の何割を占めるか」を示す「返済負担率」が極めて厳しくチェックされます。

多くの金融機関において、この返済負担率の基準は「年収の30%〜35%以下」に設定されています。 Aさんの年収600万円の場合、30%にあたる年間返済額の上限は「180万円」です。つまり、住宅ローンを含むすべてのローンの年間返済額が180万円を超えると、審査に通らなくなります。

ここで、Aさんの実際の年間返済額を計算してみましょう。

  • 奨学金の返済:月1万6,000円(年間約19.2万円)
  • カーローンの返済:月2万3,000円(年間約27.6万円)
  • 希望する住宅ローン(4,200万円・金利1.2%・35年返済と仮定):月約12.3万円(年間約147.6万円)

これらをすべて合計すると、年間の返済額は「約194.4万円」となり、上限である180万円を大幅にオーバーしてしまっていたのです。 これが、延滞のないAさんが住宅ローンを減額されてしまった真の原因でした。

パンフレットには載っていない「審査金利」と「自己申告」の裏事情

Aさんの事例から、マイホーム購入を検討する方に絶対に知っておいていただきたい、銀行審査の「リアルな2つの実務ルール」をお伝えします。

  • 実行金利ではなく「審査金利」で計算される恐怖 Aさんのシミュレーションでは、実際の「適用金利1.2%」で返済額を計算しましたが、実は多くの民間銀行では、審査時により高い「審査金利(一般的に3.0%〜4.0%程度)」を用いて返済負担率を逆算します。 もし4,200万円のローンを審査金利「3.0%」で計算されると、月々の返済額はそれだけで約16.1万円(年間約193万円)になり、他社のローンを足すまでもなく住宅ローン単体で返済負担率(30%)をオーバーしてしまいます。 「ネットのシミュレーターで計算して30%以下だったから大丈夫」と過信するのは非常に危険です。
  • 「奨学金」は信用情報に載らなくても隠してはダメ 日本学生支援機構(JASSO)の奨学金は、3ヶ月以上延滞しない限り、個人信用情報機関(KSCなど)には登録されません。そのため、延滞していないAさんの奨学金情報は、銀行が信用情報を開示しても基本的には載っていません。 しかし、「じゃあ黙っていればバレないのでは?」と自己申告を隠すのは絶対にNGです。銀行は、給与口座の引き落とし履歴や、源泉徴収票の控除欄、あるいは住民税の決定通知書などから高確率で気づきます。 審査の途中で「隠された借入」が発覚した場合、虚偽申告として即座に一発で否認(融資お断り)になります。奨学金は、無延滞であっても必ず最初から正しく自己申告してください。

審査に引っかかってしまったときの解決策

返済負担率が原因で満額借りられないと言われた場合、諦めて物件のグレードを下げる前に、以下のような実務的なアプローチを検討してみましょう。

  • 「完済条件付き融資」を利用する 銀行から「住宅ローンの融資を実行する日までに、カーローン(または奨学金)を全額一括返済すること」を条件に、住宅ローンを満額承認してもらう方法です。自己資金や親からの資金援助などを使って他社のローンを完済できれば、返済負担率の計算からその分が除外されるため、希望通りの額を借りられるようになります。
  • 夫婦で収入を合算して申し込む(ペアローン・収入合算) 妻にパートや正社員としての収入がある場合、夫婦2人の年収を合算(例:夫600万+妻200万=世帯年収800万)して審査に通すことで、返済負担率の分母を大きくし、基準をクリアすることができます。

「ローン審査が通る限界の額」と、「実際に生活にゆとりを持って返済していける額」は異なります。生活を圧迫しないための理想的な返済負担率は、一般的に20%〜25%以下です。

住宅ローンの利用を検討する際は、現在残っている他社のローンや奨学金の残高をしっかりと洗い出し、無理のない健全な資金計画を立てていきましょう。


監修・執筆:元銀行員・ikebu

元銀行員の金融・法律ライター。一種外務員資格(証券外務員一種)、行政書士資格を保有。大学では法学部・法律学科に在籍し、卒業後は地方銀行に入行。個人リテール業務において、投資信託・生命保険商品の販売を中心とする資産運用のサポートのほか、住宅ローンや相続などの幅広い業務に携わる。法人営業では、事業性融資や法人向けの運用商品販売を担当。現在は金融・法律ジャンルを中心にライターとして活動。銀行員時代の経験や保有資格を活かし、専門的な内容を分かりやすく丁寧に解説することを得意とする。

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